IDEスクエア

海外研究員レポート

高等教育無償化へ大きく舵を取るフィリピン――2010年代早くも2つめの大規模教育政策

PDF版ダウンロードページ:http://hdl.handle.net/2344/00049788

岡部 正義

2017年10月

フィリピン教育界が"忙しい"

2017年8月3日(木)、経済官僚らとの打ち合わせを夕方に終えたロドリゴ・ドゥテルテ大統領は共和国法(RA)第10931号、正式には「Universal Access to Quality Tertiary Education Act」(高等教育無償化法:以下、無償化法)法案に署名した。同法案が可決され大統領の署名を得たことで、選挙公約でも掲げられていた大学の無償化が2018年度から全国112の国公立大学・職業訓練校で実施される見通しとなった。日本でも教育無償化が様々に話題になっているさなか、隣国フィリピンの高等教育無償化には耳目が集まってよいだろう。

これに先立ち5月には「無償化法の成立まであと残すは大統領の署名のみ」と題する新聞記事を目にしていたが(Pilipino Star Ngayon, 2017)、当時の報道の論調は、政策を歓迎する声がある一方、国家財政や政府予算の現実に照らせば政策の実効性は乏しいというものだった。経済官僚やアドバイザーが大統領に再考を促すよう助言していたとも報じられていて、当時は「大統領が承認して本当に署名してくれるかどうかまだわからない」と懐疑的な声を漏らす者もいた。しかし、最終的に同法案は議会を通過し、8月についに大統領の承認を得たのであった。

無償化の対象となる112の国公立大学(SUCs: state universities and colleges)とは、国立のフィリピン大学(UP)の全キャンパスと、マニラおよび各地方に存在する公立大学(state colleges)の学士課程、そして国公立の職業訓練課程を指している。来年度の無償化を全国的に目指しているが、現在筆者が客員研究員として勤務しているフィリピン大学では今セメスターからすでに無償化が実施されると同僚から聞いている。一方、私立大学(PUCs: private universities and colleges)は無償化の対象にはならない。

実は、今回の無償化法に先立って、すでに2012年からフィリピンでは「K–12プログラム」という教育改革が開始され、国レベルで抜本的な基礎教育分野の改革が進められてきている点を強調しておきたい。同プログラムにより、就学前教育が義務課程となり、中等教育は旧来の4年制から6年制に延長される。中等教育は4年間が中学校(JHS: junior high schools)と呼ばれ、追加で2年間の高校(SHS: senior high schools)が新規に設置される(Okabe 2013; 2018, Adarlo 2017)。教育暦2017年からはJHSを終えて最初のSHSの1年生が就学し始めたばかりである。

このK–12プログラムの教育制度改革とその実施自体が、これまでのフィリピン教育制度史上、極めて大規模なものである。そこにかかるカリキュラム改革、新規の物的・人的資源の確保は国家レベルの課題・挑戦である。そこに来て今回、高等教育の無償化法が成立したことで、フィリピンは基礎教育から高等教育に至るまで教育分野全体を梃子とした人間開発・社会開発の大変化の瞬間を現在進行形で歩んでいるといっても過言ではない。2010年代に入ってからのフィリピン教育界が忙しい。

悲喜交交な世論の反応

無償化法の理念の一つに、これまで経済的に恵まれないがために大学進学を果たせなかった低所得層に対する高等教育への「普遍的アクセス」(universal access)があるといわれている。確かに、フィリピン経済は、中間層の成長と旺盛な国内消費、そして老年人口に比して多くの若年人口を抱える国の人口学的な「若さ」に支えられ、近年は成長目覚ましいといわれる。しかしながら、同時に貧困問題が根強く存在する国でもあり、それがフィリピンの「病理」とさえ形容されている(不破,2014)。家庭が貧しかろうと豊かであろうと、学ぶ意欲と能力さえあれば所得や学費を気にせず大学に行けるようにしようという理念自体は崇高で普遍的な価値をともなったものである。これまでの途上国教育開発論は初等教育が中心であったことからも、今のフィリピンはそこから高等教育に及ぶ教育普及に進み出ている、と一方でポジティブに評価できるだろう。

他方では、同法についてはネガティブな意見も絶えない。例えば、SUCsに入る学生はもともと比較的裕福層であり、SUCsを無償化しても、真の貧困層支援にはなりえない、という批判の声が議会の一部から上がっている(この点については「無償化政策は低所得層のためになるのか」で後述する)。また、現在は「K–12プログラム」により追加された普通科や職業科のSHSの量的質的な拡大過程にある。しかし、大学無償化に向けた現実問題として、政府は追加的な財政予算を捻出し、高等教育を管轄する高等教育委員会(CHED)と、関連職業訓練を実施している技術教育技能開発局(TESDA)を通じて配賦を行う必要がある。10月23日までの報道によると、平均して1大学ごとに約1,000万ペソもの追加予算増加を1年でもたらすと上院議員は試算している。

このようなSUCsに対する追加予算の拡大は、教育予算全体での配分のバランスを大幅に崩すことになる。例えば、基礎教育との衡平という問題がある。フィリピンでは、CHEDは高等教育を管轄しているが、基礎教育(初等・中等教育)の管轄は教育省(DepED: Department of Education)である。DepEDのブリオネス教育相は、K–12プログラムに対応したSHSの拡大が急がれるなか、今回の大学無償化で教育予算が大きく高等教育分野に差し向けられることになると、何百万人もの基礎教育段階の生徒たちが来年度に学校がない事態に陥ると警鐘を鳴らしている。

SUCs生への例外(制限)規定とPUCsとの関係

(1)例外(制限)規定

今通っている、あるいはこれから通う大学が無償になったら誰でも喜ぶだろう。例えば、フィリピン大学では、予算問題を中央省庁が議論しているさなか、同大学独自にすでに今セメスターから無償化が始まっている。フィリピン大学は、国を代表する国立大学として、その自己裁量権やCHEDからの独立性が他のSUCsより高い。何人かの学生にインタビューすれば、皆が異口同音に「今回の法律を歓迎する」「家族も自身も大いに喜んでいる」と口をそろえる。

ただ、無条件にSUCsの学生であればこの無償化の恩恵に浴し続けられるわけではない。いくつかの例外規定が条文に定められている。SUCsでは、

① すでに高等教育機関(公的か民間か不問)から学士号または同等の学位を授与された学生

② SUCsのアドミッション・ポリシーに従わない学生

③ 正規年限かその終了1年以内に学士号または同等の学位を取得できなかった学生 は対象外となることを同法第6条で定めている。したがって、修士課程、専門職課程、博士後期課程の学生(大学院生)は対象とはならない。

また、同様に職業訓練課程についても、

① 学士号を取得した学生、および少なくともIII種国家卒業証明書以上に相当する専門職業訓練コースを受講し修了した者

② 途中でコースに参加できなくなった学生 は対象外と同法第6条で規定し、以上のいずれかに相当すると判断された学生に対しては、各大学当局または職業訓練課程にあってはTESDAによって授業料等が課されるものと断っている(条文の定訳はないので、英訳は筆者による)。

(2)PUCsとの関係

PUCsが高等教育発展に果たしてきた役割を政府は高く評価し、SUCsとさらに連携して教育の価値を相乗的に高めていくよう協働していく姿勢を無償化法で明記しているが(第2条)、PUCsは無償化政策の直接対象外である。したがって、本来は貧困層に就学支援を向ける目的があるのに、実は資力が相対的に高い層のPUCsの学生が無償化の恩恵を狙ってSUCsへ転学しようとするようなモラル・ハザードの問題も想定される。この点に関してCHEDは、SUCsが予算を受け取る際に入学試験の厳格化を課すことを盛り込み、転学も認めないように徹底するとしている。ただ、受験時に資力があることで逆に差別をすることもできないだろうから、そのような学生移動を事前に判別・予防できるかについては不確実性が残る。

そもそもフィリピンの高等教育機関はPUCsが多いのも事実である。フィリピンの伝統的で社会的威信の高い大学もPUCsに多い。今回の無償化政策は、一方ではPUCs離れを加速化する可能性がある。無償となったSUCsの人気が上がって入試競争はより激しくなり、他方、一部のPUCsのブランド校が学生の受入に際して学費を値上げするなど強気の姿勢に出ることで、SUCsや一部のPUCsへのアクセスが従前よりますます競争的になる可能性も考えられる。

無償化政策は低所得層のためになるのか

以上の議論においては、無償化政策は低所得層のためになるのか、つまり“pro-poor”な政策となるのかが一つの論点である。以下では選択的に、低所得ゆえに大学にアクセスできなかった貧困世帯出身の学生のアクセスに無償化政策が効果的に寄与しうるのか、という点を取り上げて予備的な分析を試みたい。ここでは、フィリピン国家統計局(Philippine Statistics Authority: PSA)が実施している全国レベルの標本調査「年次貧困指標調査」(Annual Poverty Indicator Survey: APIS)から、現時点でPSAから利用可能な最新の2013年版個票レベルのデータを用いることとする1 。APISは所得、消費、資産などに関する詳細な貧困関連の世帯調査であるものの、世帯レベルだけでなく、世帯の構成員に関する基礎的な人口学的・社会経済的項目が個人レベルでも調査されている。

(1)所得と大学アクセスの2変数比較

もっともシンプルに所得と大学アクセスの2変数を図示して比較することから始めてみたい。手順は、APISのデータから、まず調査時点で大学に在学中の学生たちを特定し、SUCsかPUCsのどちらに通っているのかに分類する。さらに、大学在学中の学生の総人数に占めるSUCsとPUCsに在学する学生数の割合をそれぞれ出し、これらを家計所得レベルの低い方から分けた10分位ごとに区切ってプロットする。以上をもとに横軸に所得分位、縦軸に学生の割合を図1に図示した。

図1 所得分位別の国公立・私立大学の学生の割合(n=2012)

図1 所得分位別の国公立・私立大学の学生の割合(n=2012)

出所:APIS 2013をもとに筆者推計。

図1からは、PUCsについては、低所得層はアクセスが困難である一方、所得レベルが上がるにつれて右肩上がりの線を描いていることが分かる。他方でSUCsは、右肩上がりの関係性を示す線を描かず、PUCsと比べて所得とアクセスとの関係はシステマティックではない(とはいえ、第1・第2カテゴリーにある所得の低い世帯の学生は、第3カテゴリーより上位に比べてアクセスが落ち込んでいる)。ここからおおまかに掴める傾向は、i) 所得の高低が大きく相関しているのはPUCsへのアクセスである。ii) SUCsは無償化前の2013年時点ですでにPUCsよりも低所得世帯にとってよりアクセスしやすい傾向が読み取れる。ただし、iii) PUCsのような所得とアクセスのシステマティックな関係は明瞭ではない。1時点のクロス・セクショナルな調査ではあるものの、フィリピン全土から標本抽出されたデータが示す傾向として参考になるだろう2

(2)偏相関関係の確認:回帰分析アプローチ

ここで、例えば所得の属性が別の社会経済的属性と混ざって相関していて、それらの属性を考慮すると所得との相関関係は希薄化するとしたら、図1のように2変数の関係を比較することについては得られる結論は確からしさを失う可能性がある。そこでその点を考慮するため、計量経済学で用いられる偏相関関係を探る回帰分析アプローチを用いてみる。とはいえ、本稿は専門の学術論文ではない報告書であるから、単純なベンチマーク・モデルの分析にとどめ、偏相関関係(他の変数をコントロールしたうえで当該変数との相関関係)から貧困層が大学にアクセスしづらいのかどうかについて確認することに主眼を置く(したがって、ベンチマーク・モデルのさらなる定式化や使用変数による分析の頑健性のチェック等、専門的作業は本稿では割愛し、別稿に委ねることとしたい)3

ここでは、在学中の個人だけでなく、同様の年齢層にありながら大学に通っていない層も分析のサンプルに加える。つまり、{SUCsに通っている; PUCsに通っている; そもそも就学していない}という3つの状態(被説明変数)が想定できる。それぞれの状態には順番はないものと解釈し、多項ロジット・モデル(multinomial logit)を用い4、{そもそも就学していない状態}をベース(参照)の状態として、{SUCsに通っていること}、{PUCsに通っていること}がそれぞれどのような特徴と相関しているのか、回帰係数を推定して、偏相関関係を探索してみる。説明変数は、本人の性別と年齢、世帯の所得に関する情報(1人当たり所得の対数値、国全体の所得額下位30%に入る世帯を示すダミー変数)5、居住地(マニラかマニラ外か)、世帯主の年齢と教育(大学4年以上か)に絞ってみたい。使用した説明変数の要約統計量は表1に示した。

表1 基本統計量

表1 基本統計量

(出所)図1に同じ。

回帰分析の結果は表2に示した。所得については、基本的な個人や世帯に関する変数をコントロールしてもなお、SUCsとPUCsのいずれも所得が高いほど大学に通っている学生が多く、逆に国全体の所得額下位30%に入る世帯の子弟ほど大学に通っていない関係が読み取れる。その他については、i) 本人の年齢が高いほど大学に通っている学生は少なくなり、ii) 男性と比べると女性の方がより大学に通っており、iii) 世帯主の教育水準が高いほどその子弟もまたより大学に通っている傾向が確認できる。なお、iv) マニラに居住しているかどうかについては有意な違いは認められなかった。

表2 多項ロジットモデルによる推定結果

表2 多項ロジットモデルによる推定結果

(注)角括弧内はWhiteの頑健標準誤差。 (出所)図1に同じ。

以上の結果からは、図1で見たSUCsへのアクセスと所得の関係は不明瞭であったが、回帰分析による偏相関関係の解釈に基づくと、PUCsのみならずSUCsについても統計的に有意に強い正の相関関係にあることがわかる。特に、1人当たり所得の対数値だけでなく、低所得階層を表すダミー変数の係数も定性的に同様の結果を示しているので、低所得階層ほどSUCsアクセスにできないと解釈することができる。ただし、SUCsよりPUCsの方が所得との相関関係は推定された係数からみるとかなり大きい。したがって、SUCs、PUCsに通学することと所得との間には有意に相関関係があるものの、PUCsの方がより所得との関係が強そうであると言える。

まとめ

本稿では、前半は無償化政策の概要と論点のいくつかを説明した。議会の一部からは、無償化政策は低所得層に届かず中高所得層にかえって有利になるとの批判が出ているが、図1のような比較ではなく偏相関関係を探ると、少なくとも後半の予備的分析からSUCsであっても低所得層であるほどアクセスできていない関係性があり、無償化は一定の低所得層にとって就学の制約を緩和する可能性はある。ただし同時に、多くの学生が通い、しかも所得と通学確率との相関がより強いPUCsにおいて従来通り学費が変わらないのならば、真に高等教育の普遍的アクセスが行きわたる度合いは限定的と言わざるを得ない。

予算やその配分の選択肢は限られている以上、無償化政策の効果をより厳密に検証する作業も重要であり、冷静な科学的分析が今後ますます欠かせない。例えば、開発経済学や教育経済学で近年頻繁に参照される条件付き補助金(CCT)のような条件付けに基づく細かな運用制度設計は有効であろう。今のところの無償化法の中身は、SUCsの授業料を一律ゼロ化するもので、条件なし(unconditional)の補助金である。しかし、フィリピンでは、中南米で特に実績を上げてきたCCTの自国版として「Pantawid Pamilyang Pilipino Program」(通称4Ps)というプログラムが社会福祉開発省により実施されている。これは、世帯のミーンズテストを行い、貧困状況の特定と子どもたちの教育や保健分野における就学や定期的な検診、親のセミナー参加などに条件付けて補助金が支給するプログラムで、高校生まではカバーされる。大学の無償化も卒業についての条件は条文で規定しているが、低所得層により届く“pro-poor”な政策とするためには、すでにフィリピン内に経験が蓄積されつつある4Psの実践と理念を今後取り入れていく路線が一つ有効である。

また、所得の低さそのものが意味するものは何か、について思考を広げることも重要である。所得が低いことは、大学入学以前の問題——例えば、小学校や中学校ですでに十分な教育を受けることができなかった;親の農業を手伝うために学校を休んで畑に付きっ切りだった;両親ともに働いているので兄弟の面倒をみるために育児や家事に多くの時間を割かざるを得なかった;学校から出されるプロジェクトと呼ばれる課題をこなすための材料費が支払えず成績が悪かった——などの代理変数であり、これらが絡み合っている可能性が極めて高い。教育のコストは学費のような直接費用だけでなく、家で必要とされている仕事や役割ができなくなる機会費用や、交通費・食費・プロジェクト費などの間接費用も合わさっている。貧困層であるほど大学に通う年齢層にとっては後者のコストが足かせとなる度合いが大きい。所得が低いということだけでなく、低所得層がどのような状況に置かれて教育アクセスが難しいのか問題構造の記述が欠かせない。また、今後不足する予算を海外からの開発援助に期待する声があることも報じられているが、そのためには計量経済学的な評価モデルの精緻化(場合によっては構造推定アプローチ的な政策シミュレーション)や公共経済学や教育行財政論における便益帰着分析、あるいは定性的調査の併用などにより、エビデンスを示す必要性が出てくるはずである。これらを総合的に考えることこそが、真に“pro-poor”な無償化に向けた必要な一歩となる。8月に決まりまだ実施の緒についたばかりの無償化法ではあるが、教育普及に大きく舵取りしたフィリピンの今後を筆者は引き続き集中して見ていきたいと痛感している。

(2017年12月配信)

著者プロフィール

岡部正義(おかべまさよし)。アジア経済研究所海外研究員,フィリピン大学労働産業関係研究科客員研究員。開発経済学,教育経済学,国際教育開発学、フィリピン研究。主な著作に,“Gender-preferential Intergenerational Patterns in Primary Education Attainment”(International Journal of Educational Development, Vol. 46, 2016年),「フィリピン・ミンダナオ農村部における教育需要の持続性に関する社会経済分析」(『アジア研究』63巻1号,2017年)など。

書籍:International Journal of Educational Development

書籍:アジ研 ワールド・トレンド

注記

本稿は2017年10月24日に執筆されたものである。トピックの性質上、取り上げた内容には現在進行中のものもあるため、その後の動向に変化がある可能性をあらかじめお断りしておきたい。

参考資料


  • Adarlo G., Jackson L. 2017. "For Whom Is K–12 Education: A Critical Look into Twenty-First Century Educational Policy and Curriculum in the Philippines." In Educating for the 21st Century, edited by Suzanne Choo; Deb Sawch; Alison Villanueva; and Ruth Vinz. Singapore: Springer: 207–23.
  • 不破信彦. 2014. 「フィリピンの貧困はなぜ減らないのか:労働市場からの接近にむけての予備的分析」『アジア太平洋討究』第23巻: 235–46.
  • Pilipino Star Ngayon. 2017."Free college, isang pirma na lang batas na." http://www.philstar.com/bansa/2017/05/30/1704835/free-college-1-pirma-na-lang-batas-na (accessed May 30, 2017).
  • Okabe, Masayoshi. 2018 (forthcoming). "'K to 12’Program as a National HRD Program to Develop the Workforce." Philippine Journal of Labor and Industrial Relations,forthcoming (revised version of IDE Discussion Paper 425,titled "Where Does Philippine Education Go? The "K to 12" Program and Reform of Philippine Basic Education," 2013).
  • Orbeta, Aniceto C. Jr. 2003 (revised). "Education, Labor Market,and Development: A Review of the Trends and Issues in the Philippines for the Past 25 Years." Discussion Paper Series no. 2002–19. Makati: Philippine Institute for Development Studies.

脚 注


  1. データの提供元であるPSAには深甚に感謝申し上げる。
  2. 最新のAPISを用いた確認だけでなく、もちろん近年の経時的な変化を見ることも重要である。例えば、カバーしているのは2000年初頭までだが、その過去四半世紀のトレンドを労働市場と教育分野についてレビューしたOrbeta (2003)は有用な資料である。1970年代半ばから2000年頃に至る時期の高等教育進学に関するトレンドを知ることができる。これによれば、概ね本稿で述べた傾向は長期的に確認される傾向と類似している。
  3. さらに専門的に敷衍すれば、ベンチマーク分析か詳細な分析か以前に、そもそも政策実施前の過去のデータを用いて誘導形の計量分析を行うという前提や発想そのものに批判があるだろう。もしこれから進行する政策の効果を予測するような将来を向いた厳密な分析を行う動機や志向がある場合、経済主体が直面する制約下の最適化問題を解く進学モデルを構築し(複数の連立方程式体系になりうる)、大量の数値計算から各パラメーターの推定やシミュレーションをめざす構造推定(structural estimation)と呼ばれるアプローチがより適切な場合があるからである。ただし、このような話題は本稿の範囲を大幅に超えるものとご理解いただきたい。
  4. なお、被説明変数について3つの状態が対等な選択肢ではなく、まず{大学に通えるか、通えないか}の二択があり、さらにその選択の確率のもとで大学に通ったとして、さらに{SUCsか、PUCsか}という二択がある、と被説明変数の構造を捉えられるかもしれない。そこで、多項ロジットではなく逐次ロジット(sequential logit)モデルでも分析をしてみたが、表2の分析結果と定性的には変わらない結果となった。
  5. したがって、所得については同時決定による内生性という問題の可能性が考えられる。例えば、大学生を抱えているがゆえにその世帯では所得を多く稼がざるを得ないとすれば、大学→所得という逆方向の因果関係もありうる。本稿では既述の通り、所得が原因か結果かは論じられず、あくまで双方の相関関係として解釈する。