大統領選に左右される市場
ブラジル経済動向レポート(2014年9月)
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貿易収支: 9月の貿易収支は、輸出額がUS$196.17億(前月比▲4.1%、前年同月比▲6.6%)、輸入額がUS$205.56億(同+6.5%、同+9.0%)で、貿易収支は9月として1998年以降で最大の赤字額となる▲US$9.39億(同▲180.5%、同▲143.8%)を記録した。また年初からの累計は、輸出額がUS$1,736.35億(前年同期比▲2.3%)、輸入額がUS$1,743.25億(同▲2.8%)で、貿易収支は▲US$6.90億(同▲57.1%)と再び赤字へと転じた。
輸出に関しては、一次産品がUS$93.38億(1日平均額の前月比▲9.1%)、半製品がUS$27.18億(同+1.2%)、完成品がUS$69.48億(同▲11.3%)であった。主要輸出先は、1位が中国(US$29.06億、同▲25.4%)、2位が米国(US$23.47億、同▲0.7%)、3位がアルゼンチン(US$12.09億、同▲0.8%)、4位がオランダ(US$9.85億)、5位が日本(US$6.48億)だった。輸出品目を前年同月比(1日平均額)で見ると、増加率では柔軟鉄鋼管(+174.4%、US$1.49億)、減少率ではタイヤ(▲100.0%、US$1.11億)がそれぞれ100%を超える増減率を記録した。また輸出額では(「その他」を除く)、鉄鉱石(US$22.26億、同▲23.8%)、大豆(US$13.48億、同▲30.5%)、原油(US$13.27億、同▲18.5%)の3品目がUS$10億を超える取引高を計上した。
一方の輸入は、資本財がUS$40.62億(1日平均額の前月比+3.9%)、原料・中間財がUS$91.60億(同▲6.6%)、非耐久消費財がUS$17.16億(同+2.7%)、耐久消費財がUS$16.83億(同▲1.4%)、原油・燃料がUS$39.35億(同+26.2%)であった。主要輸入元は、1位が中国(US$33.64億、同+4.3%)、2位が米国(US$30.92億、同+6.9%)、3位がアルゼンチン(US$13.09億、同+15.9%)、4位がドイツ(US$11.86億)、5位がナイジェリア(US$9.12億)だった。輸入品目を前年同月比(1日平均額)で見ると、増加率では原油(+114.6%、US$19.67億)が100%超の大幅な増加となり、減少率では家庭用機器(同▲27.6%、US$3.69億)や輸送機器部品(同▲20.0%、US$11.99億)が顕著だった。また輸入額では、原料・中間財である化学薬品(US$25.46億、同▲0.1%)や鉱物品(US$16.68億、同+7.9%)などの5品目、資本財である工業機械(US$10.55億、同▲15.6%)、前述の原油とその他の燃料(US$19.68億、同+14.3%)がUS$10億を超える取引額を計上した。
物価: 発表された8月のIPCA(広範囲消費者物価指数)は、0.25%(前月比+0.24%p、前年同月比+0.01%p)と予想より高い数値となった。食料品価格は▲0.15%(同0.00%p、▲0.16%p)と前月と同じマイナス幅だったが、非食料品のいくつかの分野での伸びが影響した。年初累計は4.02%(前月同期比+0.59%p)で、過去12ヶ月(年率)が6.51%(同+0.01%p)と若干ではあるが政府目標の上限6.5%を再び上回ることとなった。
食料品に関しては、前月に続きジャガイモ(7月▲18.84%→8月▲17.87%)やアサイー(同1.71%→▲9.55%)、主食の一つであるフェイジョン豆(mulatinho:同▲1.95%→▲11.68%、carioca:同▲6.42%→▲3.77%、preto:同▲4.22%→▲3.16%)など、多くの品目でマイナスを記録した。また、家庭消費用(同▲0.51%→▲0.61%)が8月もマイナスとなった一方、外食用(同0.52%→0.71%)は前月より上昇率が大きくなった。
非食料品に関しては、7月に大幅に値下がりした航空運賃(同▲26.86%→+10.16%)が大きく上昇した関係から、運輸交通分野(同▲0.98%→0.33%)がマイナスからプラスへと転じた。また、新学期を向かえた教育分野(同0.04%→0.43%)や通信分野(同▲0.79%→0.10%)の上昇が顕著であった。一方、家政婦賃金が1.26%上昇したが、サッカーW杯の関連で高騰していたホテル宿泊費が▲10.13%値下がりした個人消費分野(同0.12%→0.09%)など、伸び率が低下した分野も見られた。
金利: 政策金利のSelic(短期金利誘導目標)を決定するCopom(通貨政策委員会)は3日、Selicを11.00%に据え置くことを全会一致で決定した。今回で3回連続となったSelicの据え置きは、市場関係者の予想通りであった。同時に発表されたCopomの声明文から、「現状において(neste momento)」という文言が削除されたため、先月発表されたGDPによりブラジル経済はリセッションに入ったものの、中央銀行はSelicを今後しばらく据え置き、景気回復よりインフレ抑制を重視するとの見方が強まった。11日に公開されたCopomの議事録も、物価(IPCA)が政府目標の中心値4.5%に収斂するのは再来年の2016年になると予測しており、中央銀行がインフレ動向に敏感になっている様子を示すものとなった。
為替市場: 9月のドル・レアル為替相場は、10月に行われる大統領選挙の動向に左右され、ドル高レアル安が進行することとなった。月のはじめ、Dilma大統領の支持率が予想より低下しなかったことでレアルが売られたのと同時に、欧米とロシアの関係悪化、スコットランド独立をめぐる住民投票、中国の輸入減少など海外での不安定要素からドルを買う動きが活発化した。その後も、格付け会社のMoody’sがブラジルの信用見通しを「安定的」から「ネガティヴ」へ変更したことや、大統領選に関する世論調査でDilma大統領の支持率が上がったことを嫌気して、レアルを売る動きが続いた。また、公開された米国FRBの議事録でゼロ金利政策が当面維持される一方、来年以降の引き上げ予測が示されたことや、中国の経済成長の鈍化に対する懸念などのドル買い要素も加わった。
月の後半、急激なドル高レアル安の進行に対して、中央銀行が日常的に行っているスワップの為替介入の規模を拡大したことで、若干レアル高に振れる場面も見られた。しかし、大統領選でDilma大統領の優勢が顕著になると再びレアルは大きく売られ、29日にはUS$1=R$2.4522(売値)と今年のドル最高値を更新した。そして月末、ドルは前月末比9.44%の上昇となるUS$1=R$2.4510(売値)で9月の取引を終えた(グラフ1)。
(出所)ブラジル中央銀行
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株式市場: 9月のブラジルの株式相場(Bovespa指数)も為替市場と同様、大統領選の動向に左右され、概ね値を下げる展開となった。月のはじめ、世論調査でMarina候補が勝利する可能性が示されたことで、株価は2日に61,896pの今年の最高値を記録した。しかし、その後に発表された世論調査でDilmaの支持率が高かったことに加え、Petrobrasをめぐる汚職疑惑に大物の現閣僚や議員が関わっていた可能性が明るみに出たことで同社株が売られ、株価は下落に転じた。
月の半ば、鉄鉱石の国際価格の上昇を受けValeなどの関連株が買われたことや、Dilma大統領の支持率が若干低下した一方、企業団体を支持基盤の一つに持つPSDB(ブラジル社会民主党)のAécio候補が盛り返したことで、株価は一時上昇する場面も見られた。しかし、Dilma大統領の支持率が上昇すると株価は再び下落。月の後半、米国の第2四半期GDPが好調だったという好材料もあったが、大統領選でDilma大統領のリードが広がったこともあり、Petrobrasなどの政府系企業を中心とした株が売られ、29日には一日で▲4.5%もの大幅な下落となった。そして株価は月末、月内の最安値となる54,116pまで値を下げ、前月末比で▲11.70%もの下落で9月の取引を終了した(グラフ2)。
なお9月は、経済運営に対する評価の低いDilma大統領が再選する可能性が高まるにつれ、ブラジルのカントリー・リスクも上昇する結果となった(グラフ3)。
(出所)サンパウロ株式市場
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(出所)J.P.Morgan
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