2007年12月 驕れる人も久しからず

月間ブラジル・レポート

ブラジル

地域研究センター ラテンアメリカ研究グループ 近田 亮平

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2007年12月
経済
第3四半期GDP:

2007年第3四半期のGDP(速報値)が発表され、前期比1.7%、前年同期比5.7%となった。この数値は市場関係者の予想を上回るもので、四半期GDPは23期連続のプラス成長を記録した。また、年初累計は5.3%となり、市場関係者の間では2007年の年間GDPが、政府目標の4.5%を上回る5%以上に達するとの見方が強まった。

第3四半期のGDPの内訳を見ると、為替相場の長引くレアル高の影響から輸入が16期連続のプラス成長を記録し、このことが輸入品価格の低下と全体的な物価安定の誘因になるとともに、個人向け信用市場の拡大とも相俟って家計消費支出の継続的な伸びをもたらした。また、増加した輸入の中には設備機械などの耐久消費財が多く含まれており、このことが投資を示す総固定資本形成の高い伸びにつながり、前回までのトレンドと同様、国内市場の拡大がGDPを牽引するかたちとなった。ただし、輸出に関しては、為替におけるマイナスの影響が一次産品の国際価格上昇などの好条件を相殺するかたちとなり、プラス成長となったものの低い伸びにとどまった。
一方、部門別では、工業とサービス業も前回までと同様に堅調な伸びを記録したことに加え、第3四半期が小麦やサトウキビの収穫期であったことから、農業の伸びが顕著となった。第4四半期は、国内の旱魃や世界的なコモディティー価格上昇の影響による物価高などの影響が予想されるが、2007年のクリスマス商戦の売上げは過去10年間で最高とも言われており、過去の四半期GDPの推移からも見ても、今まで安定的ではあったが成長率の低かった経済が、より順調な成長軌道をえがき始めたと考えることもできよう(グラフ1~3)。

グラフ1 内訳および部門別第3四半期GDP

グラフ1 内訳および部門別第3四半期GDP
(出所)IBGE

グラフ2 四半期GDPの内訳および部門別推移:前年同期比

グラフ2 四半期GDPの内訳および部門別推移:前年同期比
(出所)IBGE
グラフ3 四半期GDPの推移
グラフ3 四半期GDPの推移
(出所)IBGE
貿易収支:

12月の貿易収支は、輸出額がUS$ 142.31億(前月比1.3%、前年同月比16.0%増)、輸入額がUS$ 105.95億(同▲11.9%、46.9%増)となり、輸出入ともに12月の貿易額としては過去最高を記録した。また、貿易黒字額はUS$ 36.36億(同79.5%増、▲28.0%)となった(グラフ4)。

輸出に関しては、完成品がUS$72.21億(一日平均額の前月比▲4.1%、前年同月比3.6%増)、半製品がUS$17.93億(同▲7.5%、▲5.3%)、一次産品がUS$48.77億(同14.1%、52.7%増)となった。前年同期比で大幅増加となった主な製品は、輸出量ではトウモロコシ(195.9%増)、バス(134.1%増)、綿花(108.6%増)などであった。また、輸出価格では石油(72.1%増)、燃料油(61.4%増)、ガソリン(53.9%増)、大豆油(50.0%増)などであった。

一方の輸入に関しては、資本財がUS$22.41億(同▲9.8%、38.8%増)、原料・中間財がUS$ 49.74億(同▲11.7%、37.8%増)、耐久消費財がUS$ 7.52億(同▲14.2%、37.7%増)、非耐久消費財がUS$ 6.75億(同▲11.8%、19.7%増)、原油・燃料がUS$19.53億(同▲13.9%、121.9%増)となった。

グラフ4 2007年の貿易収支の推移

グラフ4 2007年の貿易収支の推移
(出所)商工開発省

また、2007年の貿易収支は、輸出額がUS$1,606.49億(前年同期比16.6%増)、輸入額がUS$1,206.10億(同32.0%増)となり、輸出入額ともに過去最高額を記録した。しかし、さらに進行した為替相場のドル安レアル高の影響から、輸入額の伸びが輸出額の伸びを上回ったため、貿易黒字額は過去10年間で初めて前年比マイナスとなるUS$400.39億(同▲13.8%)にとどまった。 2007年の輸出に関しては、完成品がUS$839.43億(前年比11.9%増)、半製品がUS$218.00億(同11.7%増)、一次産品がUS$515.95億(同28.1%増)となった。各項目とも過去最高額を記録したが、世界的な一次産品の需要増と価格上昇の影響で、一次産品の輸出額が大幅に増加した。また、輸出先の詳細および2006年との比較は、下記表1の通りとなっている。

表1 2007年の輸出先一覧:2006年との比較

単位:百万USドル

輸出 輸出額 シェア(%)
2007 2006 変動率 2007 2006
EU 40,426 31,045 30.2% 25.2 22.5
ラテンアメリカ 36,422 31,495 15.6% 22.7 22.9
∟メルコスル 17,351 13,986 24.1% 10.8 10.1
∟アルゼンチン 14,414 11,740 22.8% 9.0 8.5
米国 25,314 24,773 2.2% 15.8 18.0
アジア 24,960 20,816 19.9% 15.5 15.1
∟中国 10,749 8,402 27.9% 6.7 6.1
アフリカ 8,577 7,456 15.0% 5.3 5.4
中東 6,399 5,749 11.3% 4.0 4.2
東欧 4,309 3,892 10.7% 2.7 2.8
その他 14,242 12,581 13.2% 8.9 9.1
合計 160,649 137,807 16.6% 100.0 100.0
(出所)商工開発省

一方の輸入に関しては、資本財がUS$251.19億(同32.9%増)、原料・中間財がUS$ 594.02億(同31.2%増)、耐久消費財がUS$ 82.50億(同35.9%増)、非耐久消費財がUS$ 77.74億(同31.5%増)、原油・燃料がUS$200.65億(同31.6%増)となった。全項目において輸入額は増加したが、自動車関連の耐久消費財の増加率が63.1%と最も顕著であった。また、輸入元の詳細および2006年との比較は、下記表2の通りとなっている。

表2 2007年の輸入元一覧:2006年との比較

単位:百万USドル

輸出 輸出額 シェア(%)
2007 2006 変動率 2007 2006
アジア 30,626 22,888 33.8% 25.4 25.1
∟中国 12,617 7,990 57.9% 10.5 8.7
EU 26,736 20,202 32.3% 22.2 22.1
ラテンアメリカ 20,571 16,282 26.3% 17.1 17.8
∟メルコスル 11,633 8,967 29.7% 9.6 9.8
∟アルゼンチン 10,410 8,053 29.3% 8.6 8.8
米国 18,887 14,817 27.5% 15.7 16.2
アフリカ 11,330 8,111 39.7% 9.4 8.9
中東 3,206 3,165 1.3% 2.7 3.5
東欧 2,766 1,434 92.9% 2.3 1.6
その他 6,488 4,452 45.7% 5.4 4.9
合計 120,610 91,351 32.0% 100.0 100.0

(出所)商工開発省

物価:

発表された11月の IPCA(広範囲消費者物価指数)は、前月比で0.08%ポイント、前年同月比では0.07%ポイント高い0.38%となった。この結果、年初来の累計値は昨年同期比で1.04%ポイント高い3.69%となり、最近の物価上昇傾向および年末という季節要因があるものの、2007年の政府目標値4.50%を達成できる可能性が高くなった。 11月は食料品価格が0.52%(10月)→0.73%(11月)へと上昇し、10月同様、全体の物価上昇の主な要因となった。生産地における旱魃の影響から、フェイジョン豆(インゲン豆に似たブラジルの主食品の一つ)各種の価格が10%~20%以上も上昇したことに加え、バイオ燃料への需要増などの影響により飼料作物価格が上昇し、このことが肉類(牛肉5.71%、鶏肉1.59%)の価格上昇にもつながった。一方、非食料品価格は全体としては0.24%(同)→0.28%(同)と小幅な上昇率にとどまったが、国際原油価格の上昇などによりガソリン価格が0.36%(同)→0.64%(同)へと上昇したことに加え、アルコール燃料価格が▲0.90%(同)→5.29%(同)へ大幅に上昇した。

金利:

12月5、6日に開催された2007年最後のCopom(通貨政策委員会)において、前回の10月に引き続き、政策金利であるSelic金利(短期金利誘導目標)は11.25%で据え置かれることが全会一致で決定された(グラフ5)。世界的な物価上昇の影響を受け、食料品を中心に物価が高めに推移していることや、工業生産指数が上昇したこと(10月:前月比2.8%、前年同月比10.3%増)などから、インフレ懸念が強まっているとの景況判断に至ったとされる。特に今回のCopom議事録からは、前回使われた「金融政策の柔軟化プロセスにおける一休止」という表現が削除されており、市場関係者の間では、2005年半ば以降、漸次引き下げられてきたSelic金利の更なる引き下げは、2008年は行われない可能性が高いとの見方も強まっている。

グラフ5 Selic金利の推移:2005年以降

グラフ5 Selic金利の推移:2005年以降
(出所)ブラジル中央銀行
為替市場:

12月の為替相場は、US$1=R$1.7台後半を中心とした狭いレンジでの取引に終始した。月の前半は外資系企業による年末の利益確定送金などの影響から、若干ドル買いが進む場面も見られたが、Selic金利の据え置きが決定されると金利差を利用した裁定取引が活発化したこともあり、レアルが値を戻す展開となった。その後、上院でCPMFの延長が否決されたこと(後述)を嫌気し、レアルを売る動きが強まったものの、発表された四半期GDPがブラジル経済の好調さを裏付けるものであった一方、米国経済の先行きに対する不安が払拭し切れていないことなどからドル売りが強まり、US$1=R$1.7705(買値)で2007年の取引を終えた。

また、2007年の為替相場は、ドルが世界の主要通貨に対して弱含みで推移したことや、海外からブラジルへ大量に資金が流入し、レアルの対ドル為替市場でドルが大幅に余剰気味だったことなどから、世界同時株安の際に新興市場全体から資金を引き上げる動きが強まった一時期を除き、一年を通してドルは対レアルで下落する結果となった(グラフ6)。

なお、2007年にUS$1=R$2を超えて進んだドル安レアル高傾向に歯止めをかけるべく、中央銀行は為替市場において頻繁にドル買い介入を行った。その結果、ブラジルの外貨準備高は増加の一途をたどり、年末の外貨準備高は昨年記録した過去最高額のUS$858.38億の倍以上となる、U$1,803.34億にまで達することになった(グラフ7)。

グラフ6 2007年の対ドル為替相場の推移

グラフ6 2007年の対ドル為替相場の推移
(出所)ブラジル中央銀行

グラフ7 外貨準備高の推移:2005年以降

グラフ7 外貨準備高の推移:2005年以降
(出所)ブラジル中央銀行
(注)水色は年末の外貨準備高
株式市場:

12月前半のサンパウロ株式市場(Bovespa指数)は、11月の世界同時株安の影響で値を下げていた分を買い戻す動きから堅調に推移し、6日には65,791ポイントの史上最高値を記録した。しかし、12日にCPMFの延長が否決されると(後述)、政府の財政に対する先行き不安から一転して下落に転じ、17日には59,828ポイントまで値を下げた。しかしながら、CPMFの廃止は中長期的にはより抜本的な税制改革や公費削減を促し得るとの期待感や、発表された第3四半期GDPへの好感から、19日に221ポイントまで上昇したカントリー・リスクが26日には197ポイントまで低下。これらとともに株価は回復基調となり、63,886ポイントで2007年の取引を終えた。

2007年のBovespa指数は、前半の中国、半ば以降の米国に端を発した世界同時株安発生時に、新興市場から資金を引き上げる動きが強まると値を崩す場面も見られた。しかし、過去に比べブラジル経済のファンダメンタルズは強固になるとともに、外的要因に対する脆弱性は低下しており、これらに対する市場や投資家の信頼および期待感が強まっていることから、株価は短期間で回復へと転じ得たといえる。そして、世界的な一次産品の価格上昇と需要増加を背景に、Petrobrás(ブラジル石油公社)とCVRD(リオ・ドセ社)が株価を牽引するかたちで、2007年のBovespa指数は2006年末比で43.65%上昇し、年間取引高は2006年(R$5,308)比で92%増のR$1兆以上に達するに至った(グラフ8)。

グラフ8 2007年の株式相場(Bovespa指数)の推移

グラフ8 2007年の株式相場(Bovespa指数)の推移
(出所)サンパウロ株式市場
政治
上院議長:

数々の汚職疑惑事件で窮地に追い込まれていたRenan上院議長(PMDB:ブラジル民主運動党)が(9月・10月レポート参照)、4日ついに議長職の辞任を表明した。ただし、Renan上院議長の辞職は議会内では既に予測済みであり、その後の議会運営に大きな混乱は起こらなかった。

Renan議長の辞職表明後、同日夜に同議長の汚職疑惑に関する投票が上院本会議で行われ、免責48票、議員権剥奪29票、棄権3票で、Renanは上院議員として議会にとどまることになった。Renanは辞任後も自らの汚職疑惑を強く否定したが、議会内でのRenanの影響力は著しく低下しており、重要な法案であるCPMF延長(後述)の審議が大詰めを迎える中、議長職に固執し続けていたRenanaに対しては、野党だけでなく連立与党からも激しい非難が寄せられ、最終的には自身の議員権剥奪を逃れるためにも、上院議長の職を自ら辞する決断を下すに至ったといえる。しかし、Renanには依然として複数の汚職疑惑の嫌疑がかけられており、今後、議会および連邦検察庁による捜査と審判に直面せざるを得ない状況となっている。

なお、Renanの後任としては、同じくPMDBのGaribaldi Alves上院議員が、2009年2月1日までの暫定的な上院議長として選出された。

CPMF:

12月12日、CPMF(金融取引暫定負担金:金融取引の際に取引額の0.38%を徴収する連邦税で、その使途は社会政策に限定されている。元となる税金は1993年に暫定的に新設され、その後、幾度にもわたり延長されてきた。)を、2011年まで再延長するか否かに関する採決が上院において行われた。その結果、賛成45票、反対34票となり、法案可決に必要な上院議員81名の5分の3となる49票に4票足りず、CPMFは2007年末をもって廃止されることが決定した。今回のCPMFの廃止により、2008年以降、政府は約R$6,000億(2007年予測)の年間歳入のうち、R$400億に上る税収源を失うことになった。

CPMFの延長を前提として予算を組んでいたルーラ政権にとって、CPMFの廃止はまさに予期せぬ出来事であるとともに大きな痛手となったといえる。しかし、CPMFに対しては野党や世論だけでなく専門家からも厳しい批判が出されていたこと、また、CPMFの廃止により、高率かつ複雑なブラジルの税金制度の抜本的な改革や無駄な公費削減が期待できること、さらに、“悪名高い”CPMF廃止のために議会制度が民主的に機能したことを意味するとも言えることなどから、今回の上院の決定に関しては好意的な見方もされている。

ただし、今回の件で問題として指摘し得ることのひとつに、政府の驕った姿勢を挙げることができよう。CPMFが国民の間で非常に不評であるにも関わらず、暫定税として今まで何度も延長されてきたため、政府内部には“CPMFの延長は当然”との判断があったのは否めないであろう。政府はCPMF延長のため、与野党を含めた議会内での政治交渉を幾度となく行っては来たが、Lula大統領がCPMF延長承認を上院に請願した親書を送ったり、保健医療分野への優先的な使用を確約するなどの対策を打ち出したりしたのは、採決の直前になってからであり、“時既に遅し”といった感があった。さらに、上院で採決が行われた当日、Lula大統領はベネズエラを外遊中で不在であったことも、上院での採決に少なからぬ影響を与えたといえよう。

上院でのCPMF否決後、Lula大統領はCPMFに代わる新たな税金は導入しないことを確約するとともに、Mantega大蔵大臣はCPMFが主要財源となっている社会政策の継続を明言した。しかし、R$400億もの歳入の代替となる具体案は示されていない。

今回の件は、政府における“驕れる人も久しからず”で、政権への高支持率や順調な経済を過信して、着手すべきより構造的な税制改革を後回しにしたまま、バブルな財源を当てにしていたが故の結末とも言えよう。今後、次に懸念されるシナリオとしては、最近の好調な経済、特に過熱する個人向け信用市場の拡大を、国民が“安易に貸し借りして当然”と認識し、“驕れる人も久しからず”な不良債権バブルとなって弾けてしまうというものであろうか。

社会
ブラジルの地震:

12月10日の午前0時頃、内陸部のミナスジェライス州北部でM4.9の地震が発生し、就寝中の5歳の男の子1人が倒壊してきた瓦礫の下敷きとなり死亡し、ブラジル初の地震による犠牲者となった。また、地震の被害を最も受けたCaraíbaと呼ばれる小さな町では、家屋のほとんどが全半壊したため、300人あまりの住民の多くが同町からの転出を余儀なくされることになった。
南米大陸ではアンデス山脈のある太平洋側で地震が多く発生するが、一般的に“ブラジルは地震のない国”といわれている。しかし、過去においてブラジルでも地震は発生しており、20世紀にM5以上の地震が5回観測されるとともに、1955年にマット・グロッソ州で発生した地震はM6.5を記録している。ただし、過去の地震の発生地域が都市部から離れていたため、地震による被害はほとんどなかった。しかし、ミナス連邦大学の調査によると、国内の48ヵ所において今後地震が発生する可能性があるとされる。また、近年、小規模ながらも地震がより発生する傾向にあることから、“ブラジルは地震のない国”という意識を変えるとともに、何らかの地震対策を講じる必要性が高まっていくものと思われる。

絵画泥棒:

クリスマス前の12月20日早朝、サンパウロ市の中心街にあるMasp(サンパウロ美術館)に3人の窃盗団が侵入し、ピカソとポルチナーリの絵画1点ずつ合計2点を盗難し、そのまま逃亡した。両絵画の推定総額は前者がUS$5,000万、後者がUS$550万とされる。
警察によると、Maspでは10月以降2回もの盗難未遂事件が発生しており、今回の盗難は同じ窃盗団による犯行と見られている。最近の盗難未遂事件の発生にも関わらず、Masp側は警備の強化を行うどころか、警報システムの電源を切る措置を取っていた。実際、犯行当時、Masp全体の警報システムの電源はオフになっており、さらには常在しているはずの警備員が交代時間前に既に帰宅しており、警備員が不在の状態であった。また、防犯カメラに窃盗団が映っていたものの、カメラの性能が悪いため犯人の顔を識別することができなかった。さらに驚くべきことに、Maspに展示されている各美術品には、盗難や破損等に関する保険が一切掛けられていないことが明らかになった。
以前、Maspは照明などの電気代が支払えなくなったことから、一時休館状態に追い込まれるなど、財政難の深刻化が問題視されていた。そして今回、改善されぬ財政問題に起因する警備体制の不備により、貴重な財産を喪失するという事態を招いてしまった。Maspは8,000もの美術品を有しており、その合計推定額はR$170億にも上るとされる。また、ブラジルへの日本移民100周年の記念事業である2008年の「日伯交流年」のイベントとして、日本の美術品などがMaspで展示される予定となっている。一日も早く、Maspの経営体制と警備システムが改善されることを願うばかりである。