ラテンアメリカ・レポート
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論稿
分断を深めるペルー ―国内における対立が可視化された2021年総選挙
磯田 沙織
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2021 年 38 巻 1 号 p. 28-43

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抄録

ペルーでは1990年代以降、約30年にわたって新自由主義経済政策が実施されてきた。その過程でマクロ経済は安定したものの、地方を中心に貧困状態が改善されない人々の不満が蓄積されてきた。他方、次々と出現する個人政党が組織化されないまま民主体制が維持され、誰が大統領に当選しようとも新自由主義経済政策が維持される「自動操縦(piloto automático)」であると揶揄されてきた。また、1990年代以降の大統領はすべて汚職などにより実刑判決を受けたり、捜査対象になったり、あるいは捜査の最中に自殺したことで、有権者の政治家に対する不信は強まっている。こうした新自由主義経済政策に対する不満、既存の政治家に対する不信の蓄積により、2021年総選挙において左派の泡沫候補が一次投票を1位通過し、決選投票においても過半数を上回る票を獲得した。本稿では、2021年総選挙の過程でペルーの分断が可視化されたことに関して、フジモリ派と反フジモリ派が二分してきたこと、都市部と農村部の格差が継続してきたことを中心に考察する。

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© 2021 日本貿易振興機構アジア経済研究所
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