21世紀の経済発展における政府の役割とは?

2011年2月16日(水曜)
グランドプリンスホテル赤坂  五色2階 五色の間
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主催:ジェトロ・アジア経済研究所、朝日新聞社、世界銀行

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パネルディスカッション(2)
モデレーター

白石 隆 (ジェトロ・アジア経済研究所所長)

パネリスト

チェ・ウック 氏(韓国対外経済政策研究院院長)
平野 克己 (ジェトロ・アジア経済研究所地域研究センター長)
柳瀬 唯夫 氏(経済産業省大臣官房総務課長)
ベン・ファイン 氏(ロンドン大学東洋アフリカ学院教授)
谷口 和繁 氏(世界銀行駐日特別代表)

白石

どうもありがとうございます。時間が押していますので、もう一つだけ私の方からどうしても伺いたい質問があります。ファイン先生はファイナンシャライゼーションという言葉を使われていました。確かにファイナンスのロジックで資源配分がいびつになるということは容易に想像できますし、現に私が知っている事例などを考えてもそういうことは起こるだろうなと思います。同時に、ファイン先生の今日の最初のプレゼンテーションの中では、援助の役割というのは果たして民間部門を促進することなのかというクエスチョンがありましたが、私は否定的なインプリケーションでそういうクエスチョンを挙げていると受け止めています。

その一方で、特に平野さんは、開発金融というのは非常に重要なのだと。ここから先は私の考えですが、それがある意味ではかつて日本のODAなどでもそうでしたし、東アジアとアフリカでもう10年以上前ですが経済産業省(通産省)がやったスタディーを見ると、どうして東アジアとアフリカで経済成長に差が出たかというと、一つはガバナンスの問題だけれども、もう一つはODAと並んで民間投資が入っていったかどうかだという、かなり説得的なスタディーも私はあった記憶があります。

この辺は、ファイン先生は開発金融をどう考えておられますか。それから、中国政府はむしろ経済協力(エコノミック・コーオペレーション)という言葉をよく使っていると思いますが、特に中国のようなタイプの援助についてどう考えますか。

一方、谷口さん、それからチェ先生、平野さんはファイナンシャライゼーションの方はどう考えられますか。もう時間があまりございませんので手短にお願いできればと思います。では今度は谷口さんから。

谷口

ファイナンシャライゼーションというのは意味が少し分からないところもあるのですが、金融の役割ということで考えると、例えば環境問題にしろ産業問題にしろ、私はやはり金融の役割が引き続きあると。それでむしろ国家同士あるいは企業同士で環境も含めてなかなかうまくいかない問題を、金融の力でもし多少ともファシリテートできれば、それはいいことではないかと考えています。

平野

開発金融とファイナンシャライゼーションという、ファイン先生がおっしゃっているものの大きな違いは、どこで利益を取るかだと思います。これは時間の問題で、目の前で取ろうとするのがファイナンシャライゼーションで、10年後に取ろうとするのが金融なのです。つまり投資なのです。

今の経済がグローバリゼーションの出発点がビッグバンであったように、金融から始まりました。この金融が一時全くハーネスなしの状態になったことは確かです。アジア通貨危機もそうやって起こりました。こうなってくると経済学も通用しないので、最近は経済物理学というのができて、動きが全く分かりません。特に通貨や株価の動きが分からないという状態になっています。これは何らかのコントロールをはめないと、国際開発にとって私はマイナスだと思っています。ですが今谷口さんがおっしゃったとおり、金融そのものの動きは開発には不可欠なもので、そういった歴史的な観点から言えばこれはきれいにしゅん別をして考えるべきではないかと私は思っています。

チェ

金融化は批判もあります。しかしながら金融というのは非常に重要であると認識しなければなりません。危機の間には批判もありましたが、問題が起きたのは監督の欠如、関心の欠如があったからだと思います。規律がしっかりして強力ならば、そして適切な監督がなされるならば、金融化自体はむしろ経済に有益だと思います。経済がより良く発展するだろうし、金融セクターのみならず、製造部門にも有益だと考えます。

もう一つだけ付け加えてよければ申し上げたいのですが、産業構造という話をするときに、サービス産業の重要性は強調しなければならないと思います。特に韓国および日本も製造部門は強いですが、日本でさえ先進国にはサービス産業で後れを取っていますし、韓国ももっと後れを取っていると思うのです。内需を拡大するためにはサービス産業を強化しなければなりません。サービスの生産性が韓国では非常に低めです。サービス部門はGDPの60%以上を占めているのですが、サービス産業の生産性というのはアメリカの半分、フランスの70%ですし、日本の80%になっています。ですから、サービス部門の生産性を拡大することができれば、内需を刺激できると思います。サービスというのは瞬間的に消費されるので、サービス産業自体にとって重要なばかりではなく、製造部門の成長もさらに促すと考えられます。ですから韓国、日本両国ともサービス部門により多くの投資をしていかなければならないと考えます。

最も適切なやり方としては、サービス部門の規制緩和です。韓国はその上での問題を抱えています。既得権が非常に多く、既得権があるのでサービス部門での規制撤廃というのは難しいです。でも、それができれば韓国経済はまた飛躍を遂げることができると思います。それを再度強調したいと思います。

白石

ファイン先生、最後にいかがでしょうか。

ファイン

ありがとうございます。金融化についてまず申し上げたいと思います。伝統的にマルキシズムはフリードリヒ・エンゲルスから由来するもので、その考え方として、銀行はますます産業を支配するというものです。金融化を、金融セクターが産業部門を支配すると理解する人も多いのです。私にとって開発金融というのは、金融の開発ではなく金融の利用の発展であると考えます。それが重要だと思うのです。

この答えを推測できるでしょうか。とある国は、産業は銀行金融に非常に依存していて、どの国を取っても4~15倍ほど金融に依存しています。その国は中国です。これは私が説明したい金融化の例ではありません。産業の投資を非常に多くの銀行がファイナンスしているのですが、その投資は短期的に利得を獲得するというものとは違うわけです。私にとって開発金融の最も重要な側面は、ファイナンスの統制と方向です。過去30年間、金融化で金融市場を作ってきた場合どうなるかということを見てきました。

保護について一言、三つの点を申し上げます。これは前の発言から出てきたことですが、どういう政策でも貿易政策としてとらえられます。研究開発、輸送、社会、経済インフラ、これらは全部競争力を強化する方向に動くので、競争力が強化されれば輸出のパフォーマンスが上がります。ですから、貿易が不公正だと考えられます。産業政策とはあらゆる政策を合わせたものなのです。

2番目の点は、ある程度原則的には、実践でもそうですが、アメリカは最も保護主義的な傾向が強い経済です。これは農業のみならず、国内産業をいろいろな形で支援しているからだけではなく、アメリカにとって不利だということで、WTOを盛んに活用して輸入者あるいは輸出者を提訴しています。自らルールを破るのはよくないと言いつつ、非常に冷酷な形でWTOを使って自分勝手なことをしているのです。

それからもう一つの点は、それほど確かではないのですが、貿易政策、産業政策は新しい状況の中でどういうものが許されるべきかという点です。どの程度こういうものを使えるかということは新しい状況下でまだ十分に問われていないと思います。

最後に中国について2~3点申し上げます。政策について十分な知識はないのですが、中国について議論する場合、対外的な関係、競争力や輸出、そして対米の黒字が話題になるのですが、中国の発展を駆動してきたのは内需向けの成長であり、国内市場の成長を認識することが重要と申し上げます。特に中国から教訓を学ぶとすれば、国内産業を育成して、国内市場に対して供給しているということです。それから韓国、日本もそうであったように、輸出の成功はそこに付随してきます。

2番目に、中国の援助政策とその影響について、十分に知識を持っているとは言えず、私の見解は偏見もあるのかもしれませんが、中国を悪者にしてはいけないということです。中国の援助の発展は全世界的な経済にポジティブだと思っています。

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