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フィリピン:2006年に出国した出稼ぎ労働者が100万人を突破

PDF版ダウンロードページ:http://hdl.handle.net/2344/00049627

2007年3月

海外出稼ぎ労働者が多いことで知られているフィリピンだが、2006年に出国した労働者数が史上初めて100万人を突破し、約109万人であった。ここ数年間の推移をみると、2004年に初めて90万人を超えて93万人、2005年は98万人、そして2006年は前年比10.5%増の109万人となり急増している。国内に十分な雇用機会がないことから、少しでも収入の良い海外に職を求めた結果である。

行き先の内訳は、2006年分はまだ明らかにされていない。だが2005年は船員などの航海関係者を除いた74万人のうち、39万人(53%)が中東に行っており、特にサウジアラビアをはじめ、アラブ首長国連邦、クウェートなどが多い。オイルマネーによる活況が背景にあろう。また次に多いのがアジアで、約26万人(34%)であった。香港、台湾、日本行きが多い。こうした地域構成は、2006年もほぼ同じではないかと思われる。

海外出稼ぎ労働者の増加とともに、彼らによる送金も年々増加している。金融機関を通じた2006年の送金額は前年比19.4%増の128億ペソで、2005年に続き100億ペソを超えた。フィリピン経済への影響も大きく、GNPの1割を占める海外からの送金は消費を強く後押し、経済成長の原動力にもなっている。またその額はフィリピンが輸出で稼ぐ外貨のおよそ4分の1に匹敵し、外貨準備高への貢献も大きい。

海外出稼ぎ労働者による送金が、家族を貧困から救っているという見方がある。確かにそうした側面があることは否めない。だが近年の傾向として、高学歴者の海外出稼ぎが増加しているようである。つまりこれは、一定以上の教育を受けることができる高所得階層で海外出稼ぎ労働者が増えていることを意味する。例えば2003年の家計調査では、所得階層の上位1割強の世帯のうち、海外からの送金を主要所得源とする世帯数は20%にものぼる。

海外出稼ぎ労働者の増加に伴い、社会問題も指摘されるようになっている。頭脳流出、残された家族の崩壊、そして送金に依存する家族の労働意欲の減退などである。だが国内の雇用創出が十分でない以上、今後も海外に職を求めて出国する労働者が増え続けることに変わりはないといえるだろう。