アジア経済
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研究ノート
共産党一党独裁体制と大衆組織――ドイモイ期ベトナムにおける女性連合の政治的機能――
石塚 二葉
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2021 年 62 巻 4 号 p. 25-48

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抄録

大衆組織は,ベトナムの独立達成の過程において重要な役割を果たし,以後,情勢の変化に応じてさまざまに異なる任務を与えられてきた。しかしながら,いずれの時期においても,大衆組織が社会主義政治システムの基本的な構成要素であり,そのさまざまな活動を通じて共産党一党独裁体制を支えていることに変わりはない。革命や戦争,生産活動などのための大衆動員の必要性が低下したドイモイ期においては,大衆組織は,その構成員の利益を代表したり,構成員の間の相互扶助を促進するなど,一定の民主的ないし開発上の役割を果たすようになっている。このように構成員にとって有用な活動を行うことにより大衆組織は彼らの忠誠心を確保し,党の路線の伝達や当局への情報提供などの伝統的な役割を効果的に果たすことで,政治体制の安定性向上に貢献することが期待されているのである。本稿は,ベトナムで最多の構成員を擁し,最も活動的な大衆組織であるといわれる女性連合に焦点を当てる。その草の根レベルの組織・活動の実態調査を手掛かりとして,女性連合が日常的に多様な任務を遂行していることを示し,ベトナムの社会主義政治体制の安定性に貢献するその能力や直面する課題についての若干の評価を行う。

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© 2021 日本貿易振興機構アジア経済研究所
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