CSRレポート(Corporate Social Responsibility)

アフリカ成長企業ファイルは2008年度~2009年度に実施した調査事業の成果です。

4. 国際CSR基準の影響と国際企業に求められるもの

Fortune誌(2008年10月号によれば、アメリカの運用資産の10ドルに1ドル(24兆ドル中2兆3000億ドル)は「doing good」指標が高い企業に投資されている。

社会的責任を果たしている企業は、株主、顧客、従業員、活動家といったさまざまな利害関係者と協力し状況を改善しようすることで、そうでない企業に比べて業績が良いことが示されている。

Fortune誌は2年連続で、社会的責任に沿ってどれだけ事業を行っているかについて、世界の大手企業をランク付けした。

「アカウンタビリティ」(企業の社会的責任に関するロンドンのシンクタンク)と「CSRネットワーク」(イギリスのコンサルタント営利会社)はFortune’s Global 500の企業を調査し、利害関係者の関与から成果管理までの6つの基準で判定した。さらに14社の大手企業を加えて、各業種で10社以上が対象となるようにした。

驚くべき結果がみられた。巨大石油企業BPとシェルがそれぞれ2位と3位であり、上位10社のうち4社がユーティリティ産業に属していた。調査によれば、順位には二酸化炭素の排出量といった実績値は勘案せず、以下のような経営プラクティスが評価されている:

  • 批判に耳を傾けるシステムがあるか
  • 幹部や役員が責任を問われるか
  • 外部の検証者を雇っているか

2006年の最高位企業は、イギリスの世界最大の携帯電話会社ボーダフォンだった。

この評価は、企業が財務以外の課題に事業のコアとして取り組んでいるかどうかを示している。ヨーロッパ企業はアメリカやアジアの企業を上回った。上位11社はCSRが共通語となっているヨーロッパに本社をもつ企業であり、Fortune誌によれば、上場するためにCSRレポートが必要な証券取引所もあるということだ。

しかし「サステイナビリティ」を日々の事業遂行のなかに、本当の意味で組み込むことは、容易なことではない。‘Separating Smart from Great’ という記事のなかでSimon Zadekは、サステイナビリティで高く評価されるグローバル企業のBPとフォードが、いかに「事態をめちゃくちゃにしたか」について疑問を投げかけている。

BPは気候変動の公開討論をリードしていることで有名だが、2006年初頭にアラスカのノーススロープで起こった最悪の原油流出では、責任を問われている。フォードは、環境に優しい車や工場の提唱者だが、「環境に金のかかる世界」の顧客にふさわしい製品を作るに失敗して、市場シェアを落とした。

「総合説明責任」とは、経済面に加えて社会・環境面での利害関係者に対する説明責任のことである。現在の競争市場だけではなく、将来の市場に影響する社会・環境状況も視野に入れたビジョン、戦略、技術革新を、企業に対して求めるものである。

ウォルマートのLee Scott、GEのJeff Immelt、ヴァージン社の利益30億ドルを気候変動対策に投入すると約束したRichard Bransonのように、近年サステイナビリティに対する関心が高まっているが、これは彼らが、社会・環境的要因により市場が根本的な変化を遂げていることを認識しているからである。

第三者による保証への取り組みも大きな差別化要因となる。独立監査人に業績の監査を受けてこのカテゴリーで高得点をあげている企業は、全般的に評価が高い傾向がある。

「Tomorrow’s Value」は、サステイナビリティ社による企業のサステイナビリティ評価の、第4の国際指標である。国連環境計画(UNEP)がスタンダード・アンド・プアーズ社と協力して設定したものだ。企業のサステイナビリティ評価を、ガバナンスと戦略、マネジメント、実績の提示、アクセスしやすさと保証という4つの観点から査定することにより、上位50社をランク付けしている。2006年の結果は、第1位がBT、続いてCooperative Financial Services、BP、Rabobank、Anglo Platinumと続いている。

サステイナビリティ報告に優れた企業は、これを財務報告とまったく同様に扱っている。結果を監査委員会に提出し、サステイナビリティが事業に与える影響を理解しようとしているのである。説明責任とサステイナビリティは経営会議に上がり、企業戦略の一部をなしている。

また、第三者保証に取り組んでいる企業は、報告書を眺めているだけではなく活用している。企業は、関連する課題から始めてキーとなる業績評価指標を設定し、GRI(Global Reporting Initiative)ガイドラインに準拠することが奨励されている。

目次