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台湾:一勝一敗で引き分けた台北・高雄市長選挙

PDF版ダウンロードページ:http://hdl.handle.net/2344/00049632

2006年12月

12月9日(土)、台湾の行政院直轄市(省と同格)である台北・高雄両市の市長・市議会選挙が行われた。即日開票の結果、台北市長は国民党候補が、高雄市長は民進党候補が勝利し、両者引き分けとなった。

台北市長、高雄市長選挙における上位3候補の得票結果 (票数、カッコ内は得票率)

台北市 郝龍斌(国) 692,085
(53.81%)
謝長廷(民) 525,869
(40.89%)
宋楚瑜 53,281
(4.14%)
高雄市 陳菊(民) 379,417
(49.41%)
黃俊英 (国) 378,303
(49.27%)
羅志明(台) 6,599
(0.86%)

(注)国=国民党、民=民進党、台=台湾団結聯盟、宋楚瑜は親民党主席だが形式上無所属。 (出所)台北市選挙委員会、高雄市選挙委員会

今回の選挙戦はネガティブキャンペーンが主体であった。総統本人は特権で起訴を免れたが、国務機要費流用問題で総統夫人らが起訴され、民進党に不利な状況であった(詳細は「国費流用で総統夫人が起訴、陳水扁総統への辞任要求が再燃」)。その中で国民党が高雄市長選挙で敗北したことは、全体的にも事実上の敗北である。党組織発展委員会と高雄支部の主任が引責辞任した。だが、台北市長特別費の不正使用疑惑で検察の事情聴取を受け、クリーンなイメージに傷がついた馬主席こそが敗因ではなかろうか。

一方、民進党や陳水扁総統にとっては、一昨年の立法委員選挙、昨年の県市長選挙と続いた連敗が止まり、幸いな結果となった。特に謝長廷は不利な状況で善戦し、1998年台北市長選挙での陳総統 (45.91%)に次ぐ得票率を収めた。政府・与党人事が動かないことから、蘇貞昌行政院長の地位も安泰となる。2008年の総統選挙では、この二人の出馬が確実視される。今後はどちらが総統もしくは副総統候補になるのかが焦点となる。

また、今回は有権者が最も支持する候補を棄て、より強い候補に投票する「棄保効果」が強く現れた。台北市長選挙では宋楚瑜が惨敗し、政界引退を表明した。高雄市長選挙でも羅志明の得票率は1%にも満たなかった。投票者は支持する陣営の行方に危機感を持っていたと思われる。ただし、投票率は台北市で64.52%、高雄市で67.93%と期待ほど振るわず、浮動票頼みの民進党には追い風とならなかった。

いずれにせよ、政局の鍵は今選挙結果よりも、スキャンダルの行方である。陳総統は夫人の一審有罪で辞任すると述べ、馬台北市長は起訴されれば、国民党主席を辞任すると述べている。また、親民党と台湾団結聯盟は、それぞれ国民党・民進党に吸収される可能性も少なくない。