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ベトナム「繁栄と幸福」への模索――第13回党大会にみる発展の方向性と課題――
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内容紹介
内容紹介
ドイモイ路線の正式な採択から35年を経て大きく変貌したベトナム。2021年初に開催された第13回党大会は、2045年までに高所得の先進国になるという目標、そして「繁栄した幸福な国」というビジョンを示した。技術変化、人口高齢化、気候変動といった新たな課題への対処も迫られるなか、ベトナムはいかに政治・社会の安定を維持し、経済発展を促進しようとしているのか。本書は、各分野における基本路線の概要、および党・国家運営を担う新指導部の特徴を分析し、予想される課題や今後の展望を論じる。
はじめに
はじめに
ベトナム共産党第13回全国代表者大会(以下、党大会)は、500万人を超える党員を代表する1587人の参加を得て、2021年1月25日から2月1日まで開催された。
今大会の特徴として、前回第12回党大会決議の実施結果の評価のみならず、2011年の第11回党大会で採択された10カ年発展戦略、党の目標・路線・任務を定めた基本文書である党綱領、さらに1986年以来のドイモイ事業の実施について全般的な評価が行われたうえで、今後5年および10年の目標と発展の方向性に加え、2045年に向けた長期的な目標とビジョンが示されたという点があげられる。具体的な目標は、国の重要な節目にあわせ、国際的な基準に沿って次のように定められた。
・ 南部完全解放および国土統一50周年を迎える2025年までに、近代志向の工業を有し、下位中所得レベル)を超えた発展途上国となること
・ 党設立100周年を迎える2030年までに、近代的工業を有する上位中所得レベルの発展途上国となること
・ 建国100周年を迎える2045年までに、高所得の先進国となること
このような野心的な発展目標に加え、目指される国の姿として「繁栄した幸福な国」というビジョンも掲げられた。
ドイモイ路線の正式な採択から35年を経て、ベトナムは国際的に孤立した世界の最貧国の1つから積極的に国際参入を進める中所得国へと変貌を遂げた。その成果は国際的にも認知される一方で、新たな企業や経営主体の成長、社会構造の変化、対外関係の拡大といった多様な動きが生じ、各分野においてベトナムが抱える問題も複雑さを増している。今後、ベトナムが新たな段階に向けて歩みを進めるうえでは、技術変化、人口高齢化、環境問題や気候変動といった新たな課題への対処も重要性を増すものと想定される。こうしたなか、ベトナムがいかに政治や社会の安定を維持し、上掲のような野心的な目標に向けて急速かつ持続可能な発展を実現しようとしているのかが注目される。
本書の目的は、第13回党大会の結果を多面的に分析することを通じて、ベトナムの発展の方向性を明らかにすることである。政治、経済、社会にかかわる基本路線の概要、および党・国家運営を担う新指導部の特徴を整理、分析することが中心となるが、可能なかぎり党大会前後の各分野の状況もあわせて考察し、予想される課題や今後の展望についても論じたい。