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独裁強化と世襲に動くカンボジア政治――2022年コミューン評議会選挙がもつ意味

Cambodian Politics Moving Toward Hegemonic Party Autocracy and Hereditary Succession: Implications of the 2022 Commune Council Elections

PDF版ダウンロードページ:http://hdl.handle.net/2344/00053469

山田 裕史
Hiroshi Yamada

2022年8月

(9,374字)

独裁強化後、初の直接選挙

フン・セン首相率いるカンボジア人民党の長期支配が続くカンボジアでは、2022年6月5日に第5期行政区・地区評議会(以下、コミューン評議会)選挙の投開票が実施された。2017年の最大野党・救国党の解党と2018年の第6期国民議会議員選挙(以下、総選挙)における人民党の全議席独占後、初めての直接選挙であり、四分五裂の状態に陥った旧救国党勢力がどの程度まで反人民党票を取り込めるかが注目された。

国家選挙委員会(NEC)が6月26日に発表した公式結果によれば、74.32%の票を得た人民党が、1652選挙区のうち1648選挙区で第1党となってコミューン長ポストを獲得するとともに、1万1622議席中9376議席を得て圧勝した。一方、16政党が乱立した野党勢力は、得票率22.25%のキャンドルライト党が4つのコミューン長ポストを含む2198議席を獲得して善戦した。

独裁強化後のカンボジア政治の現在地と2023年7月に予定される総選挙を考えるうえで、この選挙結果はどのような意味をもつのだろうか。本稿では以下、カンボジア政治におけるコミューン評議会選挙の位置づけを確認し、今回の選挙の政治的文脈を整理したうえで選挙結果の分析を行う。そして今回の選挙によって、フン・センによる世襲への動きが一定の正当性を獲得するとともに、キャンドルライト党が次回総選挙に向けた人民党の封じ込め対象となったことを指摘したい。

写真1 投票するフン・セン首相(2022年6月5日)

写真1 投票するフン・セン首相(2022年6月5日)
コミューン評議会選挙の位置づけ

コミューン評議会とは、3層制の地方行政区分の第3層に位置する地区と行政区(2つを合わせてコミューンと呼ぶ)に設置された代表機関である(図1参照)。村は憲法上の行政級ではない。2002年2月に導入されたコミューン評議会は任期5年で、各コミューンの人口と地理に応じて5人、7人、9人、11人のいずれかで構成される。国民議会議員選挙と同様、拘束名簿式比例代表制を採用しているため無所属候補者は立候補できない。そして各コミューンで第1党となった政党の候補者名簿最上位の者が、評議会議長とコミューン長を兼任する1

図1 地方行政区分と各種議会

図1 地方行政区分と各種議会

(出所)カンボジア王国憲法および首都・州・市・郡・区行政管理法をもとに筆者作成。

1990年代末までに他政党に対する優位を確立した人民党は、2000年代に入るとコミューン評議会選挙の導入を皮切りに、各種選挙を導入する順序と選挙制度(直接選挙か間接選挙か)を巧妙に組み合わせて、自らの支配を強化する選挙サイクルを構築した(山田 2020)。2006年に上院議員選挙(以下、上院選挙)と村長選挙、2009年に首都・州および市・郡・区評議会選挙を導入し、中央から末端の村にいたるまで選挙が実施されるようになった。

ここで重要なのは、これらの選挙を間接選挙とし、コミューン評議会議員に選挙権を付与した点である2。とりわけ2006年に導入された村長選挙は村長の任期を無期限としたため(Krasuong Mahaphtey 2006)、当時コミューン評議会の98.58%で過半数を占めていた人民党は、ほぼすべての村長ポストを永続的に維持することに成功した。こうしてコミューン評議会は2000年代末までに、単に総選挙の前哨戦という意味だけでなく、コミューン評議会選挙を制すれば上院、首都・州および市・郡・区評議会、村長ポストを確実に支配できるという、人民党支配を支える重要な機能をもつことになったのである(山田 2020)。

独裁と個人支配強化のなかでの選挙

今回の選挙は人民党が圧倒的優位の状況で行われた。2013年総選挙と2017年6月のコミューン評議会選挙で救国党が躍進し、体制維持に危機感を抱いた人民党は同年9月、救国党のクム・ソカー党首を外国との通謀による国家反逆の容疑で警察に逮捕させ、11月には救国党を解党に追い込んだ。それにより救国党が獲得した5007のコミューン評議会議席は同選挙に参加した諸政党に割り当てられ、人民党は4551議席を得た。その結果、得票率50.76%の同党は1万1572議席中、1万1051議席(議席占有率95.50%)を獲得するにいたった。つまり、人民党は選挙で減らした議席を、救国党の解党により強引に取り戻したのである。一方の救国党勢力は、指導部内の対立や幹部の他党への移籍などにより分裂し、弱体化した。

さらに人民党は、2013年総選挙後の選挙改革によって失ったNECに対する支配を再び回復した。NEC構成員9人(人民党4人、救国党4人、選挙監視NGO「カンボジア自由かつ公正な選挙のための中立・公正委員会」[NICFEC]の事務局長)のうち、2017年11月に救国党枠の3人が上述の議席割り当てに抗議して辞職し、12月に人民党を含む3政党がポストを獲得した。これにより5人が人民党系となり、同党はNECの過半数を上回ったのである。

コミューン評議会とNECに対する支配を再確立した人民党は2018年以降、中央レベルと地方レベルの双方で選挙に圧勝して独裁色を強めるとともに3、フン・セン首相の個人支配を強化した。まず2015年6月に党内最大のライバルであったチア・シム上院議長兼党首が死去して以降、党首に昇格したフン・センの権威づけが進んだ。2018年1月の人民党臨時大会決議では、「カンボジア人民党の核心であるフン・セン殿下」という表現が初めて登場し(Kanapak Pracheachon Kampuchea 2018)、「フン・セン一強」という政治状況が生じた。そしてポル・ポト派との内戦の完全終結から20周年を迎えた2018年12月には、フン・センによる平和の達成を称えるウィン・ウィン記念碑がプノンペン都郊外に完成し、フン・センを「平和の立役者」や「平和の父」とみなす動きがより活発になった。さらに2020年初頭から「Orkun(ありがとう) Santepheap(平和)」というスローガンをすべての国家機関と学校に掲げるキャンペーンが始まった。

フン・センによる個人支配の強化を象徴するもうひとつの例は、長男フン・マナエト(1977年生まれ)への世襲に向けた動きである4。2021年12月、フン・センが長男を後継指名すると、党中央委員会は全会一致でマナエトを「将来の首相候補」に選出するにいたった。

フン・センにとって今回のコミューン評議会選挙は、後継指名に対する民意を測りつつ、2023年総選挙で圧勝して世襲を正当化し、盤石の態勢で長男に権力を移譲する道筋を整えるという意味で重要な意味をもつ。

人民党がコントロールした選挙過程

今回の選挙は、圧倒的優位に立つ人民党にキャンドルライト党5を中心とする野党勢力が挑む構図となった。政治活動を休止していたキャンドルライト党は、元幹部の一部が復帰したことで2021年11月に再始動し6、野党のなかで唯一、人民党に匹敵する数の候補者を全国規模で擁立することに成功した。その候補者の7~8割は旧救国党関係者であった7

まず筆者が観察した選挙キャンペーンからは8、2013年総選挙、2017年コミューン評議会選挙と大きく2つの違いがみて取れた。

第1の違いは、2013年と2017年の両選挙でみられた若年層による変革を求める声や野党への公然たる支持表明が影を潜める一方で、大掛かりなステージを設置して歌やダンスなどエンターテインメント要素を盛り込んだ人民党の選挙集会に、多くの若者が楽しそうに参加している点である。2013年総選挙後、若年層の取り込みが課題となった人民党は、首相の三男フン・マニー国民議会議員が率いる官製NGO「カンボジア青年連盟連合」(UYFC)を通じて、各種キャンペーンやチャリティー活動、さらには選挙監視活動に多くの若者を積極的に動員し、若年層の脱政治化を図ってきた(Norén-Nilsson 2021)。

第2は、人民党が選挙過程をコントロールしていることである。筆者が訪れたコンダール州とプノンペン都の複数の投開票所では、人民党系のNGOに所属する若い選挙監視員が目立った。NECに登録した国内選挙監視員7万4885人のうち、少なくとも6万9599人(92.94%)の所属先はUYFCを含む人民党系の4団体であった(NEC 2022)9。一方、独立系の選挙監視NGOは、2017年コミューン評議会選挙時にNGO法違反を理由に活動停止命令を受けて以降、活動が停滞した。救国党解党後に欧米からの資金援助が激減したことに加えて、反政府的とみなされたことで選挙監視員が集まらなくなったためである。「カンボジア自由公正選挙委員会」(COMFREL)と「カンボジア自由公正な選挙のための中立・公平委員会」(NICFEC)の監視員の数はそれぞれ、前回2017年の1万4580人と1052人から、今回は1949人と21人へと大幅に減少した(NEC 2017; 2022)。

実際、筆者が訪れたプノンペン都内の複数の投開票所内には、投開票所委員以外は人民党の政党代理人と同党系のNGOの監視員しかいなかった。また、村長が投票を終えた後も投開票所の敷地内にとどまり、誰が投票に来たのかをチェックしてしきりに電話をかけたり、投票前の人々に話しかけたりする様子がみられた。こうした投開票所の環境が選挙結果にどのような影響を与えたのか判断は難しいが、2017年コミューン評議会選挙とは異なり、人民党が選挙過程をコントロールしていることは明白であった。

写真2 開票の様子(2022年6月5日)

写真2 開票の様子(2022年6月5日)
人民党が圧勝するもみえた変化の兆し

今回の選挙では17政党から8万6092人(うち女性2万7813人)が立候補し、1652選挙区で計1万1622議席を争った。選挙人名簿に記載された920万5681人のうち739万4427人が投票した(投票率80.32%)。2018年総選挙では救国党解党に対する抗議から無効票が8.55%に達したが、今回は2.13%とほぼ従来の水準に戻った。

表1は各党の獲得議席数を示している。主要2党をみると人民党が9376議席、キャンドルライト党が2198議席である。コミューン長ポストは人民党が1648、キャンドルライト党が4、第1副コミューン長ポストは人民党が1618、キャンドルライト党が25、その他4政党が9、第2副コミューン長ポストは人民党が261、キャンドルライト党が1360、その他7政党が31獲得した。コミューン評議会の構成は、人民党のみが257カ所(15.56%)、人民党とその他1政党による構成が1365カ所(82.63%)、人民党とその他2政党での構成が30カ所(1.82%)であった。

表1 コミューン評議会選挙の結果(2012~2022年)

表1 コミューン評議会選挙の結果(2012~2022年)

(注)網掛け部分は与党を示す。
(出所)国家選挙委員会(NEC)発表の公式結果をもとに筆者作成。

人民党の得票率は前回2017年の50.76%から74.32%へと大幅に増加し、議席とコミューン長ポストの占有率はともに過去最高となった。救国党が躍進した2017年を例外として、過去のコミューン評議会選挙における人民党の得票率は約6割であったことを考えると、同党はこれまで以上に党勢を拡大したといえる。人民党が2017年に得た約354万票は当時の党員数(約537万人)の66%に相当するが、今回獲得した約538万票は現在の党員数(約646万人)の83%にあたる。出口調査もなく年代別投票率も公表されないため推論の域を出ないが、人民党員であっても変化を求めてこれまで野党に投票してきた人々の多くが、分裂と弱体化が進む野党勢力に期待を抱けず、今回は自党に投票したと考えられる。

一方、旧救国党系5党(キャンドルライト党、クメール愛国党、カンボジア改革党、クメール意思党、カンボジア主義党)の得票率の合計は22.95%で、前回2017年の救国党の得票率43.83%からほぼ半減した。これら5党に投じられた約166万票の97%はキャンドルライト党が獲得しており、同党が旧救国党支持層の受け皿となったことがわかる。

注目すべきはキャンドルライト党の得票率(22.25%)が、2012年コミューン評議会選挙のサム・ランシー党(改称前のキャンドルライト党の名称、注5を参照)の得票率(20.84%)を上回っている点である。昨年11月に再始動したばかりで、サム・ランシーら知名度のあるかつての主要指導者を欠き、さらに候補者の逮捕、脅迫、買収が相次ぐなかでこれだけの票を得たことは特筆に値する。こうした同党の善戦は、救国党解党による独裁強化後も人民党に取り込まれない強固な野党支持層が2割以上いることと、著名なカリスマ的指導者がいない政党でも議席を獲得しうるようになったことを示している。人民党のフン・セン、フンシンペック党のノロドム・ラナリット、政党名に自らの名前を冠したサム・ランシー、人権党のクム・ソカーなど、これまでの政党の多くが党の顔となるカリスマ的指導者によって支持を獲得してきた。キャンドルライト党の善戦には、有権者が投票する際の判断基準が変化したことも影響していると考えられる。

写真3 キャンドルライト党の選挙キャンペーンでマイクを握るソン・チャイ副党首(2022年6月3日)

写真3 キャンドルライト党の選挙キャンペーンでマイクを握るソン・チャイ副党首(2022年6月3日)
次回総選挙に向けた野党再結集の足がかりとなるか?

次に、2023年総選挙の前哨戦という観点から、総選挙の選挙区となる首都・州別に選挙結果を確認したい(表2参照)。前回2017年は地方レベルの選挙で初めて人民党の得票数を野党が上回る地域が複数あったが、今回は1都・24州すべてにおいて人民党が第1党となった。人民党の得票率はポーサット州(85.26%)を筆頭に7州で8割を超えたほか、前回と比べてプノンペン都とパイルン州で30ポイント以上、バッドンボーン州とシアムリアプ州、コンポンチャーム州、プレアシハヌーク州でも25ポイント以上増えた。さらに市・郡・区レベルでみると、コンポンチャーム市で40.25ポイント、プノンペン都の14区中、都心を中心に9区で30~37ポイント、シアムリアプ市で33.93ポイント、バッドンボーン市で31.57ポイントなど、23地域で30ポイント以上の上昇がみられた。これらの大半は市街地であり、国民議会の議席定数が多い選挙区に位置している。経済成長にともない拡大した中間層の間で人民党への支持が増えたと断言することはできないが、プノンペン都やコンポンチャーム州はもはや野党への支持が強い地域とはいえない。

表2 カンボジア人民党と最大野党の首都・州別選挙結果

表2 カンボジア人民党と最大野党の首都・州別選挙結果

(出所)国家選挙委員会(NEC)発表の公式結果をもとに筆者作成。

今回の選挙結果をもとに国民議会の議席を算出すると、125議席中、人民党104議席、キャンドルライト党21議席となる10。ただし、コミューン評議会選挙と総選挙では投票パターンや投票率が異なり、救国党の解党後に行われた2018年総選挙を例外とすれば、総選挙における人民党の得票率がその前年のコミューン評議会選挙のそれを上回ったことはない。2007年コミューン評議会選挙で25.19%の票を得たサム・ランシー党が2008年総選挙で26議席を獲得したことからも、キャンドルライト党も次回総選挙でそれに近い議席を得る可能性もある。さらに同党を中心に野党勢力が再結集し、2022年11月に5年間の政治活動禁止が解かれる旧救国党幹部らが合流すれば大幅な議席増加も考えられる。

以上のように、救国党解党により独裁が強化されてから初の直接選挙となった今回の選挙は、人民党への支持拡大が全国的に顕著となる一方で、旧救国党支持層の受け皿となったキャンドルライト党が、2023年総選挙に向けて野党勢力再起の足がかりをつかむ結果となったのである。

選挙結果の意味と2023年総選挙への影響

今回の選挙結果は、独裁強化後のカンボジア政治の現在地と次回総選挙を考えるうえで、少なくとも2つの意味をもつ。ひとつは、人民党が過去最多の得票率で圧勝したことで、フン・セン首相による長男への世襲への動きが人民党中央委員会のみならず、一般党員を含む有権者からも一定の正当性を獲得したといえる点である。さっそく人民党は7月28日、首相指名と内閣不信任決議案提出に関する憲法改正案を国民議会で可決し、フン・センによる世襲をより確実にする制度構築を進めた11

フン・センは自身が2023年だけでなく2028年の総選挙でも首相候補となると表明しているが、党内や国内外の状況を見極めながら、余力を残して自身や長男にもっとも有利なタイミングで首相職を譲るものと考えられる。ただし、フン・センは首相を退任しても党首の座にとどまる可能性もある。今後の展開としては、フン・マナエトが国軍の職を辞して2023年総選挙に出馬し、国防大臣などとして入閣するか否かが注目される12

選挙結果のもうひとつの意味は、次回総選挙でも圧勝を目指す人民党にとって、キャンドルライト党が封じ込めるべき新たな対象となったことである。今回のコミューン選挙では有権者の投票行動の変化もあり、キャンドルライト党が善戦した。これに対して人民党は、不正があったとして選挙を批判したキャンドルライト党のソン・チャイ副党首を名誉毀損で提訴したり、当選したコミューン長を過去の事件を理由に警察に逮捕させたり13、選挙直後からキャンドルライト党への締め付けを強めている。

キャンドルライト党が善戦し有権者の投票行動にも変化の兆しがみえたものの、今後も野党勢力には厳しい状況が続くだろう。旧救国党のサム・ランシー前党首ら在外指導者は帰国の目途が立たず、公判中のクム・ソカー旧救国党党首は判決後の恩赦と引き換えに何らかの政治的取引を求められる可能性が高い。一方、旧救国党系5党のうちキャンドルライト党ら4党と草の根民主党は、選挙協力や合流に向けた協議を7月に開始した。しかし人民党は2013年総選挙で2大野党が合流した救国党の躍進を許した経験から、野党勢力の共闘や再結集を阻止しつつ、自らにとって脅威とならない範囲でしかその活動を許容しない可能性が高い。人民党はフン・センによる世襲の正当性と体制の強靱性を誇示するためにも、状況によっては再び野党解党も辞さず2023年総選挙での圧勝を目指すものと考えられる。

※この記事の内容および意見は執筆者個人に属し、日本貿易振興機構あるいはアジア経済研究所の公式意見を示すものではありません。
写真の出典
  • すべて筆者撮影
参考文献
  • Kanapak Pracheachon Kampuchea [カンボジア人民党] 2018. "Sechkdei Samrech Chitt  
    Nai Mahasonibat Visamanh Damnang Tutaing Prates Rabos Kanapak Pracheachon Kampuchea [カンボジア人民党全国代表者臨時大会決議]." Tassanavaddei Pracheachon [人民マガジン]. Vol. 17, No. 200, pp. 4-8.
  • Keeton-Olsen, Danielle and Mam Sampichida 2022. “Gov’t-Linked Groups Dominate Election Observer Registrations.”Voice of Democracy (VOD), 25 May.
  • Krasuong Mahaphtey [内務省] 2006. “Sechkdei Naenoam Baebbat Nitevithi Nai Kar Chrusrus Me Phoum Kar Chol Kan Damnaeng Kar Phlaspdo Me Phoum Kar Taengtang Chomnouykar Me Phoum Ning Touneati Phearkech Rabeabrabob Thveu Kargear Rabos Phoum [村長の選出、就任、交代、助役の任命の方法・手続きならびに村行政の職務、職責、方法に関する指導].” Phnom Penh: Krasuong Mahaphtey.
  • NEC(Kanak Kammathikar Cheat Reapchom Kar Bohchhnaot [国家選挙委員会])2022. Lattphal Phluv Kar Nai Kar Choh Chmmoh Neak Sangketkar Cheat Ning Antarcheat Samrap Kar Bohchhnaot Chroeusroeus Krom Pruksar Khum Sangkat Anatti Ti 5 Chhnam 2022 [2022年第5期コミューン評議会選挙のための国内および国際監視員登録の公式結果]. Phnom Penh: Kanak Kammathikar Cheat Reapchom Kar Bohchhnaot.
  • NEC 2017 Chomnuon Neak Sangketkar Cheat Cholruom Sangket Moeul Domnoeur Kar Bohchhnaot Chroeusroeus Krom Pruksar Khum Sangkat Anatti Ti 4 Chhnam 2017 [2017年第4期コミューン評議会選挙の進捗を監視する国内監視員数]. Phnom Penh: Kanak Kammathikar Cheat Reapchom Kar Bohchhnaot.
  • Norén-Nilsson, Astrid. 2021 “Youth Mobilization, Power Reproduction and Cambodia’s Authoritarian Turn.” Contemporary Southeast Asia 43 (2): 265-292.
  • 山田裕史 2021.「人民党長期支配下で台頭するカンボジア版『太子党』」『IDE スクエア』1月。
  • 山田裕史 2020.「カンボジア人民党による地方支配の構造――地方議会と地方選挙を中心に」山田紀彦編『権威主義体制下の地方議会選挙』(調査研究報告書)アジア経済研究所。
著者プロフィール

山田裕史(やまだひろし) 新潟国際情報大学国際学部准教授。博士(地域研究)。専門はカンボジア現代政治。近年の著作に、「人民党政権の対中傾斜とカンボジアの内政動向」北岡伸一編『西太平洋連合のすすめ――日本の「新しい地政学」』東洋経済新報社(2021年)、「カンボジア――シハヌークによる政治権力の独占と王政の成立」粕谷祐子編著『アジアの脱植民地化と体制変動――民主制と独裁の歴史的起源』白水社(2022年)、「カンボジア王国――人民党支配下における汚職取締と体制維持」外山文子・小山田英治編著『東南アジアにおける汚職取締の政治学』晃洋書房(2022年)など。


  1. コミューン長を補佐するポストとして、第1副コミューン長(経済・財政分野の補佐)と第2副コミューン長(行政・社会事業・公共サービス・公共秩序の補佐)が置かれ、基本的にそれぞれ選挙で第2党と第3党となった政党の候補者名簿最上位の者が就任する。
  2. ただし上院選挙の選挙権は、コミューン評議会議員(1万1622人)だけでなく国民議会議員(125人)にも付与されている。
  3. 2018年2月の上院選挙と同年7月の総選挙は、ともに人民党が全議席を独占する結果となった。複数政党が参加する選挙で単一政党が上院と国民議会の全議席を独占するのは、ロン・ノル政権下の1972年以来のことである。さらに2019年5月の首都・州および市・郡・区評議会選挙では、人民党が首都・州評議会の98.39%、市・郡・区評議会の98.00%の議席を獲得した。
  4. フン・マナエトは米国の陸軍士官学校(ウェストポイント)をカンボジア人として初めて卒業し、英国で経済学の博士号を取得した。2018年総選挙後に国軍副総司令官兼陸軍司令官に昇格して国軍を実質的に掌握すると、同年12月、人民党中央委員に選出されてからわずか3年という異例の速さで、党最高指導部にあたる党中央委員会常任委員に選出され、さらに2020年6月には党中央青年局長に任命された。
  5. キャンドルライト党の起源は、1995年にフンシンペック党から除名されたサム・ランシー前経済・財政大臣(当時)が旗揚げしたクメール国民党に求められる。党名を1998年にサム・ランシー党に、2017年9月にキャンドルライト党に改称した。現在の党名はサム・ランシー党時代のロゴマーク(灯をともしたロウソク)に由来する(写真3参照)。
  6. 2017年11月の救国党解党とともに同党幹部118人は5年間の政治活動禁止を命じられたが、2018年12月の政党法改正により、内務大臣による提案と首相による要請にもとづき国王が恩赦を付与すれば、5年を待たずに政治活動を再開できることになった。2022年2月時点で32人が恩赦によって政治的権利を回復し、新党を設立したり、他政党に移籍したりした。
  7. 2022年6月4日、キャンドルライト党本部におけるソン・チャイ副党首への筆者による聞き取り。
  8. 2022年5月22日から14日間の選挙運動の最終日、筆者はプノンペン都内でキャンドルライト党と人民党の集会や街宣活動を観察した。
  9. 内訳は、UYFCが3万9815人、人民党副党首のひとりで副首相兼議会関係・監査大臣のマエン・ソムオーンが代表を務める「平和と開発のためのカンボジア女性協会」(CWPD)が2万6102人、首相官房次長のパンカエム・ブントーンが率いる「平和を愛する青年同盟協会」(YLPL)が2624人、地方開発省長官のサーン・ヴィサルが事務局長を務める「カンボジア民主知識人・学生連盟協会」(CDSIF)が1058人である(Keeton-Olsen and Mam 2022; NEC 2022)。
  10. 同様に上院の議席を算出すると、公選による58議席中、人民党49議席、キャンドルライト党9議席となる。
  11. 憲法第119条の改正により、首相を決める実質的な権限が、国民議会両副議長の賛同を得た国民議会議長から、国民議会で最多議席を有する政党に移ることになった。また、第98条の改正により、内閣不信任案の提出に必要な国民議会議員が30人から総議員の3分の1(42人)以上に引き上げられた。フン・センのねらいは、首相を決める実質的な権限を自身が党首を務める党に付与することと、長男の首相就任後に野党が内閣不信任決議案を提出すれば世襲に反対する人民党議員が造反する可能性も否定できないため、野党による内閣不信任決議案の提出を阻むことにあると考えられる。
  12. 同時に、2023年総選挙後から2028年総選挙にかけて、フン・センの次男や三男、ソー・ケーン副首相兼内務大臣やティア・バニュ副首相兼国防大臣らの息子たちを含むカンボジア版「太子党」(人民党高級幹部の子弟)が徐々に閣僚を含む主要ポストに就く可能性が高い。つまり、フン・センによる長男への世襲だけでなく、現在の指導者集団から次世代指導者集団への権力継承が進むことが予想されるのである。カンボジア版「太子党」の詳細については拙稿(山田 2021)を参照。
  13. コンポントム州ストーン郡チョムナールー行政区でコミューン長に当選したニュム・サロムは6月21日、2002年に起きた強盗事件に関与したとして逮捕され、翌日に保釈された。