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【プレスリリース】第2次トランプ政権の関税政策は、世界およびアメリカ経済にマイナスの影響と予想―中国・カナダ・メキシコに対する追加関税の影響をアジア経済研究所が試算
2025年1月29日
日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所(千葉市美浜区、所長:木村 福成)は、1月20日に就任したドナルド・トランプ米大統領が掲げる中国・カナダ・メキシコに対する関税政策が世界経済にどのような影響を与えるのか、アジア経済研究所経済地理シミュレーションモデル(IDE-GSM®)を用いた試算結果を公表しました。
アメリカがカナダ・メキシコおよび中国に対する関税を追加した場合、最も大きな影響を受けるのはメキシコで、カナダも比較的大きな影響を受ける一方、中国経済に与える影響はそれほど大きくなく、アメリカ経済への影響はGDP全体には小さくないマイナスの影響が及ぶことが予想されます。
試算においては、2025年から第2次トランプ政権による新たな関税政策が実施されたと仮定し、その2年後となる2027年時点での経済効果を推計。アメリカがカナダ及びメキシコに対して25%の追加関税を課す場合、それに加えて中国に対しても10%の追加関税を課すケースの2つのシナリオを想定しています。
表1は、アメリカがカナダ及びメキシコに対して25%の追加関税を課した場合について、アメリカがすべての国に対して関税のさらなる引き上げを行わないケース※1と比べたときの影響を示しています。
- メキシコのGDPへの影響はマイナス4.1%と大きくなることが予測
- カナダのGDPへの影響はマイナス1.4%でメキシコよりも小さい
- アメリカのGDPへの影響はマイナス0.5%。自動車産業と食品加工業はメキシコ、カナダからの輸入が国内生産で代替される影響が見られる。それ以外の産業はマイナスの影響
- 世界経済に与える影響はGDP比でマイナス0.2%
(※1 「ベースシナリオ」とする)
表1 アメリカがカナダ及びメキシコに対して25%の追加関税を課した場合(2027年、ベースシナリオ比)
表2は、アメリカがカナダ・メキシコへの25%の追加関税に加えて中国からの輸入についても10%の追加関税を賦課した場合の影響を、産業別・国・地域別に示しています。(2027年ベースシナリオ比)
- 中国への影響はGDP比でマイナス0.3%
- アメリカへの影響はマイナス1.1%となり、表1と比べて倍以上になっている
- カナダ・メキシコへの負の影響はシナリオ1と比べて若干小さくなり、日本やASEAN10については、多くの産業でプラスの貿易転換効果が発生
- 世界経済への影響はマイナス0.3%と表1と比べて拡大
表2 アメリカがカナダ及びメキシコに対して25%、中国に対して10%の追加関税を課した場合(2027年、ベースシナリオ比)
アメリカがカナダ・メキシコおよび中国に対する関税を追加した場合、最も大きな影響を受けるのはメキシコで、カナダも比較的大きな影響を受ける一方、中国経済に与える影響はそれほど大きくは見受けられません。アメリカ経済への影響は産業によってプラス・マイナス両方がありますが、GDP全体には小さくないマイナスの影響が及ぶことが予想されます。
(トランプ政権による追加関税の税率の算出方法には別の見解もあります)
レポート情報
- タイトル
- アジ研ポリシー・ブリーフNo.201
「トランプ政権の中国・カナダ・メキシコに対する関税政策の影響」
- アジ研ポリシー・ブリーフNo.201
- 著者
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熊谷 聡 ・ 早川 和伸 ・ 後閑 利隆 ・ 磯野 生茂 (以上、アジア経済研究所)
ケオラ・スックニラン(ERIA) ・ 坪田 建明(東洋大学)・ 久保 裕也(千葉商科大学)
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熊谷 聡 ・ 早川 和伸 ・ 後閑 利隆 ・ 磯野 生茂 (以上、アジア経済研究所)
- URL
本件に関するお問い合わせ先
ジェトロ・アジア経済研究所 研究企画部研究企画課広報班(担当:青山)
E-mail:info