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太田仁志編『新興国の「新しい労働運動」――南アフリカ、ブラジル、インド、中国――』

学術書

新興国の「新しい労働運動」――南アフリカ、ブラジル、インド、中国――

著者/編者

出版年月

2021年3月

ISBNコード

978-4-258-04647-8

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内容紹介

内容紹介

急速に工業化が進んでいく1970年代以降のいくつかの新興国では、賃金や労働条件の改善だけでなく、経済発展のあり方を問う、また非民主主義的な体制や慣行の打破をめざした闘争的な労働運動が労働組合によって展開された。目的達成の過程で労働組合は、他の社会グループやコミュニティ組織との地域社会での協働にも取り組んでいる。本書では南アフリカ、ブラジル、インド、中国という新興4か国で1970年代~1980年代に台頭した、こうした動きをはじめとする「新しい労働運動」の史的展開と現状を分析する。

目次

まえがき

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序章 新興4か国の「新しい労働運動」

著者:太田 仁志

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第1章 南アフリカにおける「新しい労働運動」の変遷――南アフリカ労働組合会議(COSATU)に注目して――

著者:佐藤 千鶴子

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第2章 ブラジルの「新しい労働運動」から誕生したCUTの変遷

著者:近田 亮平

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第3章 インドの2つの「新しい労働運動」

著者:太田 仁志

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第4章 中国の2つの「新しい労働運動」――1989年天安門事件と2000年代――

著者:山口 真美

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索引

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はじめに

はじめに

本書は、2018年度~2019年度にアジア経済研究所で実施された「新興国の新しい労働運動」研究会の成果である。労働運動に関する研究は、今日の日本では盛んに行われているとはいえない状況にある。また日本における研究は、日本や先進国の労働運動を論ずるものが中心で、途上国に関する日本語文献を目にする機会は多くない。このようななか、「新しい労働運動」という視角で南アフリカ、ブラジル、インド、中国という新興4か国の労働運動に接近したのが本書である。本書の「新しい労働運動」の担い手は、必ずしも労働者だけではない。また、その運動の場は必ずしも職場だけでなく、目的も賃金や労働条件の改善、向上に限られない。本書ではこの「新しい労働運動」を「新興国型」と「包摂・権利擁護型」の2つに大きく分け、どちらか一方あるいは両者を議論の視野に入れ、状況分析を中心に、研究の専門領域を異にする執筆者が各章自由に論じている。ただし各国ともに、その労働運動史に大きく目を向けている。それは新しいもの/ことは、新しくないもの/こととの関係において明らかにできるからである。

とりわけ先進国の労働運動について、その研究関心の1つに労働運動の再活性化があり、その際に言及される視座のなかに「社会運動ユニオニズム」(Social Movement Unionism)がある。しかし途上国の労働運動研究では、社会運動ユニオニズムは先進国とは異なった文脈で議論されてきた。本書ではまずこの点を明確にしている。途上国の社会運動ユニオニズムの代表的な例が、本書で扱う南アフリカ(第1章)とブラジル(第2章)の労働運動である。一方、途上国では労働組合によらない、すなわちユニオニズム/(労働)組合主義では括ることのできない労働運動も、無視しえない役割を果たしている。インド(第3章)と中国(第4章)については、そのような労働運動も論じている。内実は異なっても、各国の「新しい労働運動」に共通するのは、労働者を取り巻く困難を克服しようとする、状況打破を目指す/目指した労働運動であるという点である。

ところで、本書は紙の冊子体ではなく、電子書籍/ eBookを中心に据えた出版となっている。アジア経済研究所では2020年度より、研究所出版によるすべての和文での研究成果を原則、オンラインで無料公開することとした。EPUB(イーパブ)での閲覧のほか、PDFファイルをダウンロードし、プリントアウトすることも可能である。通常の冊子体については有料になるが、アマゾン、三省堂書店オンデマンド、楽天ブックスでPOD(プリント・オン・デマンド)が提供されている。ご関心の向きはそちらをご覧いただきたい。

研究会では当初、5か国に関する研究を企図していた。しかし諸事情により、フィリピンの労働運動についての論考を本書に収めることができなかった。非常に残念に思う。難航した研究会が最後までたどり着けたのは、多くの方々の協力と助言があったからである。個別にお名前を挙げることは控えさせていただくが、各国現地にて研究会委員が実施した調査に協力をしてくださった方々、日本の労働運動や労働事情に関する聞き取りに快く応じてくださり、あるいはまた知見を惜しみなく共有してくださった労働組合関係者、労働行政等専門家、研究者、研究会の運営と本書の編集・出版に携わっていただいた関係諸氏、所内の匿名レフリーに、この場を借りてお礼申し上げる。なお、断りのない限り、本書の記述は2020年1月現在のものである。

2021年2月 編者