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資料紹介: アフリカの女性とリプロダクション——国際社会の開発言説をたおやかに超えて——

アフリカレポート

資料紹介

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■ 資料紹介:落合 雄彦 編著 『アフリカの女性とリプロダクション——国際社会の開発言説をたおやかに超えて——』
■ 佐藤 千鶴子
■ 『アフリカレポート』2016年 No.54、p.90
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本書は、アフリカにおける女性のリプロダクティブ・ヘルスに関わるさまざまな側面を扱った論文集である。具体的には、女性性器切除(1~3章)、出産(4~6章)、HIV/エイズ(7章)、産科フィスチュラ(8~9章)がテーマとして取り上げられ、エチオピア、シエラレオネ、ケニア、ナイジェリア、タンザニア、リベリアなどの事例が紹介されている。なお、産科フィスチュラとは、適切な緊急産科ケアを受けることのできないアフリカ諸国の農村部に住む女性を中心に、毎年5~10万人が罹患し、少なくとも200万人を苦しめている疾患である。

本書の魅力の一つは、時にインタビューやフィールドノート、アフリカ女性自らが記したライフヒストリーの抜粋を掲載することで、女性性器切除、妊娠や出産、産科フィスチュラの罹患といった経験をアフリカ女性自身の声で語らせているところにある。アフリカ女性自らの声を掲載することで、国際社会や政府が迷いなく善と考えてアフリカ社会の慣習や慣行に介入する際に、いったん立ち止まり、現地の社会的文脈や背景を理解することの重要性を本書は喚起する。この点が最も明確に論じられているのは、女性性器切除を扱った3つの章である。

本書によれば、エチオピア南部のある農耕民の間では、女性性器切除が結婚儀礼の一部として行われており、女性自身もそれを一人前の女性となるための重要なプロセスと捉えている。国際社会とエチオピア政府の介入により、身体の損傷が少ない形へと女性性器切除の方法が近年、変更されてきてはいるものの、廃止することに対しては現地社会の抵抗が強いという。また、ケニアのある牧畜民の間でも、従来、この慣行は結婚儀礼の一部であり、未婚女性から既婚女性へと変わる成人儀礼であったが、近年、結婚前に女性性器切除(割礼)を行う女性が増えているという。その背景には、未婚=割礼をしていない女性の妊娠やそこから生まれる子供を不幸をもたらす存在として忌み嫌う文化があり、従来は、未婚女性が妊娠した場合には中絶が行われてきたという事情がある。割礼をすれば未婚の出産とはみなされなくなるため、結婚前に割礼を行うことで、中絶を避けて出産を選ぶ女性が出現したのである。

評者自身、女性として、どのような形態であれ、女性性器切除は、それに伴う痛みを想像しただけで間髪入れずに拒絶してしまう。この点は本書を読んだ後でも変わらないが、この慣行がそう簡単には廃止されない事情を理解するためにも、ぜひ本書を読むことをお勧めしたい。

佐藤 千鶴子(さとう・ちづこ/アジア経済研究所)

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