CSRレポート(Corporate Social Responsibility)

アフリカ成長企業ファイルは2008年度~2009年度に実施した調査事業の成果です。

1. アフリカにおけるCSR

アフリカ開発の歴史には、輝かしい成功の数だけ失敗もあった。数世紀、あるいは数千年にもわたり、地域社会は環境と比較的調和して繁栄し持続してきた。産業開発は行われたが、アフリカは生物多様性の最後の砦の1つであり、地球上で最も汚染の少ない大陸であろう。

社会経済開発は、民主主義がもたらす政治的恩恵を持続させるための鍵である。地域社会の経済的な変化を促すために、企業は極めて重要な役割を果たす。人材と地域社会の開発を持続させることが課題である。この目標を達成するため、官民協力が不可欠となっている。

社会開発には、家庭・地域社会レベルでの活動を通して、貧困にあえぎ社会から取り残された弱者を支援する広範な取り組みが含まれる。

国連は、1995年の世界社会開発サミット終了後、1996年から2006年を貧困撲滅のための10年として宣言した。この期間に、地元でも多くの注目を集める取り組みが行われた。1997年の政府支援による「貧困撲滅 – すべての人により良い生活を」運動もそのひとつである。

企業は、貧困と排斥のなかで生きる人々にとって、大きな影響を与える立場にある。純粋に福祉面からのアプローチはある程度必要であるが、企業は社会開発面、特に社会から疎外された人々が生きていくしくみを支えることで、持続可能な取り組みに大きく寄与することができる。

開発途上国でみられる紛争、基礎教育力の欠如、健康への脅威、失業は、すべてアフリカの国々、特に若者が直面する課題である。次の10年、深刻化する気候変動の影響がそれに加わるだろう。世界の若者の大部分(約85%)は開発途上国に住んでいる。つまり、ほとんどの若者は、教育と雇用の機会のない社会で成人を迎えるということである。紛争から生き残った人も多く、なかには紛争の加害者もいる。

アフリカ大陸の内戦、中東の政情不安、南アジアの好況からの低迷を背景に、若者は、失業により世界情勢のなかで貧困の循環に陥る危険がある。

貧しい農村の社会経済開発は、普遍的な優先課題である。国際貿易で中心テーマとして討議され、政府の優先課題となり、最終的には国の長期的な繁栄に影響を与える。

貧困、社会参画、貧しい人々の窮状は、確実に地球規模の課題となっている。

戦後の「開発の数十年」では、高度成長期において社会・環境を改善するための多くの重要な多国間協定、宣言、指針が制定され、国際開発をリードし、また今でも世界中の開発慣行の指針となっている。

世界の注目を集めた取り組みは、2000年9月、ニューヨークで開催された国連ミレニアム・サミットで誕生した。150ヵ国以上の首脳が、ミレニアム開発目標(MDG)と称される目標を公約した。

8つの目標は、2015年までに貧困の削減、生活の改善、環境資源の保護を行うための意欲的な課題を示している。

MDG構想は、大規模な組織(世界銀行や国際通貨基金等)と、貧富に関わらず、すべての国が協力していくことの必要性を強調している。

国連ミレニアム開発目標

ミレニアム・サミットの国連ミレニアム宣言に基づくMDG 8目標には、21世紀に貧困撲滅をめざす世界の首脳の決意が表われている。MDGは、2015年までに達成すべき目標を、人を中心に据えて広範に提示している。MDGは先例のない政治的支援を得て、先進国、開発途上国、国際機関の協力により世界に蔓延する社会悪に立ち向かう枠組みを提供している。8目標は次の通りである:

  • 極度の貧困と飢餓の撲滅
  • 初等教育の完全普及の達成
  • ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上
  • 乳幼児死亡率の削減
  • 妊産婦の健康の改善
  • HIV/エイズ、マラリア、その他感染症の蔓延防止
  • 環境持続可能性の確保
  • 開発のためのグローバル・パートナーシップ推進

結論として、アフリカのCSRでは、企業は「doing good is good business」という慈善的な考え方を持たねばならないが、そこには、事業として経済面でも明らかなニーズがあることを再度指摘しておきたい。

アフリカ開発のための新パートナーシップ(Nepad)は、アフリカが直面する開発課題に総合的に対処しようとする取り組みであり、アフリカの恐るべき病へのマーシャル・プランとみられている。アフリカ再生のための戦略的構想である。

南アフリカは、APRM(アフリカにおける相互審査システム)の審査を求め、その後、アフリカ連合のガイドラインに基づいてレビューを受けた。同様のプロセスを経た他のアフリカ諸国は、ガーナ、ブルキナ・ファソ、ナイジェリア、セネガル、ウガンダ、マリ、ルワンダ、ケニアである。

目次