ラテンアメリカ・レポート
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論稿
ペルーにおける公共事業によるインフラ整備推進への試み
清水 達也
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2021 年 38 巻 1 号 p. 44-58

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抄録

ペルーでは近年、財政に余裕があるにもかかわらず、公共事業による社会経済インフラの整備が進んでいない。2020年以降はコロナ禍で医療施設の不足が問題となったが、2010年代に入って公共事業として整備に取り組んだ49の病院建設のうち、これまでに稼働しているのは3分の1に満たない。2016年に始まったクチンスキ政権が優先課題として取り組んだ大規模インフラプロジェクトも、相次いで遅延または頓挫している。

ペルー政府は2000年代以降、公共事業の推進に向けたさまざまな取り組みを行ってきた。事業を一括して民間企業に委ねる官民連携や、民間企業による納税に代わる公共事業など、民間部門のノウハウを取り入れることで、従来の政府調達による公共事業の問題を克服しようと試みてきた。しかしこれらの取り組みでも、さまざまな問題が生じている。

このような状況のなかで最近注目を浴びているのが、外国政府からの支援を受けて大規模な公共事業を実施する政府間合意という方法である。2019年パンアメリカン競技大会をリマで開催するために、ペルー政府はこの方法を用いて準備を進め、大会を成功させた。今後はほかの公共事業でもこの方法を採用することで、大規模なインフラ整備の加速を目指している。

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© 2021 日本貿易振興機構アジア経済研究所
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