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海外研究員レポート

滞在許可更新手続き体験談

PDF版ダウンロードページ:http://hdl.handle.net/2344/00049937

2011年3月

はじめに

この3月で筆者のジャカルタ滞在も一年目を迎え、残り一年となった滞在のため延長許可を得るべく、この数カ月間いろいろと準備・手続きを進めてきた。今回のレポートでは、調査研究関連でインドネシアに2年以上滞在することを考えている人や、現在滞在中で2年目の滞在延長のために準備を進めている人向けに、延長許可手続きに何が必要だったかをまとめておきたい。

途上国での生活では何かと困ることが多いが—それでも以前よりは格段に楽になりつつあるだろうが—インドネシア滞在(予定)者にとって、ビザ・滞在許可証の取得・更新手続きも例外ではない。しかし大変ありがたいことに、インドネシアでの調査ビザや滞在許可証(Kartu Izin Tinggal Terbatas:KITAS)などの取得手続きについては、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科のHP1上にいくつか体験談が掲載されている。これらの情報には筆者も大いに助けられたため、これからインドネシアに調査研究で滞在する予定のある方はぜひ一読されることを強くお勧めする。

しかし上記体験談集には延長手続きに関しての情報がみあたらない。そこで、今回のレポートでは滞在許可の延長、より具体的にはKITASや通行証(Surat Keterangan Jalan:SKJ)、出頭証明書(Surat Keterangan Lapor Diri:SKLD)の延長を申請するにあたり、筆者がどんな体験をしたのかを紹介したい。

研究・技術国務大臣府(RISTEK)への申請
  • A : RISTEKへの申請に必要なもの
    1. RISTEK宛の本人からの延長願い
    2. 受入機関からの延長願い
    3. 中間レポート
    4. KITAS
    5. SKLD
    6. 入国管理手帳(Buku Biru)
    7. パスポート
    8. 調査許可料
  • B: RISTEKから渡されるもの
    1. 調査許可証(Surat Izin Penelitian)
    2. 外国人調査者カード
    3. 入国管理局事務所長宛の滞在許可(ITAS)延長依頼状
    4. 国家警察公安調査局長宛のSKJ延長依頼状
    5. 国家警察公安調査局長宛のSKLD延長依頼状
    6. 内務省宛の調査告知証(Surat Pemberitahuan Penelitian:SPP)延長依頼状

手続きは、調査ビザの場合にスポンサーとなるRISTEKへの延長申請から始まる。RISTEKのHP2に記載されているように、用意しなければならないのはA-1~3の書類である。注意すべきは調査許可の期限が切れる1カ月前までに申請しなければならない点であろう。ところでA-2についてであるが、筆者の場合には、所属先であるインドネシア大学に問い合わせたところ「昨年出した書類で二年間の滞在を認めているからそれを提出すればよい」とのことだった。また、A-3は6部必要とHP上にはあるが、メールでファイルを送信するため、これも1部のみ担当者に送ればよい。

1月14日に書類一式をメールに添付して送付し、その1週間後に念のため書類が届いたかどうか確認をとったところ、RISTEKからは同月26日に審査があること、そしてその翌日に延長許可の可否についてメールで連絡する、との返事が届いた。スケジュールについては書類送付時にあわせて問い合わせておくと良いかもしれない。

RISTEKから延長を許可する旨の返事が来たら、担当者のところまで必要書類を受け取りに行くことになる。その際に調査許可料として250ドル(配偶者・子は50ドル)を支払う(これらは前年に支払った金額の半分である)。RISTEKから言われた通り、昨年入手したKITAS、SKLD、Buku Biru、パスポートも(家族分全てを)忘れずに持っていくと、後に入国管理局事務所や国家警察の外国人受付窓口(Pelayanan Orang Asing)に提出する際に必要な部分をRISTEKでコピーしてもらえる(後述するようにB-3~5は同伴する家族の人数分のコピーも必要である。そこで、RISTEKで書類を用意してもらう際に、コピーをお願いしておくとよいかもしれない。筆者は前年の手続きを失念していたこともあり、結局、入国管理局事務所での申請時に指摘され、購買部でコピーすることになる)。

RISTEKでは1年ぶりに再会した担当者に「もう1年も過ぎたか!子供は学校か?」と矢継ぎ早に質問され、1年の早さをあらためて実感した。

KITAS取得手続き(入国管理局事務所)
  • C : 申請に必要な書類など
    1. 申請書(フォルダ込みで購買部で必要人数分を購入)
    2. KITAS
    3. パスポート
    4. Buku Biru
    5. 写真(4×3のサイズを4枚)3
    6. RISTEKからの依頼状(B-3)
    7. 法務・人権省ジャカルタ州事務所からの滞在許可延長の許可状(後述)
    8. 更新料(75.5万ルピア/人)
  • D: 法務・人権省ジャカルタ州事務所から渡される書類
    1. 法務・人権省ジャカルタ州事務所長宛の滞在許可延長の依頼状

RISTEKでの手続きが終わると、入国管理局へ更新手続きに行くことになる。居住地の関係上、筆者は中ジャカルタ事務所へ出向いた。4階(最上階)まで上がり、購買部で申請書(Formulir)を購入(家族分を含めて3部)。必要事項を書き込んだ後、同じ階にある窓口に提出した。家族分を申請する場合には、前もってRISTEKから入手した書類を家族の人数分コピーしておく必要がある(もしコピーがなければ、申請書の購入時に同時にコピーもお願いしておくと手間が省ける)。

窓口に提出後、同じ建物内のある部署へ書類を持っていき、番号やサインをもらい、再び窓口に戻り、そしてまた別の部署へ書類を運ぶ、といった手続きが繰り返される。ある段階まで手続きを進めたところで「必要なサインが今日中にはもらえないので、また翌日10時頃来てくれ」と言われる。16時で役所は閉まるため、できる限り朝早くから手続きを進めるのが望ましい。また、金曜は昼の礼拝で時間がつぶれるため、急いでいるのであれば木曜までのうちに全ての手続きを終えたい。

二日目も同様に朝から中ジャカルタ事務所内での手続きを進めていくと、昼前になって、法務・人権省ジャカルタ州事務所長宛の書類(C-7)を渡され、事務所(住所:Jl.MT.Haryono No.24)まで直接持っていくよう言われる。「その方が早く手続きを終えられる」とのこと。しかし、前回のKITAS申請時には行かなかった場所であったため正直とまどいを覚えた。それ以上に、場所が入国管理局事務所からは遠く南に位置しており、渋滞が年々悪化の一途をたどるこのジャカルタの街なかを抜けて行かねばならないことを考えるとたいそう気が滅入った。が、結局は言われたとおりにジャカルタ州事務所へと向かった。

1時間以上かけて到着した法務・人権省ジャカルタ州事務所では、まず黄色い申請用フォルダを購買部で購入し、次いでそのファイルに名前を記入して入国管理局事務所からの申請書とともに一階の受付に提出した。すると、担当者に翌日の朝、書類を受け取りに来るよう言われる。

三日目の朝、州事務所で書類(D-1)を受けとった後、渋滞のなかをまた1時間以上かけて北上し、入国管理局事務所へ向かった。D-1を家族分もコピーして担当窓口に提出すると、これで必要書類は一通り揃ったとのこと。そして、KITASの更新料を払ってくるように言われたため、2階の会計窓口で支払いを済ませた。更新料は写真代込みで一人75.5万ルピアであった。会計窓口ではホチキスで留められた領収証を渡されるが、そのうち白地のものは申請者用なので、ホチキスを外して手元に残しておく(不要ならばそのままでもよい)。領収証を片手に担当者のいる窓口へ戻ると、しばらく待たされた後、KITAS用の写真撮影、指紋採取(スキャンされる)の手続きへと進む。その際に、手書きパッド上でサインを書かされるが、これが意外と難しい。書いた筆跡がパッド上には残らずモニターにしか出ないため、ゆがんだサインとなってしまう。これは昨年も不思議に思ったことだが、このサインはKITASに使われるわけでもなく(KITAS裏面のサインは手書きで直接記入する)、いまだにあのゆがんだサインを何に使用するのかは不明である。なお、この写真撮影からの一連の手続きには家族も事務所まで来てもらわなければならない。また、このとき写真(3×4のサイズの写真を4枚ずつ)を渡すよう求められる。

以上の手続きを終えると「二日後の午後に新しいKITASを発給できるので取りに来て」と言われ、後日受取に出向いたところ今回は無事取得できた(前年はこの受取の段階でトラブルが発生し結局1週間近く待たされた)。

SKJ/SKLD取得手続き(国家警察)
  • E:SKJ申請
    1. 申請書(窓口で人数分を入手)
    2. RISTEKからの依頼状(B-4)
    3. パスポートのコピー(顔写真・ビザ)
    4. 新KITASのコピー
    5. SKLDのコピー
    6. Buku biruのコピー(署名のある4ページまで?)
    7. 4×6のサイズの写真を2枚ずつ
  • F:SKLD申請
    1. SKLD
    2. RISTEKからの依頼状(B-5)
    3. 新KITASのコピー
    4. パスポートのコピー
    5. 4×6のサイズの写真を2枚ずつ
    6. 10万ルピア/人
  • G:渡されるもの
    1. 受領証(Tanda Terima。2枚)

KITASを取得した後、国家警察へSKJとSKLDの延長申請へと向かった。昨年の申請時にはSKJ申請とKITAS申請とを同時に行い、KITAS取得後にSKLD申請へと進んだが、延長申請ではSKJとSKLDは同時に提出できる。ここで特記しておくべきなのは、SKLDの申請にあたり手数料を支払わなければならなくなったことであろう4。昨年は支払い不要であったため、請求されたときに驚かされた。

申請にあたって一番注意しなければならないのは、SKJの延長申請時期についてである。一年目の期限(筆者のケースでは2011年3月5日)から一年間の有効期限が新たに発生するのではなく、延長申請日(2011年3月2日)からカウントが始まる、という点である。そのためSKJの申請は一年目の有効期限が切れるぎりぎりまで待つほうがよい。加えて若干の注意を要するのは、家族分の申請をする場合であろう。RISTEKからの依頼状、パスポートのコピーなどはそれぞれ人数分、筆者の場合は3部用意しなければならない。例えば筆者のように家族全員のKITASのコピーを1枚紙にまとめてもっていくと、ハサミを渡されてばらばらにし、3部に分けてまとめるよう指示されることになる(ただし、昨年の記憶はすでに定かではないが、同様に1枚紙にまとめていた気もするため、担当者によって対応が異なる可能性はあり。しかし人数分に分けておいた方が後々面倒なことにはならないだろう)。

申請を終えると、受領証を渡され、SKJは翌日、SKLDは(通常)1週間後に取りに来るよう伝えられる。なお、国家警察の外国人受付窓口は月曜から金曜までの朝8時から15時までが受付時間である。

おわりに

入国管理局事務所や国家警察の外国人受付窓口では、手続きを待つ間に暇つぶしがてら周囲を観察していると、周りは代行業者であふれていることに気づく。入国管理局事務所ではたくさんのファイルをかかえていたり、外国人を従えて写真撮影へと案内したりしているので、彼らは一見してそれと分かるだろう。運が良ければ?彼らが「潤滑剤」らしきものを渡している姿もみることができたりするかもしれない。

調べてみると、ある代理店では一人450万ルピア程度(約4.5万円。SKJなど警察での手続きも含む)で更新業務を代行していることが分かった。これはつまり、入国管理局事務所での更新料などのほかガソリン代などの費用もざっくり含めて1万円程度が必要経費と勘定するなら、代行業者に約3.5万円支払うことで4日前後の時間を節約できることを意味する(ただしここでは筆者のように調査関連の更新手続きのケースであることに注意)。

1日に対して1万円近くのお金を支払うことが高いか安いかは人それぞれであろう。とても忙しくて手続きに時間を避けられないのであれば(1日仕事を休むことで1万円以上の損失があるくらい。加えて心理的な負担なども軽減できる5)、もちろん代理店を使うべきだろう。だが、もし時間に余裕があり、かつ話のネタのストックを増やしたいのであれば、ぜひご自身でトライされることをおすすめする。その際にこの体験談が参考となるのであれば幸いである。

写真:入国管理局事務所の様子。筆者撮影

入国管理局事務所の様子。筆者撮影

脚注

  1. 「インドネシア:調査の手続き――その事例集」 http://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/asia/chiiki/instances01.html
  2. http://www.ristek.go.id/?module=File&frame=lain_lain/frp/frp1.html
  3. 参考までに、証明写真はとあるモールでCDROM付きで7万ルピア/人で購入。サイズごとに受け取れる枚数は異なるが、さまざまなサイズを組み合わせてプリントしてもらうことが可能。
  4. 2010年5月5日付政令2010年第50号(Daftar Jenis dan Tarif atas Jenis Penerimaan Negara Bukan Pajak (PNBP) Peraturan Pemerintah Nomor 50 tahun 2010 tanggal 5 Mei 2010)による。
  5. 入国管理局事務所に提出する申請書(C-1)は全てインドネシア語表記であるため、「負担」にはこうした言語による障壁も含まれる。