サンパウロ州はブラジルのなかでも外国移民を多く受け入れ、州都であり南米最大の都市サンパウロ市では現在でも多くの外国人が居住や往来をしている。一方、ブラジルは治安が劣悪なことで知られているが、サンパウロ州の警察は1990年代以降、日本の交番システムをベースにした施策も含め、地域コミュニティを重視する治安対策を実施している。本稿では、サンパウロ市の外国移民が多く居住・労働する地区でのフィールド調査をもとに、新たな治安対策が試みられるなか、犯罪に巻き込まれる可能性も高い外国移民がどのような状況にあるのかを究明する。そして、犯罪の予防には地域コミュニティに関する情報の共有が重要であり、新たな治安対策は情報共有のネットワークを構築しようと試みているが、外国移民は情報共有の場との関係性が希薄である現実を指摘する。