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ベトナム:注目されるホーチミン市の「地方連携」の役割

PDF版ダウンロードページ:http://hdl.handle.net/2344/00049618

2007年6月

ホーチミン市の「地方連携」の動きがおもしろい。同市は2005年の値でベトナムの国内総生産の2割超を占めるベトナム経済の中心地である。

今年5月、ホーチミン市は、北部東方地域に位置するバクカン省と、同省の投資先としての潜在性を紹介し、投資を誘致することを目的とした会合を組織した。バクカン省はノン・ドゥック・マイン・ベトナム共産党書記長の故郷であり、かつて革命の根拠地となったベトバク地区に位置する。

ベトナム紙で報道された近年におけるホーチミン市の主な類似の動きを以下に記してみたい。

2004年6月には同市と中部高原地域に位置するラムドン省間の経済・社会協力プログラム実行1年間を総括する会議が開催された。そこでは、在市企業によるラムドン省観光部門への投資、同省労働者の在市工業区・輸出加工区での受け入れ、同省ティゲー孤児・障害者養護センター区域拡充などの成果が伝えられた。同年9月には、中部北方地域に位置するトゥアティエン=フエ省と過去7年間の協力プログラムを総括するための会議を開催し、港湾関係者、コンピュータソフト専門家の訓練・育成、視覚障害者の治療等の同省に対する支援や、観光開発投資における成果が伝えられた。

2005年6月には、ホーチミン市は同じ南部東方地域に位置するビントゥアン省と経済・社会開発協力文書に調印した。ホーチミン市は同省に対する投資だけでなく、文化、社会、体育・スポーツ、科学技術といった分野における支援を行なっている。

2006年5月にはホーチミン市は中部高原地域に位置するコントゥム省と2006~2010年の経済・社会開発協力プログラムに調印した。同省は農林産品加工や森林開発、中小規模水力発電所や生態観光区建設の分野における支援を期待している。同市は10億ドンの飢餓撲滅・貧困緩和支援も行った。

他方、2006年4月のベトナム共産党第10回党大会、その後の通常国会等を経て、創設以来中部出身者が占めてきた大統領職に、ホーチミン市党委書記を務めてきたグエン・ミン・チェット氏が就任した。そして、党ナンバー2ポストの党書記局常任には中部出身のファン・ジエン氏に代わり、同じくホーチミン市党委書記経験者のチュオン・タン・サン党経済委員会委員長が就任している。

経済開発が優先される現趨勢の下、政治的側面におけるホーチミン市所縁の指導者によるリーダーシップの発揮を含め、北部・中部・南部という地域を越えた、同市による「地方連携」の役割は、ベトナムの経済開発、社会開発を牽引する上で、今後益々重要性を増すのではないかと思われる。