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21世紀の経済発展における政府の役割とは?

2011年2月16日(水曜)
グランドプリンスホテル赤坂  五色2階 五色の間
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主催:ジェトロ・アジア経済研究所、朝日新聞社、世界銀行

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報告(3)「産業構造ビジョン2010とその後の進展」

柳瀬 唯夫氏 経済産業省大臣官房総務課長

私からは、政権交代の後の経済政策の流れをご紹介したいと思います。

まず、日本の産業は一体どうなっているのかを冷静に見ようと思います。

「日本経済の行き詰まり」という点で見ますと、今の経済の行き詰まりを数字がはっきり示しております。1人当たりのGDPを見ますと、2000年には世界3位だったのが2008年に23位、IMDの国際競争力ランキングで見ても90年に1位だったのが、今や27位というグローバルなプレゼンスの大変な凋落となっています。

なぜこのように日本の産業が行き詰っているのかを三つの要因で分析しています。一つ目が産業構造全体の問題です。2000年になってからの日本全体の付加価値の伸びは、その半分近くが自動車あるいは自動車に引っ張られた部品関連作業で生み出されているということで、一国の経済の成長の半分が一つの産業に依存しています。もう一つの産業構造上の問題として、情報通信、重電、半導体科学、どれを取ってみても日本勢の企業の利益率は海外勢の利益率の半分です。主要産業を見ますと、北米もヨーロッパもアジアも1社か2社に収れんしてきています。多分アメリカは株主のプレッシャーで低成長部門、低収益部門から撤退が進んで集約化が進んだのだと思います。ヨーロッパは市場統合、マーケットの圧力でチャンピオンが生まれていきました。アジアは、特に中国・韓国はかなり政府主導で産業再編が進みました。他方、日本だけはプラザ合意や外的なショックが来たときも公共事業の拡大、超低金利といった需要サイドで対応したものですから、産業サイドはそのまま多数の企業が消耗戦を繰り返すという産業構造が残ってしまったのだと思います。

二つ目の課題として、企業のビジネスモデルの問題があるのではないかと思われます。「日本の技術は世界一」と日本人は語りますが、技術で勝ってビジネスで負けるという連戦連敗の繰り返しなのです。最初に新製品として投入したときには、世界マーケットのほぼ100%のシェアを日本製品は占めていますが、マーケットが広がっていくにしたがって急速にシェアを落としていき、大体10%ぐらいまで下がってしまいます。これを分析していきますと、例えばコンピュータでいえば、インテルは、ブラックボックスの外の部分を国際標準にして、圧倒的な市場の成長に合わせたアジア各国の生産力を使っています。ところが、日本は1980年代までに世界を席巻した垂直統合・自前主義のビジネスモデルからいつまでも抜け出せず、せっかくいい技術を導入しても瞬く間にビジネスで負けるということではないかと思います。

三つ目の要因が、「企業を取り巻くビジネスインフラの課題」です。これは外国企業にアンケートをして、驚くような結果が出ました。3年前のアンケートで、アジアでどこに一番立地の魅力がありますかと聞くと、統括拠点は日本が一番、製造拠点・工場は中国が一番魅力がある、それから研究開発拠点は日本が一番、バックオフィスは日本が2番で中国は1番という結果で、そんなものかなと思っていました。しかし今回アンケートを取って驚いたことに、日本はどれもほとんど1位にも2位にもなっていません。この2~3年の間で、アジアにおける立地競争力においてものすごく極端な低下が起きています。


では、それでどうやっていくのか。ファイン先生の先ほどの産業政策のスピーチのクライテリアを使えば、バーティカルとホリゾンタルという産業政策です。まずはそこで戦略分野を五つピックしました。一つはアジア全体で見て所得弾力性の高い産業、炭素生産性の高い分野、そして日本の少子高齢化で市場が広がっていく分野という切り口で、五つの分野を戦略分野としています。一つは原子力あるいは水・鉄道といったインフラあるいはシステムの輸出、もう一つはスマートコミュニティーや電気自動車などの環境エネルギー課題解決産業、三つ目にファッション・ゲームソフト・コンテンツといった文化産業、それから医療・介護・健康サービス、ロボット・宇宙などの先端分野の五つを取り上げています。

もう一つは、ファイン先生の言われたホリゾンタルな産業政策です。「日本のアジア拠点化総合戦略」は、要するに海外の人、資本、技術が日本に来るようにして、日本をアジアの拠点にしていこうということです。一つは海外企業、外国企業のアジア本社あるいは研究開発拠点を日本に呼び込むためのインセンティブづくりで、そこで働く人の入国管理・税金の問題です。二つ目が「国際的水準を目指した法人税改革」です。日本は国・地方合わせて法人税が40%を超えていますが、OECD諸国の平均は25%を切っています。アジア諸国も25%を切っておりまして、15%も税率に差があると、企業はなかなか日本で活動しようと思いません。三つ目が「収益力を高める産業再編」です。日本の場合は官が主導する、あるいは昔のようにメインバンクが主導することが効率的とも、うまくいくとも思いません。産業界がグローバルな産業再編をしようとするときに、邪魔にならないようにしていく。例えば労働の移動の円滑化や競争政策で、できるだけ不透明あるいは過剰な規制が阻害要因にならないようにということをしています。四つ目に、「付加価値獲得に資する国際戦略」ということで、国際標準化をどうするか、あるいは通商戦略をどうするか。

それでは、結局それで何を実現したいのかということです。「産業構造ビジョンで実現したいこと」、これは政府、民間といわず国を挙げて産業のグローバル化時代の競争力強化に乗り出すということです。そのためにはまず日本産業の「行き詰まり」をきちんと直視する、1990年ごろまでの「成功の神話」、遅れたビジネスモデルから脱却していくということで、四つの転換を提言しています。

一つは「産業構造の転換」です。自動車依存の一本足から戦略5分野へ。それから付加価値の獲得の源泉を、高品質・単品売りからシステム売り・文化付加価値へ。そして今までの成長制約要因であった環境エネルギー、少子高齢化に対して、むしろこの課題解決する産業で利益を取っていく。

それから二つ目が「企業のビジネスモデルの転換の支援」です。垂直統合・自前主義からモジュール化のモデルに切り替えていきます。それは、ブラックボックスとオープン国際標準の戦略的な組み合わせということです。

それから、日本の政治がいつも陥るパラドックスとして、グローバル化を進めるのか、国内雇用を守るのかの二者択一の議論があります。しかし日本はやはり人口が減っていきますので、国内市場が伸びるというのはマクロでは考えられません。他方、グローバル市場、特にアジアの市場は伸びていくので、グローバル化を進めない限り、日本の経済がジリ貧なのは明らかです。しかしながら、国内が弱いまま、あるいは国内に立地の魅力がないままでグローバル化をすれば、単に企業が海外に出ていき、雇用、利益の源泉、イノベーションの源泉が単純に海外に出ていくだけで、海外に移れない日本国民だけが不利になります。ですから、グローバル化をするだけではなく国内を魅力あるものにしなければいけない、国内立地の競争力強化をしなければいけないということです。

最後に、政府の役割を変えていかなければいけません。1980年代までの日本は、言ってみれば政府主導で、資源配分、個別産業保護、「護送船団方式」、各省縦割りで、これが機能していた時代は良かったのですが、高度成長が終わり、かえって弊害になっていきました。1990年代以降、特に2000年以降は逆に、市場機能至上主義で国の役割を全面的に否定する、何もしないのが一番いいのだという議論がかなり強く出てきました。そんなことをしている間に世界は全く違うところにいっていました。

世界の競争のゲームが変化したということで、一つは資本のグローバル化が進んで、企業が国を選ぶ時代になりました。ヨーロッパで市場統合が起きたのが、海に囲まれた日本でも随分遅れてこの2~3年に起き始めています。もっと大きいのは、国家資本主義、社会主義的市場経済国が台頭してきたということです。今までの中国であれば安い賃金、工場という位置付けだったのが、マーケットという位置付けになり、今やコンペティターになっていくという現実があります。

それからどの国においても、環境エネルギーや高齢化といった社会課題の解決時代が成長の中心になっています。当然こういう外部経済・不経済が大きく働く分野では、政府の政策が産業の発展に直結します。

その結果、市場機能を最大限活用した新たな官民連携の構築が必要です。戦略的な政・官・民の連携(トップ外交、コンソーシアム形成)です。今までアメリカ・フランスなどは激しくやっていますが、日本はトランジスター外交以来全くこういうのをやらなくなっていた珍しい国だと思いますが、そこはやはりグローバルスタンダードに持っていく必要があります。それからJBIC、NEXIIによる支援の強化、それから研究開発拠点も1社だけではなかなか性能評価拠点などは作れない時代ですので、ここはコンソーシアムを作り、国も支援することが必要ではないかと。

こういうようなことを産業構造ビジョンでまとめ、今、これの具体的な施策を成長戦略として個別の予算、税制、法律を今の国会に出しているということです。

柳瀬 唯夫 氏(経済産業省大臣官房総務課長)

柳瀬 唯夫氏 経済産業省大臣官房総務課長

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