イベント・セミナー情報
開催報告
対話型ワークショップ「アフリカ塾2025」
ジェトロ・アジア経済研究所は、2025年12月6日に、対話型ワークショップ「アフリカ塾2025」を開催しました。
対話型ワークショップ「アフリカ塾」は、ユース世代が多様な社会、歴史、文化をもつアフリカの社会課題や可能性を主体的に学ぶ機会として、アフリカに関心を持つ若者団体と協働して開催してきたものです。今回で4回目の対話型ワークショップとなった「アフリカ塾2025」は、アジア経済研究所が主催となり、ユース団体である「持続可能な社会に向けたジャパンユースプラットフォーム(JYPS)」と「MPJ Youth」、および岩井雪乃氏(早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター准教授)が共同で企画・運営を行いました。
今回の「アフリカ塾2025」では、「あなたの『ストーリー』、更新しませんか?」をキャッチコピーとして掲げました。そこには、2025年8月に横浜で開催された第9回アフリカ開発会議(TICAD9)において、国内でアフリカに対する関心が高まった一方で「アフリカを一括りにせず、国や地域ごとの多様性に目を向けてほしい」というアフリカ側からの声が示された状況を踏まえ、日本におけるアフリカ理解を改めて問い直す必要があるとの問題意識を込めました。
「アフリカ塾2025」のプログラムは、プレナリーセッション、ディスカッションセッション、ラップアップセッションの3部構成としました。プレナリーセッションおよびラップアップセッションには全員が参加し、ディスカッションセッションでは参加者が3つの分科会に分かれ、ユース団体のメンバーを含む「アフリカ塾」プロジェクトメンバーが選定した「社会」「資源」「カルチャー」の3つのテーマに沿って議論を深めました。これらはいずれも、アフリカの多様性や現状を理解する上で重要な視点となるトピックです。
また、当日、会場ロビーでは、写真展「研究者がみつめるアフリカ」を同時開催しました。
ワークショップの概要
開催日時:2025年12月6日(土曜)14時00分~17時00分
会場:早稲田大学早稲田キャンパス3号館
主催:ジェトロ・アジア経済研究所
協力:持続可能な社会に向けたジャパンユースプラットフォーム(JYPS)、MPJ Youth
プログラム
| 時間 | プログラム |
|---|---|
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13:15 |
受付開始 |
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14:00~14:05 |
趣旨説明 |
| プレナリーセッション | |
| 14:05~14:50 |
ユース団体活動紹介 基調講演 「TICAD9と日本・アフリカ関係の未来―包摂的な開発をめざして」
分科会の講師紹介 |
| 14:50~15:00 |
休憩・移動 ※各分科会に分かれて、それぞれに設定されたテーマに関する講演を聞き、グループディスカッションを行います。 |
| ディスカッションセッション | |
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15:00~16:30 |
コメンテーター:高橋基樹氏(京都大学) 分科会A <社会:アブディンさんと考える、ともに生きるということ> 本分科会では、19歳のときにスーダンから来日し、研究、著述業、NPO活動などマルチに活躍する視覚障害者のアブディン モハメド氏を講師に迎え、参加者との直接対話を通じて、さまざまな属性をもつ人々がともに生きられる社会のあり方について考えます。 講師 アブディン モハメド氏(NPO法人スーダン障害者教育支援の会 代表理事/東洋大学国際共生社会研究センター 客員研究員)
分科会B <資源:コンゴの紛争と鉱物資源> コンゴ民主共和国では長く紛争が続いていますが、同国の豊かな鉱物資源が長期化の原因と考えられています。鉱物はスマホなどの電子機器に利用されるもので、私たちの生活に欠かせません。コンゴの紛争を解決するために私たちができることは何か、議論を通じて考えます。 講師 華井和代氏(NPO法人RITA-Congo 代表理事/東京大学未来ビジョン研究センター 特任講師)
分科会C <カルチャー:ソフトパワーとして見るアフリカ文化> ジンバブエを代表する民族楽器ムビラ(親指ピアノ)を研究対象とする政治人類学者を講師に迎え、「カルチャー」という一見ソフトなものを、「植民地の記憶」・「ローカルな結束」・「グローバルな市場」というアカデミックな切り口でハードに語り合います。 講師 松平勇二氏(ノートルダム清心女子大学国際文化学部 准教授) |
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16:30~16:40 |
移動・ラップアップの準備 ※プレナリー会場に戻り、各分科会での議論を取りまとめます。 |
| ラップアップセッション | |
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16:40~17:00 |
各分科会からの報告・議論の共有 |
プレナリーセッション
ユース団体紹介
本ワークショップの企画、運営に参加している持続可能な社会に向けたジャパンユースプラットフォーム(JYPS)とMPJ Youthが、活動内容について発表しました。
左から、持続可能な社会に向けたジャパンユースプラットフォーム(JYPS)、MPJ Youthによる活動報告 ©IDE-JETRO
基調講演
研究者として開発政策にも関わっておられる高橋基樹さんに、これからのアフリカと日本の関係づくりについて講演をしていただきました。高橋さんは、今後ますます人口が減少する日本は、小さくとも他国の痛みに手を差し伸べられる、心豊かな国を目指すべきだと話されました。アフリカでは世界でも最も多くの子供が生まれながらも、医療や教育面から十分な成長を達成できていない現状があります。日本は、そうした人々の成長を支えて将来のリーダーの登場を助けるような関係を構築することが望ましいのではないかと参加者に呼びかけました。
ディスカッションセッション
分科会A <社会:アブディンさんと考える、ともに生きるということ>
本分科会は、さまざまな属性をもつ人々がともに生きられる社会のあり方について考えることを目的として企画されました。講師として、19歳のときにスーダンから来日し、研究、著述業、NPO活動などマルチに活躍する視覚障害者のアブディン モハメドさんをお招きし、「ともに生きる社会をめざして:アフリカと日本から考える―視覚障害を経験した私のストーリーから」と題する講演をしていただきました。アブディンさんは、視覚障害を持つ子どもとしてスーダンの小学校や社会で過ごした後、日本に留学し、大学院で学び、生活した経験をもとに、障害者から見たアフリカと日本の社会の違いについてお話しされました。アフリカでは社会福祉制度は弱いが、人のつながりが強く、障害者が自然に社会に内包されているのに対し、日本は制度は整っているが、公共の場に障害者が少なく、健常者と障害者の間に見えない分断があるとのことです。そして、無意識のバイアスが「ともに生きられる社会」を実現するための最大の壁であると述べられました。
講演の後、参加者は3つのグループに分かれ、 ディスカッションが行われました。ディスカッションは企画メンバーが用意したディスカッション・トピックに沿って進められ、参加者が身近なマイノリティ経験を共有した後、配慮と特別扱いの境界線について意見を交わしました。その後、マイノリティのなかで、外国人とその他の集団(女性、障害者等)では何が違うのか、そして、ともに生きる社会の当事者として私たちに何ができるかを話し合いました。異なる属性を持つ参加者が、自身のマイノリティ経験や障害者と接した経験について率直に話し、他の参加者の経験や意見に熱心に耳を傾ける姿が見られました。
ディスカッションには、講師のアブディンさんも3つのグループに順番に参加しました。本分科会は参加者に、アブディンさんと、また参加者同士での対話を通じて、アフリカの社会について理解を深め、アフリカと比較しながら日本の社会について自由に話し合う場を提供しました。
グループディスカッションの様子 ©IDE-JETRO
分科会B <資源:コンゴの紛争と鉱物資源>
コンゴ民主共和国で長く続く紛争の原因の一つとして、同国に存在する豊かな鉱物資源が武装勢力の資金源となっていることが挙げられます。しかし、鉱物はスマホなどの電子機器に利用されるもので、私たちの生活に欠かせません。分科会では、コンゴの鉱物取引に関する研究と啓発を行っておられる華井和代さんに、紛争と鉱山の状況、鉱物資源の取引に関する国際的な取り組みについて、説明をしてもらいました。先進国では紛争地域から産出された鉱物の取引を規制する仕組みを作っていますが、十分に機能しておらず、紛争件数は減っていないということでした。
華井和代さんの発表スライドから抜粋 ©華井和代
ダイヤモンド・ランキングの選択肢 ©華井和代
分科会C <カルチャー:ソフトパワーとして見るアフリカ文化>
本分科会では、政治学者 ジョセフ・ナイ(Joseph S. Nye Jr.) が提唱した概念「ソフトパワー」を鍵に、アフリカ文化を見ることをテーマとして設定しました。文化が「ソフトパワー」とされるのは、他国の人々の好意・信頼・親近感を形成し、外交や経済関係を円滑にするという政治的効果を持つからです。講師には、政治人類学者でジンバブエの代表的な民族楽器ムビラの研究をする松平勇二さんを講師に迎えました。分科会の冒頭は、講師のムビラ演奏による幻想的なデモンストレーションから始まり、演奏に魅了される参加者は説明抜きに「ソフトパワー」を体感したと言えるでしょう。
冒頭では、講師によるムビラの生演奏の中、参加者が迎え入れられました ©IDE-JETRO
グループディスカッションの様子 ©IDE-JETRO
ラップアップセッション
講師、「アフリカ塾」企画メンバー、参加者らの集合写真 ©IDE-JETRO
写真展「研究者がみつめるアフリカ」
写真展の様子 ©IDE-JETRO
まとめ:参加者の声から
「アフリカ塾2025」の開催後、参加者からは、以下のような感想が寄せられました。
- アフリカを一括りにせず、一国一国について理解することの重要性を認識した。
- 断片的で偏りのある情報ばかりが目につく中で、本当のアフリカはどのような地域なのか、ニュースで手に入る情報は公正なのか、より深くアフリカについて考える機会となった。
- アフリカの文化を日本と文化と比較することで返って自分たち日本について考え直すことができ、アフリカ文化から更に学べることがあった。
- アフリカに関する自分の知見、見方をさまざまな人たちとの交流の中で確立できた。
- 資源問題と一言で言っても政府の腐敗や民族問題などが絡み合っていることを知り、問題の難しさを感じた。
「アフリカ塾2025」は、多くのイベント参加者にとって、アフリカへの理解を更新する貴重な学びの時間となりました。初学者にとっても、対話に参加しやすいテーマ設定となっており、多くの参加者が双方向型で議論を深めることができました。
日本で暮らす私たちが、アフリカの実像に触れる機会は決して多くなく、限られた情報のままイメージが固定化されることもあります。情報が瞬時に伝わる時代だからこそ、こうして、事実に基づいて考え、対話をする機会がますます重要になっています。ジェトロ・アジア経済研究所は、今後も、より多くの人がアフリカの実像とその多様性に触れ、理解を深めることのできる場を提供していきます。
お問い合わせ先
ジェトロ・アジア経済研究所 研究事業開発課
Tel: 043-299-9667
E-mail: R_promo2