ラテンアメリカ・レポート
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論稿
エルサルバドルにおける司法の危機と専制化の予兆
笛田 千容
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2022 年 38 巻 2 号 p. 35-47

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抄録

2019年の大統領選挙での勝利につづき、2021年2月の国会議員選挙で自身の政党が勝利を収めたエルサルバドルのブケレ大統領は、同年5月1日の新国会発足と同時に違憲審査権を行使する最高裁憲法法廷の掌握を図り、政権の意向に沿って憲法解釈を行う機関に変質させた。つづいて最高裁および裁判所システム全体に対する影響力を強めながら、憲法改正の準備に進んでいる。また、それと並行して、検察長官の交代や汚職事件の捜査にかかわる国際的な協力協定の破棄によって検察を掌握し、「反汚職」を旗印に政敵の排除に邁進している。本稿は、これらの経緯を整理し、そこから導出される長期政権化のシナリオを提示する。

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© 2022 日本貿易振興機構アジア経済研究所
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