21世紀の経済発展における政府の役割とは?

2011年2月16日(水曜)
グランドプリンスホテル赤坂  五色2階 五色の間
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主催:ジェトロ・アジア経済研究所、朝日新聞社、世界銀行

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基調講演2 「世界銀行と開発パートナー:東アジアにおける貧困削減と持続可能な成長」

ジム・アダムズ氏 世界銀行東アジア・大洋州地域担当副総裁

最近の東アジアで何が起きているかに関する見方と、私ども(世界銀行)が地域のパートナーと、開発の問題、貧困削減に対して何をしているかというお話をしたいと思います。

東アジアの地域は、過去20年でどの地域よりも急速な成長を遂げており非常に堅調なものでした。雇用も非常に伸びています。一方で、リスクも高まっていることも事実で、資本の流入が非常に増えていることと、流動性の問題、株式市場、不動産価格、その他資産評価、為替も上がっています。資産バブルという問題は慎重に見ていかなければならないでしょう。インフレの圧力も高まっています。貿易のインパクト、為替が全地域的に上がっています。非常にアグレッシブに貿易が回復しているので、政府は刺激策を取りやめ、引き締めを行っています。私の見方ではそれは正しいことだと思っています。

東アジア地域の貧困削減ですが、持続的なレベルで推移しており、国際スタンダードを当てはめても非常に良好です。最大の過去30年の貧困削減を示しているのは中国ですが、ほかの東アジアの地域も中国と同じく、1日2ドル以下で暮らす貧困層の人口が大幅に減ってきています。

特に私が日本の聴衆にとって重要だと思うのは、グリーン成長の重要性です。かなりこの地域においては注目を浴びています。地域の国々と協力して、再生可能エネルギー、排出削減、エネルギー効率の向上、生産プロセスの改善、そして廃棄物の削減といった一連の活動をしています。日本の製造業者、生産者の役割というメッセージが先ほど出ましたが、これらの領域において非常に重要だと思います。最新の技術を日本が提供するということは、この地域に非常にチャンスを提供するものだと思います。

さて、ここで東アジア地域の課題について申し上げたいと思います。

この地域は天災に対して脆弱性が非常に高い地域です。自然災害、津波、地震もありました。気候変動に関しましては、国際的な反応がまだ積極的ではありません。そして人々が忘れがちなのは、東アジア太平洋に世界でも多くの脆弱な国々が含まれているということです。また、ますます注目を浴びている問題は、東アジアの不平等の格差拡大です。

各国の課題は、地域がいかに多様であるかを示しています。中国は、成長のリバランス、西部や貧しい地域への支援、急速な都市化、社会的なセーフティネットの改善といった課題を抱えています。社会的なサービスが足りないという問題にも直面しています。

中所得諸国というのは、インドネシア、マレーシア、タイ、フィリピンなどが含まれます。またベトナムも新興の中所得国です。これらは多くの課題を抱えており、インフラの開発、ナレッジエコノミーの開発、そしてショックを抑制するという課題もあります。

最も貧しいIDAの諸国の課題は、ガバナンスの改善、投資環境の改善、健全な天然資源の管理、そして地域の成長の好機をとらえるということです。ファイン先生がアフリカでこの問題に言及されましたが、同じような問題がここで体験されています。

世銀では新しい成長戦略を手がけています。各国がどうしたら最も効果的にグローバルな環境問題に対応できるか、そして民間セクターの開発、金融セクターの開発も行っています。貧困削減に関しては、食糧安全保障が重要です。ゼーリック総裁がFinancial Timesで、食糧安全保障や食糧危機の問題にも触れています。医療、教育、社会保護というのも主要なテーマです。

聴衆のみなさまは民間セクターのインフラへの役割に関して関心を持っておられると思うので、インフラでの民間資本の導入について申し上げたいと思います。

東アジアではインフラのニーズは非常に高く、向こう10年、約5兆ドルのインフラの投資が必要です。公共予算は制約があるため民間資金を活用し、その資源を動員するという話をしています。民間資金導入のネックに対応するため、フィリピン、中国、インドネシアに関して格付けプログラムの導入を検討しています。ベトナムにおいてはパイロットプログラムなどを行っていて、官民のパートナーシップ(PPP)の資金調達の枠組みを検討しています。またインドネシアでは、インフラ保証基金があり、民間セクターの投資促進を試みています。ベトナムにおいては、ホーチミン市が民間の投資をインフラに導入することに協力しています。地域の機関と協力しながらこのようなことをしています。整合性のあるアドバイス、そして学ばれた教訓を十分に普及させることをしています。

地域的なドナーと二国間でパートナーをしており、日本もその一つです。いくつかの問題に取り組んでいますが、気候変動の問題、太平洋諸国における開発プログラム、ジェンダー問題における教育分野での取り組み、いまだにアジア地域で大きな課題となっている水の供給、衛生などのインフラ、労働市場、社会保障といった領域をはじめとする社会的な保護などに注力し、成果をあげています。

日本とのパートナーシップについて申し上げます。日本は世界でも最大の二国間ドナーです。ファイン先生は先ほど70年代最大のパートナーだとおっしゃいました。今は最大ではありませんが、40年以上日本とのパートナーシップを組んでいます。日本社会開発基金(JSDF)は、1990年代の危機後に生まれたもので、カントリーレベルでより有効にNGOと協力できる能力を世銀に加えることが重要であると考え、その手段を日本が提供しようと、過去10年で5億ドルもの支援が行われています。これは日本の開発に対するコミットメントを反映するものです。考え方としては、東アジアの金融危機がきっかけとなったわけですが、日本はグローバルな手段で各地域に提供されるものと主張しました。日本は中核的なODAピラーも支援してくださっています。これは特に貧困削減、脆弱な国、平和構築に使われています。IDA16の増資に関しても、非常に大きな額を日本はプレッジしてくださったわけですし、ニューヨークのミレニアム開発目標のサミットにおいては、医療、教育に関して大きな貢献を約束してくださいました。日本とはこれからも緊密に協力をし続けることを期待します。


最後に、具体的にわれわれが地域の間に何をしたかということについてお話ししたいと思います。

インフラ、気候変動についても日本と協力しました。特にインドネシア、ベトナムにおいては水、エネルギー、災害の管理などの作業をしており、かなりの支援を日本から得ています。インドネシアの金融危機時に、インドネシア政府は、資本市場の債権の借り入れをまかなっている資金が十分でないと懸念しましたが、アジア開銀とともに日本の支援で50億ドルのファシリティーが導入されました。フィリピンにおいてはPPP、インフラ、灌漑などの支援が行われており、資金の移転、提供においても日本との協力を考えています。ベトナムに関しては、日本が最大の二国間のドナーとなっており、都市の輸送などに資金が使われていますし、ラオスにおいては、貧困削減の政策支援、カンボジアも貧困削減の政策支援が提供されています。モンゴルにおいては都市開発を手がけていますが、モンゴルにおいては危機に見舞われたときに、銅の価格が暴落して予算をまかなうことができなかったため、アジア開銀と日本の機関とIMFが協力し、資源をモンゴルに提供することで予算をまかなうことを可能にしました。

日本と世銀との関係というのは非常に密接な相互の支援に基づいています。フォーカスとしては、われわれの支援が貧困緩和に役立てられるように、非常に密接にこれを監視しており、効果が上がることを確実なものにしています。ありがとうございました。

ジム・アダムズ氏 世界銀行東アジア・大洋州地域担当副総裁

ジム・アダムズ氏
世界銀行東アジア・大洋州地域担当副総裁

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