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資料紹介:コンゴ動乱と国際連合の危機――米国と国連の協働介入史、1960~1963年――

アフリカレポート

No.56

 

PDF版ダウンロードページ:http://hdl.handle.net/2344/00050147

資料紹介:三須 拓也 著 『コンゴ動乱と国際連合の危機――米国と国連の協働介入史、1960~1963年――』

■ 資料紹介:三須 拓也 著 『コンゴ動乱と国際連合の危機――米国と国連の協働介入史、1960~1963年――』
武内 進一
■ 『アフリカレポート』2018年 No.56、p.12
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コンゴ動乱を題材とした本書は、国際関係史分野における世界水準の研究書と評価できる。このような書籍が日本語で出版されたことは大変喜ばしい。

1960年7月、前月末に独立を果たしたばかりのコンゴ民主共和国は、兵士の反乱、そして経済を支えるカタンガ州の分離独立宣言をきっかけに全国規模の紛争状態―コンゴ動乱―へと突入した。動乱の中、ルムンバ首相の要請で、国連は最大時約2万人の平和維持部隊(ONUC)を展開した。国連が大規模な介入を実施する中、ルムンバがモブツのクーデタで失脚し、カタンガ州で暗殺されるなど、コンゴ情勢は目まぐるしく変化した。ONUCの武力攻撃によって1963年にカタンガ州が分離独立を撤回するまで、コンゴ動乱は全世界の注目を集め続けた。

コンゴ動乱には国際的なアクターが深く関与している。カタンガ州の分離独立宣言の背後でベルギーが糸を引いていたし、米国はモブツを支援してルムンバを失脚させた。こうした西側諸国の関与はこれまでの研究でかなり明らかにされてきた。本書はONUCに焦点を当て、その行動が米国の圧倒的な影響下に置かれていたことを明らかにする。ハマーショルド率いる国連とONUCは事実上米国の駒であり、コンゴに対して米国と「協働」して「介入」した。この主張を本書は、徹底的な史料調査を通じて解明していく。米国、英国、国連など10を超える文書館、図書館で渉猟した史料を用いた論述には、強い説得力がある。

本書の主旋律は国連と米国による「協働介入史」の解明にあるが、それだけが本書の魅力ではない。膨大な史料に基づく記述は、コンゴ動乱の性格、そしてそれが起こった1960年代初頭という時代を様々な角度から照射する。コンゴ動乱が冷戦に大きく影響されたことはよく知られているが、それですべて説明できるほど単純な話ではない。コンゴ中央政治の混乱には冷戦の影響が大きいものの、カタンガ分離はそうではなく植民地統治との関連が深い。コンゴ動乱は「複合危機」として捉えるべきだとの主張には目を開かされた。

本書は、日本のコンゴ研究にとっても重要な意味を持つ。コンゴ民主共和国は、その巨大さ、複雑さ、入りにくさなどのために、研究が難しい国の一つである。長く読み継がれ、日本におけるコンゴ理解の水準向上に貢献する一冊となることだろう。

武内 進一(たけうち・しんいち/アジア経済研究所・東京外国語大学)