IDEスクエア

世界を見る眼

スリランカ:LTTE、軍の重要基地を空爆

PDF版ダウンロードページ:http://hdl.handle.net/2344/00049626

2007年4月

2007年3月26日の深夜、カトナヤケ国際空港に隣接するスリランカ空軍基地に爆音が響いた。タミル・イーラム解放の虎(LTTE)の2機の軽飛行機による爆弾投下であった。スリランカ軍の情報筋に寄れば爆弾は狙いを外れ、格納庫に命中したという。格納庫では火災が起きたものの間もなく鎮火され、ヘリコプターや爆撃機に損傷はなかった。この攻撃で空軍兵士ら3人が死亡し、15人が負傷した。基地から滑走路1本を隔てたコロンボ国際空港は、攻撃後3時間にわたって閉鎖されたが、被害はなかった。

今回の襲撃にスリランカ国軍はショックを受けている。なぜなら、正規軍以外の軍事組織に空爆を許してしまったからである。実は数年前からLTTEの空港関連施設の建設および航空機所有は明らかとなっており警戒はなされていた。直前に不審な飛行機の目撃情報があったにもかかわらず、防ぐことができなかったばかりか、いきなり空軍の中心部を襲撃されてしまったのであるから、スリランカ国軍にとって大きな失態である。スリランカではラージャパクセ大統領の発案で国民に不審な飛行機の目撃情報を求める3ケタのフリーダイヤルを開設した。また大統領は4月3、4の両日ニューデリーで開かれた南アジア地域協力連合(SAARC)首脳会議でも、LTTEの空爆問題を取り上げテロとの戦いを呼びかけた。海を隔てたインドも事態を深刻視しており、早速レーダーの設置、監視強化を打ち出した。

失態をおかした政府軍に対してLTTEは意気軒昂である。「反撃されることなく、(困難な)夜間の襲撃を成し遂げて、帰還することができた。他の軍事施設も今後標的にする」とLTTE報道官は述べている。LTTEはすぐにインターネットで飛行機7機と青いユニフォームを着た飛行部隊、笑顔のプラバカラン首領の写真を公開した。これらの飛行機チェコ製ZLIN Z-143で、分解して密輸され国内で組み立てられたたとも言われている。

スリランカでは、2002年に政府とLTTEの間で停戦合意が結ばれ、現在もこの停戦合意は有効となっているにもかかわらず、2005年の年末から戦闘が激化している。2006年末までに4000人が死亡したと言われている。戦闘の結果、LTTEは東部地域の拠点を失い、劣勢と見られていたところへの、戦力を誇示するようなLTTEの反撃である。2001年7月にもLTTEはカトナヤケ空港を襲撃している。当時は政権交代という事情もあり、停戦合意の締結に至ったが、今回はそのような偶然は望めそうにない。