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カンボジア:クメール・ルージュ裁判の始動

PDF版ダウンロードページ:http://hdl.handle.net/2344/00049604

2007年10月

2006年7月、「カンボジアの裁判所における特別裁判部(ECCC)」は司法官を任命し、宣誓式を済ませた。これで「民主カンプチア時代の上級指導者であり、カンボジア刑法、国際人道法および慣習法ならびにカンボジアにより承認された国際条約上の重大な違反で、1975年4月17日から1979年1月6日までの期間に行われたことに最も責任を持つ者」(裁判部設置法2条)に対する裁判手続が始まった。

それから1年あまりが過ぎた2007年9月18日、ECCCの共同検察官が最初の付託書を共同捜査判事に提出した。1万4000ページあまりのこの付託書には、共同検察官がカンボジア警察の援助によって行った予備捜査の結論が記載されている。以下、その要約を記す。

「共同検察官は、国際人道法およびカンボジアの法に対する深刻かつ広範な違反が民主カンプチア時代(1975年4月17日から1979年1月6日)にカンボジアで行われたことを確信する。

これらの犯罪は、カンボジアの人々の基本的権利を組織的に侵害し、特定集団を迫害するために、一般計画の一部分として実施された。共同検察官は、この一般計画を実行するために行われた犯罪の証拠として、25件の殺人、拷問、強制移動、不法留置、強制労働、および宗教的、政治的、民族的迫害の事件を特定し、付託する。

これらの事件申立は、人道に対する罪、ジェノサイド、墓所冒涜、殺人、拷問、および宗教的迫害を構成する。したがって、共同検察官は共同捜査官に対してこれらの犯罪の責任者を告訴するように要求した。

予備捜査は、これらの犯罪について、実行、補助、扇動し、かつ/または上官としての責任がある5人の容疑者を特定した。共同検察官は共同捜査官にこの5人の身元情報を提供し、法に則って行動するように要求した。」

ECCCは、付託書に記載された5人の容疑者については「民主カンプチアの上級指導者」とするだけで誰なのかは公表していない。この付託書を受けて、共同捜査判事は7月31日にカン・ケック・イウ(Kaing Guek Eav)別名ドゥッチ(Duch)を人道に対する罪で、9月19日にはヌオン・チア(Nuon Chea)を人道に対する罪と戦争犯罪で、告訴し仮拘留した。

ドゥッチは、8月23日、仮拘留命令に異議申立をした。ECCCの予審裁判はこの異議申立について公開で審問を行うと決定したが、その期日はまだ示していない。一方、ヌオン・チアは拘留される際に上官としての責任を否定し、拘留される筋合いはないと主張したと伝えられるが、弁護人によれば異議申立を出すかどうかをまだ決めてはいないという。