CSRレポート(Corporate Social Responsibility)

アフリカ成長企業ファイルは2008年度~2009年度に実施した調査事業の成果です。

3. 地域社会、政府のCSRに関する需要

以前のCSIは「善意ある企業」の代表者や関係者の、気まぐれによる、一時的な、慈善活動のジェスチャーと見なされることが多かった。

その結果CSI支出額は年により変動して安定せず、受益団体は、各企業の事業内容に鑑みて選定されてきたのではなかった。

近年は、大手企業がCSIに配慮する意義を認識しはじめている。企業の資源を大きくし、企業関連のコミュニティーに的を絞り、企業が属する経済セクターの強化に資するものとしてのCSIである。

そのような動きは企業内外から生まれている。社内では、役員や上級管理職が、CSI経費についての説明責任と目に見えるプロジェクト成果を求めるようになってきている。

社外では、政府が企業への圧力を高めている。ときには事業に直接関連した特定の支援を、事業ライセンスの条件や他の規定に盛り込むようになっている。

地域社会をはじめとする他の利害関係者は、企業の説明責任と、国の社会経済発展に貢献するような目に見える取り組みを、強く要求するようになっている。

南アフリカでは、経済を積極的に変容させようという論理は、主要企業から十分に理解され広く受け入れられている。政府は、法律を制定し、変化を促進する環境を醸成するという役割を果たしてきた。

この立法は、能力開発や公平な雇用といった特定の変容課題に取り組むことから始まった。その法律は規範を述べたものではなく、企業が正式に社会変容に取り組むことを可能にし、またこれを要請して、みずから設定した目標の進捗状況を多くの利害関係者に公表するよう義務付けるものであった。

しかし、2004年1月に採択された「包括的黒人経済力増強法」(BB-BEE)は、規範的性格をもつものである。この法律は、黒人の経済力を促進し、そのための行動基準を制定して、各産業部門に向けBEE憲章を発布するための法的枠組みを提供している。

企業は、変容を促す政府の取り組みに対応してきた。鉱業、石油、液体燃料業界では、BB-BEEより以前に、業界に関する既存の規制に基づいて業界憲章が制定された。

BB-BEEが官報に掲載されたことで金融業界の憲章が策定されることとなり、他の多くの業界憲章が策定に向けて進みだした。このような憲章の準備過程には、多くの利害関係者グループが参画した。各業界の事情が織り込まれ、大手企業がこれをサポートした。

しかし、憲章策定では幅広く関係者が参画したにもかかわらず、運用面では次のような問題が出現した。

業種内のすべての企業に同一の目標を課すことは、かならずしも適切ではない。たとえば、小規模企業は憲章に書かれたすべての項目に対応できるわけではない。

異業種に製品を納入している業者は、案件ごとに異なる業界憲章の要件に対応し異なるスコアカードに記入することを、困難だと感じている。

政府の評価が求められる業種は、以下のカテゴリーに分けられる。

  • 石油
  • 鉱業・採石業
  • 金融サービス
  • 海運
  • 情報・コミュニケーション技術
  • 農林水産
  • 建築
  • メディア、エンターテインメント
  • 医薬品
  • サービス
  • 物流
  • 不動産
  • 接客、観光業

BB-BEEは、貿易産業省(DTI)に行動規範(Codes of Good Practice)を作成するよう命じている。これ(BEEの9つの重要項目を網羅した規範集)は、企業や業界にBEEにもっとも適合するためのガイダンス提示を目的としている。

DTIコードは、BEEスコアカードの「その他項目」に10%のウェイトを割り当て、そのために税引き前利益の3%を充てるという目標をおいた。その資金は次の3つの分野に使用される。

  • その業界に黒人の参入を促すための、業界特有の取り組み
  • 黒人の経済的権利を拡大するための、業界特有の取り組み
  • 保健、教育、貧困軽減、地域社会開発

このウェイト付けによれば企業は、税引き前利益の3%全部をCSI、または上記3分野のいずれかの組み合わせで支出することにより、10%のスコアを獲得することができる。

多くの既存のCSI活動も、上記の最初の2分野に関するものである。

DTIコードは、CSIや「その他項目」の範疇について明確に定義していないため、活動を分類するのはかならずしも容易ではない。だが、開発についての知識はコードの「その他項目」に対する取り組みを促進するために、きわめて有用である。その知識はCSI部門のなかに見出すことができる。

開発の知識が必要なのは、BB-BEEスコアカードの「その他項目」だけではない。とくに企業家支援は、小企業の置かれた環境や関連開発要件の知識を必要とする、複雑な分野である。

このような支援に必要とされる知識は企業のコア部門にはなく、開発専門の部門からもってこなくてはならないだろう。それは通常、CSIスタッフがいる部局である。

小企業の開発・支援には、以下のような分方法がある:

  • 小企業から優先して調達するために、BEEのサプライヤーに対して事業支援(入札手続きや管理システム)を提供し、調達部門が彼らとの関係において価格と品質に集中できるようにする。
  • 企業のバリューチェーン(代理店や販売業者等)に入っているかどうかに関わらない小企業開発。

BEEの課題にCSIが含まれることにより、民間部門が開発に価値ある貢献を行い、CSI全体の価値を高めたことは間違いない。

その結果、さらに多くの企業がCSIに参画するだろう。CSI支出は見直され(ほとんどの場合増加)、CSI部門が再構築されて、CSI活動は企業全体とより強固に結び付くことになるであろう。

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