お知らせ

【プレスリリース】トランプ政権の「相互関税」政策は世界経済にどのような影響を与えるのかーIDE-GSM®による試算を公開(2025年4月2日ホワイトハウス発表対応版)

2025年4月21日

日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所(千葉市美浜区、所長:木村福成)は、米国のトランプ政権が4月2日に発表した相互関税政策が世界経済に与える影響をアジア経済研究所経済地理シミュレーションモデル(IDE-GSM®)を用いて試算。その結果をIDEスクエア・世界を見る眼「トランプ政権の相互関税政策が世界経済に与える影響(2025年4月2日ホワイトハウス発表対応版)」として公開しました。

今回の「相互関税」のように、複数国に対して追加関税を課し、しかもその水準が国によって大きく異なる場合には、この措置が各国との貿易に与える影響は極めて複雑です。単純に国毎の追加関税率に一定の係数を掛ける手法では各国経済への影響を正確に予測できません。アジア経済研究所が開発した経済地理シミュレーションモデル(IDE-GSM®)は国際貿易と各国の産業構造を組み込んだモデルであり、関税率の変更による経済的影響を包括的に分析することが可能となっています。

なお、今回の試算は以下の仮定のもとで、2025年から「相互関税」が課された場合の2027年における関税シナリオとベースラインシナリオで得られた結果の差分を示しています。

  • 4月2日に米国が発表した国別関税率を適用
  • 自動車産業に対してはこの関税を適用せず、別途25%の追加関税を課す
  • 中国に対しては、第2次トランプ政権発足後に導入された20%の追加関税にさらに相互関税が加わる(自動車産業では20%+25%の45%)
  • メキシコ・カナダについては、すべての財に米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)が適用されるとみなし、この関税や自動車産業への追加関税を行わない
  • 国別の関税率が公表されていない国については4月5日に発効した10%の追加関税を仮定する
  • 各国から米国への報復関税は仮定しない
<分析結果のポイント>
  • 「相互関税」から最も大きな負の影響を被るのは米国(5.2%減)
  • 「相互関税」で課された関税率が高い国ほど経済的に負の影響を受けやすい傾向(中国、ベトナム、カンボジア、タイなど)
  • 米国への輸出依存度が高い国ほど、関税政策による影響の振れ幅が大きい(カンボジア、ベトナムなどは対米輸出依存度が高く高関税を課されているため負の影響が大きい。メキシコ、カナダ、シンガポールは輸出依存度が高く相互関税率が低いため他国より相対的に有利となりシミュレーション結果が正に振れる)
  • 米国への輸出依存度が低い国々(日本、欧州連合)などは関税措置の変化に対する耐性があると考えられる
<執筆者コメント>

今回の相互関税政策のように多数の国が同時に関税を課されるという状況では、自国だけをみると米国から新たに関税を課され不利益を被るだけのようにみえるが、他国と比べた相互関税率の相対的な大きさや対米輸出依存度によってプラスの結果にもなりうるなど経済への影響はより複雑となることを本分析は示している。対米輸出依存度が高く負の影響が大きいと予測される国(ベトナム、カンボジアなど)は輸出先の多様化を急ぐべきであり、日本やEUのように輸出先が分散している国々は、この強みを維持しつつ、自動車産業など個別に打撃を受ける産業への支援策を検討する必要があるだろう。

(開発研究センター 熊谷 聡磯野 生茂

記事情報

プレスリリース

本件に関するお問い合わせ先
日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所
研究企画部研究企画課広報班(担当:青山)
E-mail:info E-mail Tel: 043-299-9526