図書館

アジア経済研究所図書館には、毎日さまざまな利用者が訪れます。ほぼ全館開架の書架から思わぬ大発見や収穫があるようで、大量の資料をコピーされている利用者も少なくありません。同じ資料でも研究の切り口によって、多様な活用方法があるようです。そこで、この連載では、さまざまな分野で活躍されている研究者の方々や現在勉強中の学生の方々に、そもそも「なぜアジ研図書館に通うのか」といったアジ研図書館利用の動機から、資料の見方、価値、活用方法など、それぞれの専門分野と絡めて紹介いただくことにしました。
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このコーナーは雑誌『アジ研ワールド・トレンド』に好評連載中のコーナーをまとめたものです。
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「アジ研図書館を使い倒す」連載記事一覧
最終回
フィールドワーカーによる「使い倒し」方
重冨
真一(明治学院大学国際学部教授)2016年3月号(No.245)
第37回
移り変わりの激しい韓国の足跡をのぞいてみませんか?
奥田
聡(アジ研国内客員研究員・亜細亜大学アジア研究所教授)2016年2月号(No.244)
第36回
研究のはじまりとその土台作りのために
杉本
浄(東海大学文学部アジア文明学科専任講師)2016年1月号(No.243)
第35回
偽OBが、夜陰に乗じて帰来する
池内
恵(東京大学先端科学技術研究センター准教授)2015年12月号(No.242)
第34回
研究のための基地としてのアジ研図書館
力田
萌瑞(宇都宮大学大学院国際学研究科博士前期課程)2015年11月号(No.241)
第33回
開発途上国の稀少な記録を保存し続ける図書館
樹神
昌弘(神戸大学大学院国際協力研究科准教授)2015年10月号(No.240)
第32回
アジ研図書館にアーカイブズを!
加藤
聖文(人間文化研究機構
国文学研究資料館准教授)2015年9月号(No.239)
第31回
アジ研図書館を通して知ったシリア
ダルウィッシュ
ホサム(アジア経済研究所中東研究グループ)2015年8月号(No.238)
アジ研図書館と出会ったのは、日本で修士論文を書いていた時のことだ。大学から片道二時間以上かけて通い続け、エジプトの新聞や雑誌などの史料を読みふけった。筆者にとってのアジ研図書館の最大の魅力は、中東地域に関する一次資料の豊富なコレクションだ。
アジ研図書館について語る前に、シリア出身の筆者のバックグラウンドを少し紹介したい。筆者は今、中東の政治、主に現代エジプトとシリアの歴史、政治および社会運動に焦点をあてた研究を行っている。シリアでは、ダマスカス大学で英文学を専攻していた。当時から常々政治学を学びたいと思っていたが、独裁体制で言論や表現の自由がない国で、政治学のような分野を自由に研究することはむろん不可能であった。シリアにいるにも関わらず、シリアや中東についての報道やアクセス可能な学術的知識は非常に限られたものだった。
第21回~第30回
第30回
図書館への入口
—大学院ゼミ企画「アジ研図書館ツアー」に参加して—
平田
晶子(日本学術振興会特別研究員PD)2015年7月号(No.237)
私は、東京外国語大学大学院(以下、東外大)の修士課程に進学後、タイ東北部とラオスに居住するラオの人たちの地域芸能や伝統音楽に関する人類学的研究をしてきた。この学問分野に従事していると、大学院の長期休暇及び二年間の海外長期滞在の現地調査でタイやラオスの農村社会に赴き、村びとたちの食事をはじめとする日常生活から、地域芸能の公演現場、宗教行事、儀礼といった非日常の出来事まで、可能な限り村人の話を聞いてフィールドノートを取り続ける。さて、このように普段の研究生活では村落社会やコミュニティに定着して調査している者が、アジア経済研究所図書館(以下、アジ研図書館)という膨大な資料の宝庫をどのように活用することができるのであろうか。
第29回
アジ研図書館はなぜ、どのように誕生したのか
辛島
理人(関西学院大学先端社会研究所専任研究員)2015年6月号(No.236)
拙著『帝国日本のアジア研究 総力戦体制・経済リアリズム・民主社会主義』(明石書店
2015年)で明らかにしたように、1958年に誕生したアジア経済研究所は、岸信介や三輪寿壮といった政治家、藤山愛一郎や植村甲午郎といった財界人、そして通商産業省や経済学者らによるネットワークの産物であった。多様なアクターの連結によって生まれる活動は、時に利害の対立を生みだすことがある。政財官学の結集により実現したアジ研の創設も、その例外ではなかった。それぞれの間、また各々の内部にも、さまざまな利害関係があり、研究機関をめぐる構想がいくつも存在した。そのようななかで、アジアについての知識・情報を集積する図書館をつくる、という方向性だけは誰からも共有された。以下、アジ研の来歴をふまえながら、アジ研図書館が誕生する過程をみることにしよう。
第28回
途上国の人口調査資料の宝庫
早瀬
保子(元アジア経済研究所研究主幹)2015年5月号(No.235)
アジア経済研究所在職30年余りの途上国人口研究は、図書館の豊かな蔵書、とりわけ各国の人口センサス、統計調査資料や学術雑誌などが随時利用できるという恵まれた環境に支えられてきた。今のようにメールなど便利な手段がなかった時には、例えば統計資料は、直接各国の統計作成機関に出版状況を手紙で問い合わせ、購入、整理というライブラリアンの苦労により収集されたものである。1950年代以降、最新資料に至るまで時系列で途上国各国の統計資料がみることが可能な図書館は、アジア経済研究所をおいて日本はおろか、世界でも数少ないと思われる。未だ途上国の多くの統計は、正確性や完全性を欠くものも少なくなく、時系列で比較することにより、分析が可能となる。
第27回
中国経済調査での活用法
佐野
淳也(日本総合研究所調査部)2015年4月号(No.234)
アジ研の図書館といえば、大学で特定の専攻領域に関する研究を長年究めてこられた先生、その後に続こうとする若手研究者・学生向けの文献を所蔵している施設である一方、ビジネス関連の調査・研究に役立つ資料の蒐集には力を入れておらず、ビジネスパーソンには縁遠い存在と思われがちである。恥ずかしながら、私もつい最近までそのように誤解していた。
私は、一九九六年の入社以降、民間のシンクタンクで中国経済の調査・研究に従事してきた。入社当初こそ、向学のために、当時市ヶ谷にあったアジ研図書館を何度か利用したが、そうした印象を払しょくすることはできなかった。さらに、図書館が海浜幕張に移転し、オフィスから気軽に立ち寄れる距離ではなくなったこともあって、利用頻度は大幅に減少した。
第26回
ジェトロ・ビジネスライブラリーとは異なる価値
二宮
康史(アジア経済研究所ラテンアメリカ研究グループ)2015年3月号(No.233)
第25回
家族ぐるみ図書館利用
山田
寛(元嘉悦大学教授)2015年2月号(No.232)
アジ研図書館は、市谷時代も利用させていただいた。私は読売新聞記者で一九七〇年代〜九〇年代、サイゴン、バンコクなど海外四カ所に駐在したが、その合間や二〇〇一年に定年退職するまで調査研究部門にいた時期、東南アジアを重点に情勢フォローを続けた。だから、市谷にもお邪魔し、勉強させてもらった。だが、図書館のかなりの〝おなじみさん〞になれたのは、アジ研が私の自宅から車で約一〇分の海浜幕張に移転し、私も大学教員に転じてからだ。国際問題を講義し、アジア、アフリカの問題を多く取り上げた。傍ら、カンボジアのポル・ポト革命や第二次大戦後北朝鮮に残された日本人や、日本の難民受け入れ問題などについて調査し、本を書いた。
第24回
過去との対話
—私のアジ研図書館利用法—
豊田
紳(早稲田大学政治経済学術院助手)2015年1月号(No.231)
私は、一九六〇年から二〇〇〇年のメキシコ政治を研究している。充実したメキシコ関連資料を所蔵しているアジ研図書館には、研究をはじめて以来、一〇年近く、ずっとお世話になってきた。例えば、日本ではアジ研図書館に唯一、メキシコの高級政治雑誌PROCESO
や新聞Excelsior
といった資料が所蔵されている。
これらの資料は、当時の時代背景を知るうえでの基礎になるものであり、日本国内で参照できることは本当にありがたいことである。基礎的資料だけではない。アジ研図書館には、数十年も前のメキシコ人政治学者や経済学者による研究書がコレクションされている。私にとってのアジ研図書館の最大の魅力は、この古い本のコレクションにある。
第23回
帰省の口実を奪った図書館
アディネガラ
イヴォンヌ(明治大学大学院政治経済学研究科経済学専攻)2014年12月号(No.230)
第22回
広々とした空間と充実した資料がもたらす『幸せな勉強時間』
柳
学洙(アジア経済研究所リサーチ・アソシエイト)2014年11月号(No.229)
第21回
ライブラリアンを「使い倒す」
相沢
伸広(九州大学比較社会文化研究院准教授)2014年10月号(No.228)
第11回~第20回
第20回
関西在住・私大・非常勤の立場からネパール関連文献を利用する
岩間
春芽(大手前大学非常勤職員)2014年9月号(No.227)
第19回
インド政治史研究と州議会議事録
佐藤
宏(南アジア研究者)2014年8月号(No.226)
第18回
アジ研図書館は知のテーマパーク
豊田
優美子(株式会社電通
経営企画局部長)2014年7月号(No.225)
第17回
環境変化を追跡するためにアジアの過去の地形図を探索
香川
雄一(滋賀県立大学環境科学部准教授)2014年6月号(No.224)
第16回
他の追従を許さないアフリカ関係の蔵書・学術雑誌のコレクション
吉田
昌夫([特活]アフリカ日本協議会)2014年5月号(No.223)
第15回
台湾史研究とアジ研図書館
—土地調査事業関係史料を中心に—
新田
龍希(東京大学大学院総合文化研究科博士課程・日本学術振興会特別研究員DC1)
2014年4月号(No.222)
第14回
アジ研図書館とミャンマー近代史資料
—私の緬学事始—
長田
紀之(アジア経済研究所動向分析研究グループ)2014年3月号(No.221)
第13回
北朝鮮資料の収集とその利用環境
齋藤
頼之(韓国・慶南大学校極東問題研究所客員研究員)2014年2月号(No.220)
第12回
足と人脈で集めたイラクの新聞
酒井
啓子(千葉大学教授)2013年12月2014年1月号合併号(No.219)
第11回
「地域研究」拠点のより一層の発展を
西村
成雄(放送大学教授)2013年11月号(No.218)
第01回~第10回
第10回
韓国社史・地誌の宝庫
中川
雅彦(アジア経済研究所地域研究センター動向分析研究グループ長)2013年10月号(No.217)
第9回
なぜ、アジ研図書館に通うのか?
末廣
昭(東京大学社会科学研究所教授)2013年9月号(No.216)
第8回
インド人口統計資料の活用
西川
由比子(城西大学経済学部教授)2013年8月号(No.215)
第7回
研究と教育の両面で使い倒す
松尾
昌樹(宇都宮大学国際学部准教授)2013年7月号(No.214)
第6回
アジ研図書館で、シンガポールの戦後史を深く旅する
鍋倉
聰(滋賀大学経済学部准教授)2013年6月号(No.213)
第5回
アジ研図書館利用者
”一愛好者のつぶやき”
保科
秀明(開発問題研究者)2013年5月号(No.212)
第4回
アジ研図書館は現在私にとって最良の友である
小島
淑男(日本大学名誉教授)2013年4月号(No.211)
第3回
アジ研図書館所蔵新聞を使い倒す
木村
敏明(東北大学大学院文学研究科准教授)2013年3月号(No.210)
第2回
開架書架から新たな手掛かりを
関
智英(千葉商科大学講師)2013年2月号(No.209)
第1回
バングラデシュの新聞から自然災害を読む
溝口
常俊(名古屋大学大学院環境学研究科科長)2013年1月号(No.208)