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韓国:李明博・新政権が発足――試される経済改革手腕

PDF版ダウンロードページ:http://hdl.handle.net/2344/00049599

2008年2月

「経済大統領」として経済再生を至上命題に掲げる李明博政権が、2008年2月25日に樹立した。李大統領は、昨年12月の大統領選投票日直前に可決された特別立法により、株価操作関与疑惑で当選後に訴追される可能性を残しながらも、ソウル市長時代に見せた改革断行型の行政手腕から国民の高い期待や支持を集め、圧倒的勝利で大統領選を制した。その行動力を象徴するように、李大統領は当選後すぐに「大統領職引き継ぎ委員会」を立ち上げて各分野での改革案の具体化に着手し、年明け早々には「小さい政府」の実現に向けた省庁再編法案を発表した。同法案の目玉であった統一部の解体案は、難航を極めた与野党協議の末、存続させることで妥協が図られたものの、今後の対北朝鮮政策の行方を占う試みといえる。また、特別立法にもとづく李大統領への疑惑再捜査は、就任直前に再度の「嫌疑なし」判定が特別検察官により下されたことで、新政権発足に悪影響はなかった。

李大統領の経済改革の基本路線は、規制緩和や減税による企業投資の活性化と雇用創出である。なかでも、盧武鉉・前政権下で投資意欲を減退させてきた財閥規制の大幅な緩和に注目が集まっている。例えば、財閥系企業が純資産額の40%を超えて国内企業に出資することを禁じた出資総額制限制度の廃止や、財閥など産業資本が金融機関を保有することを制限した「金産分離」原則の緩和などが検討されている。産業銀行など国策銀行の民営化推進も改革の目玉となっている。不動産分野では、不動産税制の緩和や首都圏住宅の供給拡大による不動産取引の活性化と価格安定化が模索されており、盧政権での増税・規制強化による需要抑制型の不動産政策との差別化が浮き彫りとなろう。また、国家競争力の向上に資する人材育成と私的教育費の負担減という観点から、公立学校における英語教育の強化が国民の高い関心を集めている。

李政権が迎える最初の関門は、4月9日に予定される国会議員総選挙となるであろう。李大統領の誕生を受け、与党・ハンナラ党は「与小野大」構図の逆転に向けて選挙戦を有利に展開できることは間違いない。しかし、同党は昨年の予備選で熾烈を極めた李明博・朴槿恵(元党代表)両陣営の対立を引き継ぐかたちで、党の主導権争いや総選挙の公認候補選出をめぐり内紛の火種がいまだに絶えない状況にある。新政府が打ち出す各種改革案の円滑な遂行には、今度の総選挙において国会議席数の過半数以上を占める大統領与党を確立することが必須条件となる。李大統領の改革実行力とあわせて、新政権出帆後の政界動向にも注目が集まる。