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CSRレポート(Corporate Social Responsibility)

5. ケーススタディ

アングロゴールド・アシャンティ社

予算:
2006年の世界支出、77憶4800万ランド
2006年の南アフリカ内支出、225憶8100万ランド

重点分野:

  • 教育 46%
  • HIV / エイズ 19%
  • 福祉、開発 13%
  • 能力開発、雇用創出 10%
  • 一次医療 7%
  • 地域委員会 4%
  • 芸術文化 1%

地理的範囲:
事業地、従業員出身地域、過去の活動地域

主要プロジェクト:

  • Abalimi Phambili
    イースタン・ケープ州の地元農家を商業農家、開発機関、農務省、その他組織と結び、大きな市場へのアクセスを提供して技能を高め雇用機会を増大させる。
  • TB Alliance Associationプロジェクト
    プライマリーヘルスケア要員が結核患者の自宅を訪れ、投薬指示が守られているかどうかを確認することで、回復率を高める。

アングロゴールド・アシャンティは事業を行っている国の人々、文化、地域社会に良い影響を与えることをめざして、すべての利害関係者との交流の基礎として、6つの事業方針を定めている。

このアプローチの中心には、事業を通じて地域社会の暮らし向きをよくするというコミットメントがあり、CSIへの取り組みはそのコミットメントに基づいている。

アングロゴールド・アシャンティは、11ヵ国で事業を行うグローバル企業としてCSIに真剣に取り組むことの重要性を認識している。そのため、各国でのCSI活動の指針となるグローバルCSI戦略を最終調整中である。この方針をみれば、近年同社が主体的に関与できるプロジェクトを積極的に識別しようとしていることがわかる。補助金を供与し財政を支援する立場から、プロジェクトを現地で開始する立場に移行することができるのである。

アングロゴールド・アシャンティは立ち上げたプロジェクトのオーナーシップを求めてはいるが、社会開発のすべての分野で専門的知識をもっているわけではないことを認め、NPO、自治体、地域グループとの連携を歓迎している。事業を行う多くの地域は、社会経済指標が低く、インフラの整備が遅れ、大規模なNPOの守備範囲には通常入っていない。そのため同社は積極的に、こういったNPOをプロジェクトに勧誘している。

企業間提携も、同社が大きな価値を見出している分野である。このような提携によって取り組みの重複を減らすだけではなく、プロジェクトの影響と効果を高めることになる。アングロゴールド・アシャンティは、現在は少ないものの、将来さらに企業間提携を進めようとしている。

同社は最大の社会開発ニーズがどこにあるかを見極めるために、地域社会のリーダー、自治体、現場の開発計画委員会、学校などと連携し、総合的に地域社会に関与する政策をとっている。

また、政府が指定した社会開発規範に最新の注意を払っている。様々な国々や文化で自治体のニーズは大きく異なるため、国際CSI方針には、個々の地域社会のニーズにあうように現地の解釈を入れる必要があることを認識している。

例えば南アフリカでは、国の最緊急課題に焦点を当てている。教育、HIV / エイズ、技能訓練、福祉、開発プロジェクト等である。

多くの場合、アングロゴールド・アシャンティが事業を行う地域社会では、雇用とインフラ整備を同社のみに依存している。その地域社会を向上させるという約束を果たそうとするならば、地域社会の全ての分野で能力を構築することが不可欠である。こういった総合地域社会開発の理念により、CSIの重点分野は明確であると思われても、実際には同社のプロジェクトが多くの分野に同時に取り組んでいることもある。

教育は、地域社会全体に将来に渡って恩恵をもたらす鍵となる。そのため、教育は同社のCSIの最重点分野となっており、CSI経費の46%を占めている。ヨハネスブルクの東、エルゴでの事業閉鎖が近隣の黒人居住区に与える影響を勘案してアングロゴールド・アシャンティは、14の中学校で数学と科学、20の小学校で読み書きの教育技能を向上させる3ヵ年プロジェクトに着手した。この取り組みは地域社会で大きな成功を収めたため、バール川や西ウィッツ地域の事業にも取り入れられている。

同社は、上記2鉱区の長期持続可能性に取り組むプロジェクトにも着手している。黒人居住区の地位獲得の手助けをすることにより、採掘作業終了後、当該居住区の管理運営を地元自治体に譲渡する道を開いている。

これにより、これら地域社会には多くの恩恵がもたらされることになる。さまざまな資産が利用できるようになり、それを地方自治体の社会、インフラ、保健、経済、住宅開発計画に組み込めるようになる。

地域の人々が、診療所、図書館、年金支給所といった社会サービスを利用できるようにする一方、地方自治体の要件に従って、大量の給水、下水、雨水、ごみ処理事業を行っている。

これらのほかにもアングロゴールド・アシャンティの多くのプロジェクトは、事業を行う地域社会の持続可能性を追求するのが特徴である。技能、能力、インフラの提供により、人々に将来自力で生きていくための力を与えることによってのみ、事業を始めたときよりも人々の生活を向上させたと、真に主張することができるのである。

タイガー・ブランズ

予算:
非公開

重点分野:
かつて差別されていたコミュニティーにおける飢餓の解消とヘルスケアの改善。そのための食料供給とインフラの開発。

主要プロジェクト:

  • アフリカの子供への食糧供給計画
    孤児や恵まれない子供への食糧援助、母親や祖母の収入源確保のための運動
  • ハートビート
    7つの州の孤児や恵まれない子供への食糧援助
  • Unite 4 Health Operating Theatre
    赤十字子供病院に施設を建設し、手術件数を25%増加させるための寄付
  • ソウェト・ホスピス
    末期患者のためのより良い在宅介護を提供するための寄付
  • ハート・オブ・ソウェト
    心臓血管疾患研究への寄付

CSI パートナーシップ:
タイガー・ブランズは、政府、NPO、企業、地域社会、有名人、宗教団体、消費者と提携している。

CSI 実績:
南アフリカの恵まれない人々やHIV/エイズに冒された人々への食糧供給により、ホープ・インターナショナルから表彰を受けた。

タイガー・ブランズは、様々な困難に直面する国で、食糧品、医薬品の製造というコア事業に沿ったCSIの取り組みを通して、全ての南アフリカ人の生活に価値を与えようとしている。

特に、同社は国中の恵まれない人々にとっての2つの緊急課題、つまり適切な栄養の摂取と十分な医療サービス提供に取り組むことを目標としている。国民が空腹であったり病気をしていては国が栄えることはないという強い信念のもと、同社は、2つの強力なCSIプロジェクトUnite Against Hunger と Unite 4 Health を立ち上げ、人間生活の最低必要条件が確保されるよう努力している。

このような2つの難題に持続可能な解決策を見出すためには、多くの利害関係者グループの専門知識が必要である。自社だけでは手に負えないため、貧困撲滅及び健康推進プロジェクトの双方で、政府、NPO、宗教団体、地域団体、消費者と提携している。

また、それぞれの企業が地域社会とともに取り組み、従業員が時間と知識を提供してCSIに取り組む素地を整えることを奨励している。このように全体で責任を分かち合う企業文化は、タイガー・ブランズのCSIの推進力となっている。貧しい人々に目に見える違いをもたらすために、関係者との協力関係を強化することもその一例である。

また同社は、取り組むプロジェクトが持続可能であることを重視する。福祉ではなく開発のアプローチを取り、受益者が長期的に持続可能な能力を高められるよう共に取り組む。この精神は、多くの主要プロジェクトに反映されている。

飢餓は貧困がもたらす最悪の事態であり、子供、老人、病人といった社会の最弱者に襲いかかる。飢餓撲滅には、長期的な食糧の安全保障を提供し、いずれは自力で食糧を確保できるようにすることが必要であるが、短期的な問題があれば、緊急の解決策を要する場合もある。Unite Against Hungerを通じ、タイガー・ブランズは、African Children’s Feeding Scheme (ACFS) や ハートビート 等の受益者に対し、長期・緊急両面での飢餓軽減に焦点を当てている。

ACFSは、主に毎日18,000人の孤児、栄養不良児、恵まれない子供達と、毎月1,000世帯に食糧を提供することに注力している。また、食糧を提供する子供達の母親と祖母のために、13の裁縫クラブのある裁縫プロジェクトの立ち上げを手助けした。

これにより、女性が持続可能な収入の流れを得て、家族を養える道を開くこととなった。その年、タイガー・ブランズKOOとアルバニー・ブランズは裁縫プロジェクトで製作したエプロンを発注した。また、政府入札に申込み、多くの販売促進品に注文を受けた。

ハートビートは、孤児、子供が世帯主の家庭、また末期患者を親にもち孤児になる可能性のある弱い立場の子供達の世話にも焦点を当てている。このような子供達にのしかかる重責は莫大であり、ハートビートは、子供達が学業を終えて少しでも子供らしい生活を楽しめるように取り組んでいる。

同社は、地域に密着し、孤児の世話に関する最良慣行をまとめたが、これに従うように7州の14の地域社会を動かした。5,000人近くの子供達が、ハートビートとタイガー・ブランズの提携を通して毎月食糧を受け取っている。

Unite Against Hungerの成功に続き、タイガー・ブランズの医薬品企業アドコック・イングラムは、南アフリカの恵まれない人々の医療を改善する取り組みを支援するために、Unite 4 Healthを立ち上げた。

タイガー・ブランズは、Unite Against Hungerと同様に、長期に渡り受益者に資するインフラの開発のため資金を提供し、Unite 4 Healthプロジェクトの持続可能性を保証することをめざしている。

このような寄付のうちケープタウンの赤十字子供病院への400万ランドの寄付は、この病院(アフリカ大陸で唯一の子供専門病院)がさらに年間25%多くの子供に手術ができるように、新しい近代的な手術室棟を建設するために費やされる。

ソウェト・ホスピスも、Unite 4 Healthが女性病棟に資金提供することにより、約450名を一度に看護できる専門看護師とボランティアの大きなチームを支援して、切望されていた在宅介護を患者に提供する体制を整えた。

ピアモント・ホテル・カジノ・アンド・リゾート

予算:
年間2200万ランド

重点分野:
教育、能力開発

地理的範囲:
ピアモントは、国内事業周辺の地域社会に対するCSIを中心に活動している。

CSI 実績:
イーストランド・ユース・トラストは、Ekurhuleni地域の70人以上の生徒に高等教育奨学金を提供した。奨学金給付者は90%の合格率を誇っている。

イースト・ランド・チルドレンズ・トラストは、教育プロジェクトに950万ランド以上寄付することにより、20万人以上の子供達の人生に影響を与えた。総額は、2006年だけで400万ランド近くに達している。

今日まで200人以上の若者がLesedi産業技術プロジェクトから恩恵を受けている。

ピアモントのコア事業はホテル、賭博、コンベンション・リゾートの設計・運営・所有である。事業は営利目的だけではなく、周辺地域社会の社会・教育・心理的要請にこたえる社会意識の高い企業として活動を行うとしている。

地域社会と企業は互いに福祉面で支え合っていることを認識し、営業する全ての分野で恵まれない人々の支援に取り組んでいる。企業のCSIプロジェクトは多岐にわたる。子供や若者への教育や地域社会支援プロジェクトに、とくに力を入れている。

ピアモントは国全体の教育施設・資源を向上させることに大きな必要性を感じているが、とくに貧しい集落が中心である。多くのカジノリゾートはそのような地域で営業し、地元の学校の教育向上に貢献している。

2006年にカジノリゾートのひとつTusk Umfoloziは、Siyakhanyisa小学校と自閉症児のためのThuthukani専門学校を支援し、Tusk Vendaは地元の学校に8台のデスクトップ・コンピュータを寄贈した。

ハウテン州では、Thuthuka Gauteng Supplementary Education Initiative がピアモントの主要な教育プロジェクトの1つとなっている。学校全体の開発プログラムであり、南アフリカ公認会計士協会が運営し、ピアモントのエンペラーズ・パレス・ホテル、カジノ・アンド・コンベンション・リゾートが資金提供している。このプログラムは恵まれない子供たちが進学のため、あるいは会計職につくために必要な、計算、読み書き、会計技術を確実に身につけさせることを目的としている。

経済的な制約は黒人児童が高等教育に進めない最大の障壁のひとつである。学費を支払えたとしても、生活費や教科書代、教材費が支払えないことが多い。ピアモントは、将来性のある貧しい学生に様々な総合奨学金を提供している。

グループ最大の部門であるエンペラーズ・パレスは、毎年500万ランドをイースト・ランド・ユース・トラストが運営する奨学金に投入している。この奨学金は、すべての学費、宿泊費、手当、教科書代を賄っている。また、現代の職場で成功するために必要な心の知性や技能を身につけ、若者の権利を拡大するための集中指導プログラムも含まれている。

極貧地域の子供たちはもっとも脆弱な社会の一員である。ピアモント・チルドレンズ・トラストはとくに、恵まれない地域社会のこのような子供たちの社会・教育・精神面の向上をめざしている。

また、セント・ビンセント・スクールの聾唖学習者に交通費・学費を援助するとともに、脳性麻痺の学習者がeラーニングに参加できるように、特別なマウス・アダプターのついたコンピュータを寄贈した。

理数科と識字能力の低さに対処するため、同トラストは、35の黒人居住区に設備の整った多機能メディア・センターを設置。300人の学生に、理数科の補習を行うスター・スクールズ・プログラムへの参加後援を与えた。

ピアモントのビジネススキル開発への投資により、人々は小企業を興し、自立する力を与えられた。そのビジネス・トラストは、新興零細企業に訓練、支援、援助を提供する一方、Lesedi産業技術プロジェクトは、就職を支援するため、また起業により経済的な自立を図れるように、若者への訓練コースを提供している。

またグループは、特に営業する地域に近接した地域社会の向上に重点を置いている。典型的な例はThokoza Walkways プロジェクトである。エンペラーズ・パレスとEkurhuleni市庁の共同プロジェクトであり、黒人居住区に25 kmの歩道を設置することになった。Thokoza には緑地がほとんどないため、プロジェクトにより歩道に沿って50m間隔で植樹した。

グループは地域社会の支援も行っている。NPOに無料で会議場を提供し、また、地元のNPOに毛布やリネン、衣類を提供することも多い。

また、周辺地域のスポーツ開発も支援している。例えばグレースランドは恵まれない子供たちのために6つの月間ゴルフスクールを主催し、2006年には、若者に、ベテランのキャディーで熱心なゴルファーでもあるLucky Nhlapoから指導を受ける機会を提供した。

さらに、アマチュア・ボクシング・アカデミーにトレーニング場を提供することによりアマチュア・ボクシングを支援している。また、サッカーやラグビーも支援している。

BASF(ドイツ)

予算:
BASF(ドイツ)

重点分野:
栄養

地理的範囲:
ケニア

国連グローバル・コンパクトの締約企業として、栄養部門の2人の従業員が微量栄養素欠乏症の軽減に焦点を当てたプロジェクト設立に強い意欲を示している。

微量栄養素欠乏症は「隠れた飢餓」とも呼ばれ、必須のビタミンやミネラルの推奨量を摂取できない特殊な栄養障害である。微量栄養素は、成長や発達に不可欠な酵素、ホルモン、その他の物質を体でつくることができる。

世界で20億人以上の人々がこの病気に罹患しており、年間100万人がビタミンA欠乏症だけで亡くなると推定されている。

有数のエコノミストによる調査報告である「コペンハーゲン・コンセンサス」は、栄養障害の軽減は世界最大の課題であるが、最小限の経費で克服できるとしている。

これは、食物の栄養価の強化によりもっとも効果的に達成できる。たとえば、ビタミンAをもっとも多く含むのは、ミルク、レバー、卵、赤やオレンジ色のフルーツ、緑葉野菜である。1日当たり2USドル以下で暮らす人々の多くはこのような食物が手に入らない。そこで、安く手に入る主食の栄養価を高めることがより効果的になる。

これが2人のBASF従業員の提案である。2人はまた、会社の評価を高める効果、従業員の士気への影響、とくに新興市場の利害関係者との関係強化、BASF製品の規模の経済も強調している。

しかし、もっとも印象深い点は、投資が生み出す社会便益の大きさだった。

取締役会はこの提案を受け入れ、微量栄養素欠乏症栄養障害イニシアチブが生まれた。その後、もっとも被害が深刻な国を特定する研究が行われた。結果は、ケニア、フィリピン、モロッコであった。

プロジェクトを遂行するためBASFは、栄養プログラムや官民協力の専門知識を持つスイスの財団である「栄養向上のためのグローバル同盟」(GAIN)と協力している。

BASFは、多くの開発途上国、とくにアフリカではなじみが薄いため、この協力関係はきわめて重要である。GAINは、最低限の能力開発と訓練を施せば栄養増強製品を製造できるようになる地元企業の選出を、アシストした。

さらに、栄養価の高められていない食品や、ときにはビタミン剤を配給している地元組織やNGOとの関係作りが必要だった。

そのような方法ではなく、長期的で、経済的に成り立つしくみとして、プロジェクトを自立可能にすることをめざしたのである。

ケニアのプロジェクトは2002年に始まり、栄養価を高めた食用油を全国的に入手可能にすることに焦点が当てられた。ケニアの従業員は、栄養の重要性とともに、食物の栄養価の強化について訓練を受けた。地元の利害関係者との討議のため、導入計画の草案が作成された。

食物の栄養価強化の全利害関係者が集まる会議が2003年に開かれた。プロジェクトは歓迎されたが、その勢いを継続させることが重要であった。

そのため、国家食糧栄養強化同盟が設立され、具体的な工程表と目標が設定された。そのなかには、管理の行き届いたラべリング計画や、2006年末までに栄養価を高めた食用脂3種を発売することも含まれている。

また、BASFは、農村市場や一般家庭レベルにおいても主食の品質管理を行うための実地検査キットを開発して提供した。

ビタミンAの認定ロゴを使用する3件のブランドに加えて、9件が認定申請中である。

100万人以上の栄養不良の人々がこのプログラムの援助を受けていると推定される。

このプロジェクトの効果として健康状態の改善がみられた、と述べるのは時期尚早であるが、需要や消費が増えていることから、そうなる日も遠くないであろう。

さらに、BASFが開発したモデルを使った協力関係が、GAINの支援を受けて多くの国で成功している。

SABミラー

予算:
非公開

重点分野:
持続可能性

地理的範囲:
アフリカ各地

SABミラーは世界第2位のビール醸造業者であり、5大陸の60カ国以上で、醸造または販売契約を締結している。世界で53,000人以上を雇用し、2006年の売上高は153億7100万USドルであった。

百近くの間同社の事業は、おもに南アフリカと他のアフリカ諸国に限られていた。しかし過去10年間で急速に国際展開している。企業買収によりSABミラーは、ヨーロッパ、アジア、南北アメリカに定着し、グローバル企業に変身した。ヨハネスブルグとロンドンの証券取引所に二重上場している。

SABミラーは、醸造会社から発展してブランド主導の企業に発展していった。Peroni Nastro Assurro、Miller Genuine Draft、Castle Lager、Pilsner Urquellや、Milller Lite、Carling Black Label等の、地元ブランドを始めとする150以上のビール・ブランドを製造販売している。SABミラーは、世界的な発泡フルーツジュースのブランドであるアップルタイザーを有し、世界でもっとも大きなコカコーラ製品ボトラーの一社でもある。

事業の成長と成功が、過去も現在も最優先事項ではあるが、南アフリカに深く根ざした企業として、地域社会支援をもともと企業文化としてもっていた。

南アフリカでの成功は、国民が製品を購入できるほど豊かであることと、黒人のエンパワーメントによってのみ可能である。SABは、南アフリカ国内の消費が成長するかどうかは黒人の収入が増加するかどうかにほとんどかかっていることを認識しており、早くも1971年には取り組みを始めている。

会社が世界規模に成長するにつれて同社のCSR活動対象には、前述の課題に加えて1990年代前半からHIV/エイズ問題が加わり、米国におけるフィランソロフィー活動や「責任ある飲酒」(responsible drinking)全般に拡大していった。

ビール企業に影響を与えるほとんどの主要課題については多くの市場で取り組まれている一方、グループ全体に共通の方針、戦略、行動計画は存在しなかった。各現地の事情を勘案しつつもグローバルで一貫したアプローチが必要であると、SABミラーは2005年に認識した。

その理由は、グローバル企業として世界規模の問題に、もっと一貫した方法で取り組む必要があったからである。また、FTSE 100構成銘柄として、投資家、規制当局、顧客に対してCSRに関するもっと詰めたアプローチが取る責任もあった。

文化やCSRへの理解度が異なる国々で、きわめて多岐にわたる事業を行っているため、グループの戦略をまとめるのは容易なことではなかった。2005年に専任のCSR専門家がグループ・レベルで任命され、すべての事業で採用する構想を作り上げることになった。

主要な意思決定者、予算管理者が相談や質問を受けた。特定の市場の事業者としてだけではなく、情報が即時に伝わり会社の信用が一瞬にして高揚も失墜もする、そのような環境で事業を行うグローバル企業の一員としての認識においてである。

会社の経済的な成功が新興市場にかかっているという状況において、貧困、気候変動、HIV/エイズという主要課題が企業に与える影響を中心に検討が行われた。

とはいえ、意見の相違も見られた。HIV/エイズは、従業員、家族、地域社会への影響が自明であるアフリカでは最優先課題であるが、ヨーロッパで事業を行うものにとっては、優先課題に入っていない。ここでは、エネルギーや炭素管理が明確な課題となっている。

10項目の優先課題を組み込んだ持続可能な開発構想がまとめられた。ビール醸造企業にとっての最優先課題は「責任ある飲酒」であるが、水資源、エネルギー、炭素管理、包装、ゴミ、ならびにHIV/エイズや人権といった社会的課題も対象としている。サプライチェーン、地域社会との関係、透明性の確保も、持続可能な開発の優先課題10項目に含まれている。

それぞれの優先課題には、方針説明書と「ステアウェイ(階段)」と呼ばれる、それぞれの優先課題におけるその事業の実績評価を助けるしくみがついている。SABミラーの取締役会は、各事業部門に対し、優先課題においてレベル1以上の成績を得ること、得られない場合は、レベル1を得るための行動計画を策定することを命じた。現時点では、現在のグッド・プラクティスに照らして「称賛」に当たるレベル4まで設定されている。

SABミラーは、2006年に制定された新しい持続可能な開発構想により、主要優先課題において、グループ全体で知的に強固な立場を築く機会を得た。

また事業部門の管理職に対しては、グローバル企業の一員であること、それゆえ、地域の課題と同様にグローバルな課題にも責任があることを理解させる一助となった。

事業部門は、自己評価管理制度により各優先課題のステアウェイに対策を提示することに加え、広範なKPI(重要業績評価指数)データを提出することが義務付けられた。これにより、同社は環境・社会問題への実績に関してより透明度を増すことができる。

CSRは、持続可能な開発のより大きな課題に対する企業の取り組みであると考えられる。持続可能な開発にうまく取り組めない段階では、影響を理解して対応策を考えるのが重要である。方針説明書とステアウェイ・モデルという仕組みにより、SABミラーの社員全員が、現在・将来の取り組みをどこまで改善できるかを考えることができるようになった。

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