IDEスクエア

世界を見る眼

2016年台湾総統、立法委員選挙:国民党の大敗と蔡英文次期政権の展望

PDF版ダウンロードページ:http://hdl.handle.net/2344/00049535

2016年2月

台湾では1月16日に総統(大統領)と立法委員(国会議員)選挙の投票が行われ、即日開票の結果、いずれも野党民進党が圧勝した。馬英九政権の支持低迷のほか、選挙戦における国民党の混乱もあり、蔡英文民進党主席の総統選挙当選は早くから確実視されていた。しかし、立法委員選挙では与党国民党に有利かつ、著しい一票の格差が存在する歪な制度が存在する。民進党が過半数議席を獲得するとの見方もあったものの、今回ほどの圧勝は確実視されていなかった。

これは国民党側の失態が原因である。馬英九総統は外省人の反発を理由に、王金平立法院長の総統選挙出馬を阻止した。その結果、外省人で最保守派の洪秀柱立法院長が公認を得たが、その統一派よりの発言は本省人を中心とする世論の反感を買った。そのため、国民党は朱立倫党主席を新たな公認総統候補とした。しかし、洪秀柱に対する公認の剥奪や王如玄副総候補の軍人マンション転売スキャンダルは外省人支持者を国民党から離反させ、親民党や新党への投票を促した。

今回で台湾における政権交代は3度目である。民進党政権の誕生は陳水扁政権につづいて、2度目である。当時は、立法院では野党の国民党と親民党が大きな勢力をもっていた。民進党は2001年と2004年の立法委員選挙で第一党となったが、過半数に至らず、立法院の主導権を握れなかった。しかし、当初から与党が立法院の主導権を握る蔡英文政権は、陳水扁政権よりも格段に強い政権になるだろう。これまで「一つの中国」原則で妥協しなかった中国も、台湾への対応に苦慮することになるかもしれない。

本稿では今回の選挙の経緯を振り返り、こうした国民党内の「省籍矛盾」など国民党の失態の原因を明らかにする。また蔡英文次期政権の見通しについても可能な範囲で示したい。

1.選挙結果の概況
(a)民進党

野党民進党は総統選挙で蔡英文総統候補(同党主席、女性)と陳建仁副総統候補(中央研究院副院長を辞職、元衛生署長[閣僚])を擁立し、56.1%の得票率で圧勝した(表1)。前々回(2008年)の総統選挙における馬英九総統の得票率には及ばないものの、1996年の李登輝総統(当時)の得票率を上回り、歴代2位の得票率である。

立法委員選挙でも、民進党は合計68議席を獲得し、初めて立法院(国会、全113議席)の過半数を超えた。2008年選挙における国民党の81議席獲得に及ばないものの、民進党の支持基盤が弱い先住民や過疎地に重点的に議席を配分している立法委員選挙の制度的な問題1を考慮すれば、今回の結果は大勝利と言える。

民進党は陳水扁政権の与党として、2001年と2004年の立法委員選挙で第一党となったが、過半数に至らなかった。そのため、陳水扁政権は野党に国会運営の主導権を握られ、立場の弱い政権に甘んじた。しかし、5月に発足する蔡英文政権は立法院との対立を回避し、安定した政権運営への期待が高くなった。

          【表1】総統選挙の結果

【表1】総統選挙の結果

出所:「 第14任總統(副總統)選舉 候選人得票數 」中央選挙委員会『選挙資料庫網站』ウェブサイト。


(b)国民党

与党国民党は7月に洪秀柱立法院副院長(外省人、女性)を総統候補に公認したが、10月に撤回した。その代りに朱立倫新北市長(外省人)および同党主席を公認した。しかし、朱立倫総統候補と王如玄副総統候補(弁護士、元労工委員会主任委員[閣僚]、女性)のペアは31.0%の得票率にとどまり、国民党の候補としては史上最低である。立法院でも35議席の獲得にとどまり、比例代表での得票率は26.9%と最低を記録した。開票当日のうちに、朱立倫は国民党主席を辞任すると表明した。

(c)その他の政党

親民党からは宋楚瑜同党主席(外省人)が総統候補に出馬した。国民党を離党し、「民国党」を結成し、その主席に就いた徐欣瑩立法委員(女性)を副総統候補に選んだ。宋楚瑜・徐欣瑩ペアは12.8%の得票率を得た。立法委員選挙の比例代表でも3議席を獲得し、国政の舞台に踏みとどまった。また、保守派外省人の一部が支持する新党も議席を獲得できなかったものの、得票率を前回(1.4%)より大幅に伸ばした。比例代表制における親民党と新党の合計得票率は10%を超えた。これは国民党支持票の一部が流れた結果と思われる(表2)。

その一方、かつて李登輝元総統が陳水扁政権を支えるために結成させた台湾団結連盟は、得票率が5%に満たなかったため、立法委員選挙の比例代表でも議席を獲得できず、国政の舞台から消えた。

その代りに台頭したのが、「ひまわり学生運動」の関係者が結成した新党「時代力量」であった。同党は比例代表の2議席のほか、民進党と選挙協力を行った小選挙区でも3議席、合計5議席を獲得して、親民党を抜き第3党に躍り出た。

                             【表2】立法委員選挙の結果(当選者数、カッコ内は得票率)

【表2】立法委員選挙の結果(当選者数、カッコ内は得票率)

出所:「 第 09 屆 立法委員選舉 」(中央選挙委員会『選挙資料庫網站』ウェブサイト)。
注:当選者数が「-」になっているのは、候補者がいなかったことを示す。「得票率」は議席配分のために行う調整前の「第1得票率」を指す。
  小選挙区の得票率には「原住民族」枠を含む数字を記載している。


2.選挙の経緯と要因

今回の選挙は民進党の大勝利に終わったが、蔡英文候補の姿勢は2012年の前回総統選挙と大差ないものだった。今回、蔡英文候補は最大の焦点である対中国政策の政策公約を発表せず、前回選挙での敗因とされた政策の曖昧さは改善されるどころか、むしろ、より顕著であった。今回の選挙結果の主な要因は馬英九政権への不満、当初の国民党公認総統候補、洪秀柱立法院副院長による数々の失言、王如玄副総統候補の軍人マンション転売スキャンダルなど、国民党側の失態にあった。

そのおかげで、蔡英文候補はマイペースな選挙戦を展開できた。彼女は4月に民進党公認を獲得したが、選挙公約は8月以降、経済格差の是正や労働政策などから徐々に公表したものの、対中国政策については公約の発表を見送り、副総統候補の指名も11月まで先送りし、国民党に攻撃材料を与えることを極力回避した。国民党候補だったの洪秀柱は自らの対中国政策を繰り返し、蔡英文候補に論戦を迫った。しかし、蔡英文候補は「現状維持」と「台湾国内のコンセンサスを重視する」と述べるにとどまったため、論戦に至らなかった。むしろ洪秀柱の発言は「統一派より」とみなされ、世論の反発を買った。

以下、国民党の主な失態を見ていきたい。

(a)馬英九政権への不満:経済格差、中国との「統一」、強引な政治手法への懸念

馬英九政権は2008年の発足当初から馬英九総統や閣僚らが、経済政策の公約で掲げた数値目標を「ジョーク」「2期8年を通した目標」などと称し、有権者の感情を無視した姿勢が見られた。また、中国との関係改善、経済交流の拡大を通した景気浮揚を目指したが、その恩恵は広く行き渡らず、国内ではかえって就労者の賃金の低迷、不動産バブルなどに起因する経済格差への不満が高まった。2011年と2013年には馬英九総統が中国との「平和協定」に言及し、世論に統一への懸念を持たせた。特に2013年8月にはAPEC北京会議への出席とそれに合わせた習近平国家主席との会談を目指すと述べ、台湾世論は馬英九総統が自らの業績のために中国に過剰な譲歩をすることを危惧した。

そうした中で馬英九政権は中国との「両岸サービス貿易協定」を同年6月に締結し、その早期発効を望んだ。世論や識者が雇用喪失や中国資本が台湾のメディアを掌握する政治的な危険性が懸念されても、馬英九総統はこれを意に介さなかった。同年9月にはその承認手続きを渋った王金平立法院長に対して、口利きを行ったとされる通話の盗聴記録を暴露した上で、国民党党員の資格剥奪処分を下し、その失脚を画策した。2014年3月には立法院委員会で強行採決が失敗したにもかかわらず、馬英九総統は「委員会通過」を主張した。その結果、これを危惧した学生らのグループが立法院を占拠した「ひまわり学生運動」が起きた。

ただし、「ひまわり学生運動」の前にも、親中派資本によるメディア買収、徴兵された兵士の虐待死、違法な土地収用と地主の自殺に対する抗議運動が行われた他、後に反対運動が起きた第4原発建設2や中国中心史観に基づく教科書改訂3などの問題が存在していた。台湾の世論が「ひまわり学生運動」の国会(立法院)占拠を支持したのは単なる反中感情だけでなく、馬英九総統の強引な政治手法や反政府運動への対応が独裁政権の記憶と重なったからである。

その後、国民党の党勢は著しく減退した。2014年12月の統一地方選挙では5つの直轄市長選挙のうち、3つを民進党候補が制し、国民党は朱立倫新北市長(2015年1月より国民党主席を兼任)が辛勝したにとどまった。そして台北市では外省人の割合が最多であったため、国民党の連勝文候補は当初、勝利が確実視されたが、選挙戦での失敗を重ね、陳水扁前総統の友人で民進党推薦・無所属の柯文哲候補に惨敗した。この統一地方選における大敗は国民党に大きな衝撃を与えた。馬英九総統は当初渋ったが、結局、国民党主席の辞任を余儀なくされた。

(b)当初の総統候補、洪秀柱の放言と公認撤回

統一地方選での大敗を見て、国民党内では呉敦義副総統、郝龍斌前台北市長のほか、新任の朱立倫党主席も勝ち目のない総統選挙への立候補を見送った。その中で王金平立法院長だけは立法委員選挙での応援役を演じるため、総統選挙への出馬を検討した。朱立倫党主席も王金平立法院長の出馬を後押し、馬英九主席による王金平立法院長に対する党籍剥奪処分をなし崩しにした。しかし、馬英九総統はこれに反発する声明を発表した4ほか、「党が分裂する」と王金平立法院長の出馬を牽制した5。このため、王金平立法院長は5月に出馬を断念すると表明した6

そこで、党内最保守派の洪秀柱立法院副院長(外省人、女性)7が出馬を検討し始めた8。しかし、王金平支持派は党執行部に働きかけ、対立候補いない場合でも総統候補の公認には「民進党候補との一騎打ちを想定した一般有権者対象の世論調査において30%以上の支持を得る」との条件を設定させた9。この条件を満たせるのは王金平立法院長と朱立倫党主席の二人しかおらず、事実上、洪秀柱の出馬を阻止し、党の決議により王金平立法院長に出馬を要請するための措置であった。その後、洪秀柱側が「単純に候補者個人への支持を問う」方式への変更を主張した10ため、最終的には一騎打ち方式と単純方式の平均値が採用された11が、やはり彼女の公認獲得は困難だと見られていた。

           【表3】国民党党内予備選挙に関する世論調査の結果

【表3】国民党党内予備選挙に関する世論調査の結果

出所:「 民調4成6 洪秀柱跨過初選門檻 」『自由時報』2015年6月15日。


ところが、予想に反し、6月に行われた国民党の委託調査では「民進党の蔡英文候補との一騎打ち」でも洪秀柱が40%以上の支持率を得た(表3)。国民党は7月の全国党代表大会で彼女を正式に総統公認候補と決定した。国民党は調査課結果の詳細を公表しなかったため、王金平支持派からは調査結果に不信の声も上がった12。ただし、『蘋果日報』やTVBS(ケーブルテレビ)の世論調査13でも近い結果が出ており、国民党が世論調査の結果を操作した可能性は低い。

洪秀柱はこの結果を見て自信過剰に陥り、中国という枠組みを重視する保守派の主張を繰り返した。その一つが「一つの中国、(中台双方が)同じ解釈」(一中同表)である。これは中国と交渉して、中華民国政府の存在を認めさせるという趣旨である。馬英九政権の「一つの中国、それぞれが解釈」(一中各表)と異なるように見えるが、馬英九総統は「政府の方針と大差なく、(紙の)表と裏のようなものだ」と洪秀柱の発言を擁護した14。実際、馬英九総統は中国との関係を「互いの(国家)主権は承認しないが、互いの統治権は否定しない特殊な関係」と述べている。馬英九総統が「否定しない」と述べた双方政府の統治権について、洪秀柱は「承認する」と一歩だけ踏み込んだに過ぎない。とはいえ、馬英九総統と洪秀柱はいずれも、台湾と中国の関係を「国と国の関係」とする「二国論」には反対し、「我々(台湾あるいは中華民国)は主権国家である」と考える(あるいは望む)世論に迎合しない点で一致する。

問題は発言の時期である。馬英九総統の発言は国政選挙の時期を避けていた。しかし、洪秀柱は選挙戦において、蔡英文候補に対する攻撃のつもりで、対中国政策に関する議論を積極的に仕掛けた。出馬検討中の5月からこうした発言をはじめ15、公認内定後の6月末には蔡英文候補に対して「本当は台湾独立を主張したいが、今はあえて言わないだけ。総統に就任したら言いだすつもりだ。」と挑発する発言をした16。テレビやラジオにもたびたび出演し、中国に対等な立場を認めさせるのが「一中同表」の狙いだと説明した17

当初、洪秀柱への強い反発は野党や与党に批判的な市民活動家や学者に限られていた。しかし、7月初めのテレビ出演で「二国論」との違いを問われると、洪秀柱は「私は『中華民国政府』への承認を求めるだけで、『一つの中国』から逸脱しない。『中華民国』という国家への承認を求める『二国論』には反対である」と答えた18。彼女自身はこれを失言と認めなかったが、国民党執行部は世論の反発を恐れ、彼女に自粛を求めた19。そのため、彼女は以後「一中同表」への言及を控えたものの20、メディアに「発言を撤回したのか?」と追及されると「あなた達には私の言うことが永遠に理解できないからだ」と述べ21、「一中同表」が彼女の本音であることを隠さなかった。

また、6月には党執行部が選挙選中に行う慣例がある訪米を勧めたところ、洪秀柱は「蔡英文以上の待遇されないなら嫌だ」と拒絶した22。これはタイム誌が蔡英文候補の写真を表紙に飾るなど、アメリカでも蔡英文候補の当選が確実視されたことへの反発があったと思われる。アメリカとの関係は台湾にとって中国の脅威に対抗する切り札であり、それを軽視したことは彼女が親中派だという見方を強めかねない。そのため、この発言が単に蔡英文候補への嫉妬によるものだったのなら、何らかの釈明を行うべきだった。ところが、洪秀柱には張亜中台湾大学教授(「一つの中国、同じ解釈」を唱えた洪秀柱のブレーン)のほか、外交部長や同次長(次官)、大使経験者6人の元外交官を含む安保政策顧問団が付いていた23が、彼らも彼女に釈明を勧めなかった。むしろ、顧問団の一員である程建人元外交部長/元駐米代表は「アメリカは洪秀柱の両岸(対中国)政策に安心しており、改めて説明に行く必要はない」と述べて彼女を擁護した24

さらに、7月に中国中心史観に基づく教育綱領および教科書改への学生や市民団体の抗議活動が起きると、民進党は教育綱領を改訂した審議員に張亜中台湾大学教授が含まれることを挙げ、洪秀柱も同じ考えだと批判した25。彼女は「蔡英文民進党主席が学生をあおり、政争の道具にしている」と民進党を非難したが、同時に「『中華民国史観』と『台湾独立史観』の争いだ」と述べて教育綱領の改定を支持した26。さらに7月末には「私が当選したら、教育綱領は中華民国憲法に完全準拠させる」という強硬な態度を示したが27、この翌日には抗議活動メンバーの高校生が教育部に抗議する遺書を残して自殺したことで、最悪なタイミングとなった。

このほか、8月初めの台風の直撃による大規模な停電は送電網への被害が原因であったが、彼女は「(既に中止された)第4原発の稼働を排除すべきでない」と的外れなコメントをした28。また、9月には講演会において企業経営者から「国民党が過半数を占めるのに、なぜ立法院では法案を成立できないのか。企業なら業績不振のまま改革できなければ、破産する」と批判され、洪秀柱は「立法院も改革できなければ閉鎖する」と答えたと報道された29。ただし、彼女は続いて「其他部門取代?」(他の組織が取って代わるのか?)と反語調で発言しており、これはメディアの誤報であった30

このように一部に誤解があったものの、やはり洪秀柱の考えは世論の多数派と相いれないものであった。その結果、洪秀柱は宋楚瑜親民党主席にも支持率で負け、二大政党の公認総統候補としてあるまじき事態を招いた。宋楚瑜親民党主席の出馬表明は8月末であったが、洪秀柱の支持が低迷したため、早くからその可能性が囁かれた。7月初めには「蔡英文、洪秀柱、宋楚瑜の3人が出馬した場合」、蔡英文の支持率が39.6%、宋楚瑜が21.4%、洪秀柱が19.4%という世論調査結果が民進党に近い学者グループから発表された31。8月には外省人が職員に多いTVBSの世論調査でも蔡英文の支持率が38%、宋楚瑜が20%、洪秀柱17%という結果になった32

このため、保守的な外省人や北部の本省人の立法委員や地方議員からも洪秀柱への批判が噴出した。その一部は離党あるいは親民党に接近したため、除名された33。一方、元々、反洪秀柱派が多かった中南部の本省人政治家の重鎮は9月に「台湾国民党連線」という政治団体を内政部に登録し、党執行部や馬英九総統に「洪秀柱の公認を取り消さなければ、党が分裂する」と圧力をかけ始めた34。朱立倫党主席は当初、洪秀柱に副総統候補への指名を条件に、総統候補としての公認返上を内々に打診した35。しかし、洪秀柱は「朱立倫党主席が私の副総統候補になってくれれば嬉しい」とあえて公の場で発言し、この打診を拒否した36。そのうえ、洪秀柱は10月2日に「憲法は『終極統一』(最終的に統一すること)を掲げている」を述べ37、再び世論を刺激した。これに対して、朱立倫党主席は洪秀柱に面会し、「あなたの『終極統一』は誰も受け入れない」と強く批判したという38

そして、党執行部は洪秀柱の自発的な公認返上を完全に諦め、10月7日に中央常務委員会を開き、全国党代表大会の緊急召集を決定した39。この時点ですでに、馬英九総統40や「黄復興党部」(国民党の退役軍人組織)を含む外省人の幹部も「王金平立法院長でなく、朱立倫党主席が総統選挙に出馬する」という条件で洪秀柱に対する公認剥奪を了承し、中央常務委員会での提案も「黄復興党部」出身の江碩平同委員らが行った。海外華僑の間にも洪秀柱は人気があったが、海外華僑代表の多くは急の招集に「帰国」準備ができなかった。こうして17日に開かれた全国党代表大会では彼女への公認の撤回と、新たな総統候補に朱立倫党主席を指名することが決まった41。ただし、7日の中央常務委員会(党本部で開催)や17日の全国党代表大会(国父記念館で開催)の会場や党本部前では「黄復興党部」に所属する高齢の外省人が集まって、洪秀柱の公認剥奪を非難するなど党内に禍根を残した42

(c)王如玄副総統候補:人権派弁護士改め、マンション転がしの達人

国民党の新しい総統候補となった朱立倫党主席は「One Taiwan」のスローガンを掲げ、民進党の台湾中心、リベラル路線に追随を試みた。副総統候補には一般家庭の出身で、大学入試や司法試験での挫折した経験も持つ、人権派弁護士の王如玄元労工委員会主任委員を指名した。「国民党でなければ中国との関係が悪化し、アメリカを含む各国との関係にも支障が出る」と有権者に訴えた。これは馬英九政権に対して「統一派」と「大企業や特権階級の味方」という二つ批判が結びつき「大企業や金持ちによる中国進出や投資の利益を確保するために、台湾を中国に売りとばすつもりだ」との懸念が広がっていたからである。

ところが、王如玄副総統候補は公的資金の投入により格安販売された軍人向けマンション「軍宅」のうち、佐官、将官クラス向けの高級物件を多数転売して儲けていたと暴露された。軍人が「軍宅」を手放す場合、契約から引き渡しまで5年の猶予期間の設定が義務付けられる。そのため、売買は不動産会社の仲介によらず、軍関係者や直接の知人などに限られる代わり、価格も市価の相場より大幅に低い。ただし、その後に転売する場合は一般の不動産仲介の利用が可能となり、大きな利鞘が期待できる。野党は「彼女がこうした特殊な売買に参加できたのは懲罰を受けた兵士の言い分を聞く国防部の委員の身分を利用した汚職ではないか」と追及した。また、王如玄が検察官を務める夫の官舎(持ち家がないことが入居の条件)に住んでいたことも規則違反として問題視された。

この問題は「弱者の味方」という彼女のイメージを損ねただけでなく、退役軍人やその家族を中心とする外省人支持者の離反を招いた。こうした中、朱立倫党主席は退役軍人の多い保守派の集会に出席し、国民党陣営の団結を呼びかけたが、彼の退席直後に、保守派外省人の長老である郝柏村元行政院長(郝龍斌国民党副主席の父親)は「新党こそ、正当な国民党だ」と発言して国民党執行部への反発を煽り、注目された43。そして、林郁方(客家)44や李慶華(外省人)など外省人、軍人票に依存してきた国民党の立法委員は「時代力量」の新人候補に「王如玄の仲間だ」などと喧伝され、落選した。

3.国民党が失態を繰り返した背景

総統候補は党の顔であり、立法委員選挙を応援する役目もある。二大政党ではない親民党が生き残り、台湾団結連盟が国政の舞台を降りたのも、総統候補の有無が要因であった。そう考えると、二大政党である国民党は勝算がなくとも、当初から世論の支持が高い朱立倫党主席あるいは王金平立法院長を総統候補に擁立して、選挙戦を盛り上げ、接戦に持ち込む努力をするべきであった。そのこと自体は、朱立倫党主席や馬英九総統も理解していたはずである。それなのに、なぜ国民党は党内最保守派で、世論の反応への感度も低い洪秀柱立法院副院長を総統候補に公認したのだろうか。

(a)国民党の構造的問題:「黄復興党部」と外省人党員の多さ

国民党はその正式名称「中国国民党」が示すように、中国で結成され、中華民国政府の移転に伴い台湾に来た政党である。それでも独裁時代に国家と一体化し、台湾土着の本省人を取り込んできた。しかし、2000年に国民党が政権の座を失うと、本省人の離党が進んだことで、党員の総数が大きく減少した。

一方、外省人は中国への帰属意識が強く、台湾への帰属意識を強める本省人への対抗意識を持ち、国民党への忠誠心が比較的高い。本省人の李登輝総統による台湾化路線に反発して離党した新党も、国民党を否定したのは自分たちでなく、むしろ、李登輝総統だと考えている。そのため、新党を支持しながら、国民党員のままでいる保守派の外省人も多い。彼らは2000年の総統選挙後に、国民党本部に押しかけて李登輝総統の退陣を要求し、今回は洪秀柱を支持した。

こうした保守派外省人は公務員、特に軍人に多い。そのため、国民党には通常の地方支部の他に、「黄復興党部」が全県市に別系統の地方支部を設けられ、全党員の約半分にあたる軍人党員を束ねている45。「黄復興」とは中国(台湾と大陸)の統一を掲げる「炎黄(漢民族の始祖である二人の皇帝)子孫,復興中華」のスローガンにちなんでおり、中国への帰属意識がない本省籍軍人の参加は少ないと考えられる。

この「黄復興党部」が国民党内の政治に与える影響は大きい。国民党は2001年に党員の直接投票による主席選挙が導入された。初の差額選挙となった2005年の選挙では、馬英九台北市長(当時)が72.4%の得票率で圧勝し、王金平立法院長は27.6%にとどまった46。王金平立法院長の地元、旧高雄県ですら、「黄国山党部」(「黄復興党部」の高雄県支部)が党員の3割を占め、馬英九台北市長が55%の得票率であったのに対して、王金平立法院長の得票は45%にとどまった47

王金平立法院長はかつて国民党内で李登輝元総統に近い人物で、今日でも催し物などで李登輝総統と同席を避けていない。また、野党民進党との距離も近い。2013年に馬英九総統が暴露した電話の盗聴記録も、王金平立法院長が民進党の柯建銘立法院党団総召集人の求めに応じて、検察に柯建銘を被告とする刑事訴訟の継続断念を法務部長に要請したものだった。また、「ひまわり学生運動」で学生側と王金平立法院長の合意を成立させたのも柯建銘立法院党団総召集人の仲介であった。国民党や外省人の保守派からみれば、この経緯は王金平立法院長の裏切り行為に見たはずである。今回の選挙でも「黄復興党部」は王金平立法院長の総統選挙出馬や立法委員選挙の比例代表候補者名簿入り、洪秀柱に対する公認撤回などに抵抗した。このように国民党内では今も省籍矛盾が残っていることが今回の選挙では露呈した。

ちなみに朱立倫党主席は外省人であるが、本省人の母親を持ち、母方の親戚には民進党の議員が多い。国民党内の後ろ盾も義父で本省人政治家の大物、高育仁元台湾省議長である。そのため、朱立倫党主席の発言や行動は本省人に近い。馬英九総統が保守派外省人の離反の可能性を警告しても、朱立倫党主席は王金平立法院長本人ほど重く受け止めず、王金平擁立を押し通そうとした。

(b)国民党内予備選で民進党支持者が仕掛けた罠

洪秀柱が国民党の党内予備選に用いられた世論調査結果について、民進党支持者が国民党を混乱させるために、敢えて洪秀柱への支持を装ったとの見方がある48。自社の調査で同様の結果が出た『蘋果日報』も、やはり同様の可能性があることに触れている49

台湾では以前より、有権者の間に世論調査での虚偽回答を行い、支持しない政党を敗北に追い込むという高等戦術が普及していた。というのも、実は立法委員選挙が中選挙区制であった時代、各政党は自党への支持を丹念にはかり、最適な数の候補者を擁立させていた。そのうえで、国民全員に取得が義務付けられている身分証明書の番号などを用いて、支持者の票を均等に複数候補者に配分するという「配票」が行われていた。この「配票」を通じて、台湾の政党も有権者も高い政治戦術を身に着けた。

しかし、国民党だけは過剰な立候補者を中選挙区に擁立し、共倒れになることが多かった。これは、国民党やその委託を受けた調査機関には台湾語の話せない調査員が多く、その場合に民進党支持者が回答を偽ったためと言われる。台北に拠点を置くメディアも同様の傾向があり、テレビ局や新聞社による世論調査も同様であった。こうしたメディアには外省人が多く、国民党よりの姿勢が目立つ会社も少なくない。

なお、国民党、民進党とも従来から、しばしば公職選挙の党内予備選挙で世論調査結果を用いてきたが、党員による投票と併用されるケースも多い。少なくとも、今回のように民進党支持者の高等戦術の影響が顕著に表れた事例は皆無であった。そのため、国民党執行部も予備選挙のルールを決める際に、こうした調査結果の歪みについて事前には考慮しなかったと思われる。

4.今後の展望と対外関係への影響
(a)内政

総統と立法院の過半数を握ったことで、5月に発足予定の蔡英文次期政権は陳水扁政権と違い、強い民進党政権になる可能性がある。とはいえ、馬英九政権も与党が立法院の過半数を握っていたが、世論の反対が強い政策をめぐっては党内の造反に悩まされた。蔡英文次期総統は世論のコンセンサスを重視するとしているが、それだけで1期4年あるいは2期8年を乗り越えられるとは限らない。

2月1日に立法院では新任の立法委員が就任し、同日に行われた正副院長選挙で民進党の蘇嘉全元同党秘書長、元内政部長全が院長に当選した。蘇嘉全新立法院長は2012年総統選挙での副総統候補、民進党秘書長の在任のいずれも、蔡英文総統候補あるいは民進党主席に従事するなど、彼女の側近である。蔡英文候補は蘇嘉全を立法院長に就任させるため、比例代表の候補者名簿上位にいれた。当初は民進党立法院党団総召集人を長らく務めた柯建銘が新立法院長の最有力候補であった。党内最大派閥の「新潮流」は蔡其昌を立法院副院長に押したが、院長については意見が一致していなかった。蔡英文身新党主席は民進党の創設メンバーで新潮流に強い影響力を持つ陳菊高雄市長に頼み、蘇嘉全院長と蔡其昌副院長ペアを支持する形で新潮流をまとめた。このため、柯建銘は立法院長経の就任を諦め、党団総召集人を続投することになった。

蘇嘉全立法院長は蔡英文次期総統の意向に沿い、立法院における審議の透明性に尽力するとしている。しかし、蘇嘉全立法院長は1993年から1997年まで立法委員を務めたことがあるものの、20年近くも立法院を離れていた。その彼が民進党内の意見が割れた場合や、野党となる国民党との協議など、日本でいう「国会対策」の部分をどの程度透明化できるのかは未知数である。国民党は議席を大幅に減らしたとはいえ、無役となった王金平前立法院長の他、「国会対策」になれた立法委員が残っている。彼らを交えた「国会対策」に関しては柯建銘党団総召集人が主導権を握り、蘇嘉全立法院長との対立が顕在化するリスクもある。また、民進党内で多数派工作を行った陳菊高雄市長には健康不安があるとの噂も絶えず、彼女の異変があった場合、蔡英文次期総統は党内をまとめきれなくなる恐れもある。

蔡英文次期総統の公約にも潜在的なリスクがある。社会住宅の推進や年金制度の改革、幼児教育や学童保育の充実、最低賃金制度の強化などリベラル路線にそった公約を数多く掲げた。朱立倫国民党主席も選挙選において民進党側のリベラル路線に追随したものの、必要な財源の確保や経済への影響を考慮し、詳細ではややトーンダウンするなど予防線を張っていた。一方、蔡英文民進党主席は国民党の政策立案能力に対抗するため、民進党のシンクタンク「新境界基金会」を設立し、今回の公約についても政策の方針や実現可能性について検討を行わせてきた。ただし、国民党よりも高い目標を掲げたことが蔡英文新政権にとって重荷になるリスクも否定できない。

(b)対外関係

対外政策は中国側の反応など未知数の部分が大きいが、対中国政策に関する公約が発表されなかったように、蔡英文次期総統から大きな動きを見せる可能性は低い。中国は蔡英文新政権が「一つの中国」あるいは「1992年コンセンサス」を認めなければ、対話の継続を認めないとしている。その場合、中国との対話ルートの動きが停滞し、中国とのFTAを構成する「両岸サービス貿易協定」(締結済み、未発効)や「両岸物品貿易協定」(交渉中)のほか、中国主導で設立したアジアインフラ投資銀行(AIIB)への加盟申請が宙に浮く恐れがある。さらには中国が台湾と国交を持つ国を調略することや、台湾の世界保健機関(WHO)総会へのオブザーバー出席を中止させるなど強硬な対抗措置を行う可能性もある。

ただし、民進党は馬英九政権のAIIB加盟申請を拙速と批判し、中国とのFTA交渉も中止や撤回あるいは再交渉を要求してきたのであり、それらの停滞は蔡英文時期総統の痛手にはなりにくい。仮に中国が強硬な対抗措置を行えば、台湾世論の反中感情を刺激し、蔡英文次期総統への追い風になる可能性もある。むしろ、中国とのFTAには早期実施にあたる両岸経済協力枠組み協定(ECFA)が発効済みであるため、世界貿易機関(WTO)のルールに則り、FTAの内容を完成させる義務がある。そのため、中国が「一つの中国」原則を盾に交渉を拒めば、「中国はWTOルールを無視している」と批判する機会を蔡英文次期総統に与えることになる。陳水扁政権1期目に中国がアンチダンピングを発動した際にも、こうした形で中国に双方のWTO代表部による交渉を迫り、実現させたことがある。こうしたWTOを舞台にした事実上の政府間協議を中国に迫る戦術を立案したのは、国際経済法の専門家で台湾のWTO加盟交渉にもかかわった経験を持つ当時の蔡英文大陸委員会主任委員であった。蔡英文次期総統はこうした経験や知識を生かして、「一つの中国」原則を回避しつつ、中国に交渉を迫るだろう。

対外関係上の困難は中国との関係よりも、むしろ環太平洋経済連携協定(TPP)加盟に伴うアメリカとの交渉において顕在化する可能性が高い。朱立倫国民党主席がTPPと東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の両方への加盟を掲げたのとは違い、蔡英文次期総統は敢えてRCEP加盟を外し、TPP加盟のみを掲げた。その分、次期政権におけるTPP加盟という目標の重要度は増すはずである。しかし、TPP加盟に必要なアメリカなどとの交渉では、一般的な農産品の関税提言や輸入規制のほか、台湾の食品安全基準についても緩和を要求される可能性がある。

過去、台湾はアメリカ産の牛肉や豚肉について、狂牛病を引き起こすBSEや添加物ラクトパミンなどの安全性を理由に輸入規制をかけてきた。しかし、馬英九政権はTPP加盟への支持を取り付けるため、2012年にアメリカとの交渉で同国産牛肉の輸入解禁で合意した。しかし、立法院では与野党の立法委員が反発して、食品安全衛生管理法を改正して、骨付き肉などの解禁を一時中止させるなどの抵抗を見せた。アメリカとの合意の全面履行は2014年にまでずれ込んだ。現在も、アメリカ産豚肉についてはラクトパミンの使用が認められておらず、蔡英文次期政権がTPP加盟の同意を取り付けようとした場合、アメリカがラクトパミンを使用したアメリカ産豚肉の解禁を迫ることが予想される。こうしたTPP加盟と食品安全問題の間にあるジレンマは、国民党側にとって今回の選挙戦において数少ない蔡英文候補への攻撃材料でもあった。この問題が顕在化すれば、民進党内にも同様をきたす可能性がある。

なお、日本との関係について、蔡英文次期総統はアメリカと並び、重視する姿勢を見せている。台湾と中国の関係が悪化すれば、日本と台湾の間における実務関係にも悪影響が出るとの懸念も、日本の報道や識者のコメントでは言及されているが、それは経済的な側面の話である。確かに馬英九政権による中国との関係改善によって、中国による日台関係への介入圧力が和らぎ、その結果、日台間では投資や漁業、租税などに関する協定/取り決めを締結するに至った。蔡英文次期政権の下で中国との関係に変化が出れば、日台間の実務関係の深化にも影響が出る可能性は否定できない。

ただし、経済面の懸念も過大視すべきではなかろう。蔡英文次期総統は陳水扁前総統のような急進的なパフォーマンスを好む性格でなく、むしろ李登輝元総統の時代のように緊張しながらも準公式な対話が継続する可能性がある。陳水扁政権の下で関係が悪化した後ですら、中国はチャーター航空便の運行や(最終的に決裂したものの)北京オリンピック聖火リレーの台湾における実施ついての交渉に応じた。ましてECFAなど数多くの経済分野の協定が存在する今日では継続して協議すべき議題も格段に増えており、双方の関係断絶は考えにくい。

安全保障面を見ると、馬英九政権は2012年以降、日台漁業協定の締結まで日本の尖閣諸島領海に巡視船を度々侵入させた。また、フィリピンに対しても漁業紛争の際に軍艦や戦闘機を同国EEZに深く侵入させ、領海間際まで迫るなどの威嚇行為を行った。南シナ海に関しても、馬英九政権はその海域全体に対する「主権」を主張することを譲らず、「国連海洋法条約は我が国が主権を主張した後にできたもので、これを南シナ海の主権問題に遡及適用するのは法理に反する」と述べてきた。こうした立場は中国の立場と重なり、アメリカは馬英九政権に主張の根拠や趣旨の明確な説明あるいは主張の自粛を求めていた。そのため、2015年には台湾外交部が「南シナ海平和イニシアティブ」を提唱し、国連海洋法条約の順守を各国に求めた。しかし、これは台湾の南シナ海における主権の撤回は意図しないほか、馬英九総統自らが2012年に提唱した「東シナ海平和イニシアティブ」に比べると位置づけが低い。選挙後にアメリカの反対を押し切って、馬英九総統が南シナ海の太平島訪問を行ったのは、こうした本音を反映したものと思われる。

蔡英文次期総統は尖閣諸島や太平島の領有権を主張しているものの、馬英九総統のような実力行使には否定的である。南シナ海を含め、海域の紛争に対する国連海洋法条約の適用にも肯定的な姿勢を明らかにしている。昨今の緊迫する国際情勢を見ると、蔡英文次期政権の登場は安全保障面での日本の立場に寄与するはずである。

脚 注

  1. 立法委員は小選挙区制と比例代表制のほか、「山地」「平地」の「原住民族枠」(先住民枠)の選挙で選出される。県市には最低1つの小選挙区が設置されるため、人口1万人に満たない中国大陸寄りの過疎地である連江県、金門県にもそれぞれ1議席、合計2議席割り当てられる。「原住民族枠」は人口約2%にすぎない認定された先住民族に、全議席中約5%にあたる合計6議席(「山地」「平地」各3議席)が割り当てられている。この8議席分の選挙区/枠では国民党が強く、今回選挙でも6人の同党候補が当選した。 なお、「山地原住民族枠」は認定された先住民族の指定居住地の住民を、「平地原住民族枠」は指定居住地を離れた先住民族出身者を有権者とする。「台湾原住民族」のうち、「平埔族」の多くは政府から公的な認定を受けていない。そのため、「原住民族枠」では「高山族」が有権者の大半を占め、「平埔族」やその末裔は事実上排除されている。
  2. 第4原発反対運動は「ひまわり学生運動」の直後に行われた。その中心人物、林義雄(元民進党主席、現在は離党)は、独裁時代に家族を惨殺された元自宅(今は教会)で「政府が譲歩しなければ、死ぬまで続ける。私が死んだら、権力者に殺されたと思ってほしい」と宣言し、ハンガーストライキを行った。 国民党では統一地方選への悪影響が懸念されたため、馬英九総統は「お見舞い」と建設中止決定の通知の2回にわたり、当時の江宜樺行政院長を林義雄のもとに派遣した。
  3. 教育部は2014年1月に極端な親中派の審議員だけで強行した教育綱領の「微調整」を発表した。同3月には審議から外された審議員を含む反対派の学者が非難声明を出したが、その1週間後に起きた「ひまわり学生運動」の陰に隠れた。しかし、2015年9月の施行予定が迫ると、同6月に高校生らが抗議活動を組織し、7月には教育部に突入した。その際に逮捕された高校生の一人が抗議自殺したこともあり、馬英九政権は新綱領に基づく教科書の強制を諦め、旧版の教科書による教学を認めた。
  4. 團結大戲才上演 馬就撕破臉」『自由時報』2015年2月26日。
  5. 「有人會退黨」馬英九一句話 迫王金平放棄初選登記」(風傳媒ウェブサイト)2015年7月19日。
  6. 『有人不同意』王領表生變」『自由時報』2015年5月13日。
  7. 国民党内の李登輝派で、統一派政党「新党」の前身である「新国民党連線」のメンバーであった。
  8. 逼朱表態 洪秀柱嗆參選」『自由時報』2015年3月26日、
    洪秀柱:2016再不表態 就是被將一軍」2015年3月27日(自由時報ウェブサイト)。
  9. 國民黨決議:啟動防磚條款」2015年5月25日(中時電子報ウェブサイト)。
  10. 對比式民調 洪秀柱︰對我不公平」『自由時報』2015年5月29日。
  11. 對比、支持度民調各50% 國民黨、洪秀柱達共識」『自由時報』2015年6月6日。
  12. 對比式民調 未公布蔡支持率惹議」『自由時報』2015年6月15日、
    國民黨不公布民調分母 專家︰很奇怪」『自由時報』2015年6月16日。
  13. 《蘋果》民調 洪秀柱5成支持度大勝蔡英文」2015年6月1日(蘋果日報)、
    TVBS民調中心「國民黨初選後2016總統大選民調」2015年6月16日(TVBSウェブサイト)。
  14. 華視專訪》談兩岸政策 馬:洪秀柱一中同表和我一致」2015年7月2日(風傳媒ウェブサイト)、
    馬英九為洪背書:一中同表與各表互為表裡」2015年7月3日(中華電視ウェブサイト)。
  15. 『一中同表』 洪秀柱拋兩岸論述」『自由時報』2015年5月2日。
  16. 洪秀柱酸「想台獨又不敢說」 小英反擊:躁進的是國民黨」2015年6月27日(自由時報ウェブサイト)。
  17. 一中同表 洪:北京應承認中華民國存在」2015年6月22日(中央廣播電臺ウェブサイト)。
  18. 台灣名人堂 2015-07-02 總統參選人_洪秀柱」(Youtubeウェブサイト)。
  19. 洪兩岸論述一再暴衝 黨中央不耐」『自由時報』2015年7月5日、
    新聞幕後》黨勸調整兩岸主張 洪秀柱反批沒出息」『自由時報』2015年7月7日。
  20. 改口鞏固九二共識 洪辦:不再談一中同表」『自由時報』2015年7月8日。
  21. 拒談一中同表 洪秀柱怒:你們永遠沒辦法把我的話弄清楚」2015年7月11日(地涌時報ウェブサイト)。
  22. 訪美?洪秀柱嗆:規格沒比蔡高 幹嘛去」『自由時報』2015年6月19日。
  23. 重量級大咖出面「挺柱」 洪秀柱國安顧問名單曝光」2015年6月10日(風傳媒ウェブサイト)。
  24. 中央社「胡志強:洪秀柱根本沒必要訪美」2016年6月22日(聯合報ウェブサイト)。
  25. 課綱爭議洪秀柱未表態 綠委指其態度與統派學者相同」2015年6月12日(自由時報ウェブサイト)。
  26. 蔡主席,請勿在校園操弄政治、拿課綱當鬥爭的工具!」2015年7月12日(洪秀柱Facebook)、
    洪秀柱:課綱之爭是中華民國與台獨史觀之爭」2015年7月13日(自由時報ウェブサイト)。
  27. 洪:若當選 依憲法改課綱」『自由時報』2015年7月30日。
  28. 風災停電 洪:不排除重啟核四 環團:頭殼壞掉」『自由時報』2015年8月10日。
  29. 洪指立院績效不彰就關門 綠批如軍閥」『自由時報』2015年9月18日。
  30. 「立院關門說」惹議 洪秀柱:被媒體錯誤解讀」2015年9月18日(風傳媒ウェブサイト)。
  31. 決策民調中心「三強鼎立?宋楚瑜、洪秀柱、蔡英文 超級比一比民意調查」2015年7月4日(兩岸政策協會ウェブサイト)。
  32. TVBS民意調査中心「蘇迪勒風災後,2016總統大選民調」2015年8月11日(TVBSウェブサイト)。
  33. 張碩文:719之後還有13人宣佈脫離國民黨」2015年7月16日(自由時報ウェブサイト)。
  34. 本土大老串聯 組『台灣國民黨聯盟』」『自由時報』2015年9月27日。
  35. 兩度勸退洪不成 將開臨全會徵召朱立倫」2015年10月5日(中央社ウェブサイト)。
  36. 若朱立倫辭市長當副手 洪秀柱:很高興」2015年10月5日(中央社ウェブサイト)。
  37. 洪憲法終統論 王:易起糾紛」『自由時報』2015年10月3日。
  38. 朱洪會 朱立倫曾施壓:「你的終極統一,大家不接受」」2015年10月5日(自由時報ウェブサイト)。
  39. 絕口不提換柱!國民黨將召開臨全會」2015年10月7日(自由時報ウェブサイト)。
  40. 換柱推手是他!廖了以入府「感動」馬英九終同意」2015年10月6日(民報ウェブサイト)。
  41. 臨全會換柱案 馬連吳王舉手支持」『自由時報』2015年10月18日。
  42. 挺柱民眾失控 持棍砸車」2015年10月7日(蘋果日報ウェブサイト)、
    堅定「挺柱」!KMT開中常會 柱粉包圍黨部抗議」2015年10月7日(TVBSウェブサイト)、
    臨全會場外 挺柱民眾下跪抗議」2015年10月17日(中時電報ウェブサイト)、
    今「柱下朱上」 挺柱派擬衝臨全會、絕食抗議」2015年10月17日(自由時報ウェブサイト)。
  43. 郝柏村こそ特権を享受した軍幹部の頂点である参謀本部長の経験者だが、選挙敗戦後を見越し、息子の郝龍斌国民党副主席に対する支持を集めようとしたと見られる。
  44. 本省人には多数派の「閩南人(福佬)」と少数派の「客家」、「原住民族」(先住民)がいる。客家には閩南人に対抗意識を持ち、台湾独立派を「閩南ショービニズム(排外主義)」とみなす傾向があり、国民党を支持する人が多い。ただし、李登輝総統や蔡英文民進党主席など言語的に閩南人に同化した「福佬客」も少なくない。
  45. 元々は退役軍人のみが所属したが、政府機関内での政党活動が禁止されたため、現在は現役軍人の党員も編入された。正確な数字はないが、国民党員数は2013年時点で約35万人、2015年時点で30万人強と減少傾向にある。一方、「黄復興党部」所属党員は2011年時点で19万人であった。党費が免除される75歳以上の高齢者が多いため、漸減傾向にあるものの、全党員数ほどの減少ではない。
    總統初選 國民黨員35萬僅9萬多人有投票權」『自由時報』2015年4月16日、
    國民黨:總統初選具投票權黨員估逾30萬」2015年4月16日(自由時報ウェブサイト)、
    黃復興黨部-中華民國的捍衛者」(中国国民党ウェブサイト)。
  46. 竹内孝之、池上寬(共著)「2005年の台湾 泥沼化する与野党の対立」『アジア動向年報 2006』アジア経済研究所、2006年、194ページ。
  47. 黨主席之爭 王金平在故鄉高雄縣也淪陷」2005年7月17日(中國評論新聞網ウェブサイト)、
    國民黨主席選舉 王金平故鄉高縣失守」2005年7月16日(大紀元ウェブサイト)。
  48. 洪秀柱為何這麼囂張? 藍名嘴:她以為46%民調是真的」2015年7月7日(自由時報ウェブサイト)。
  49. 《蘋果》民調 洪秀柱5成支持度大勝蔡英文」2015年6月1日(蘋果日報)。