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ストライキの季節?――総選挙を前にしたインドの労働戦線

PDF版ダウンロードページ:http://hdl.handle.net/2344/00050852

2019年4月

(9,011字)

インドでは間もなく、5年ぶりの連邦下院選挙が実施される。選挙年である今年の労働運動のシーンは、4つの大きなストライキで幕を開けた。一般にストライキは労働条件の改善(=経済事項への関心)が主要目的であるが、インドの全国レベルの労働運動、とりわけ労働戦線は長らく政治の動向に影響を受けている。ナレンドラ・モディ首相を首班とするインド人民党(BJP)/国民民主連合(NDA)政権が5年の任期を迎えるなか、インドの労働はどのような状況にあるのだろうか。小稿では年初の4つのストライキを概観したのち、労働の領域における民主主義=産業民主主義に関する現政権のスタンスの評価を試みる。その結論は、現政権下ではインドの民主主義が後退しているという評価が多いなかで、労働面でも民主主義が後退していることを示すものであるといえる。

写真1 ストライキに参加する労働者

写真1 ストライキに参加する労働者
総選挙とストライキ

第17次連邦下院選挙を間近に控えた2019年1月、大規模ストライキが4つ続けて実施された。長期的には著しい減少傾向にあるものの、インドではストライキはいまも年間100件程度は発生しているので(図1参照)、ストライキ発生の報道に目新しさはない。それでも規模の大きなストライキがひと月に4件も発生し報じられたのは、近年では珍しい。その4つとは、(1)1月8~9日の主要な労働組合のナショナルセンターによる全国的な大規模ストライキ、(2)8~16日のグレイター・ムンバイ電力供給・交通公社(BEST)従業員のストライキ、(3)22~30日のタミルナードゥ州教員・公務員ストライキ、そして、(4)23~25日の防衛兵器製造産業を中心とする全国ストライキである。

大規模ストライキがこの時期に4つ実施されたのは、連邦下院選挙が控えていることと無縁ではない。インド全土(の拠点)を対象とする(1)と(4)では、労働組合は4~5月の選挙の実施を強く明確に意識しており、(3)のムンバイのストライキも(1)にタイミングを合わせている。また(2)が行われたタミルナードゥ州は、労働組合が政府から選挙時に好条件を引き出そうとする「競争的ポピュリズム」(competitive populism)の歴史で知られている州である(Agarwala 2013)。いつもそうとは限らないが、労働組合が要求を認めさせたり譲歩や好条件を引き出したりする相手が政府なら、選挙を控える時期は「ストライキの季節」であるといえる。

図1 ストライキおよびロックアウトの発生件数

図1 ストライキおよびロックアウトの発生件数

(出所)Indian Labour Year BookおよびIndian Labour Statistics各年版より筆者作成。
(注)2015年は暫定値。
公共部門のストライキ

4つのストライキのうち(2)~(4)は、いずれも公共部門でのものである。(1)の前にそれらを概観すると、(2)のグレイター・ムンバイ電力供給・交通公社(BEST)従業員のストライキは、マハーラーシュトラ州の州都ムンバイ地域で、市営バス乗務員(運転手・車掌)を中心に、3万2,000人の労働者が9日間にわたって実施したものである。本ストライキによって州都ムンバイの市営バスの運行はほぼ全面的に停止し、市民とくに通勤者の足に大きな混乱をきたしている1

(3)のタミルナードゥ州教員・公務員ストライキは、教員・政府職員組織共同行動委員会(JACTO-GEO)が1月22日から行った無期限ストライキで(実際には8日後の30日に終結)、ストライキ初日には50万人の公務員・教員が参加している(JACTO-GEOの発表)。とくに教員のストライキによって州内の学校教育が大きく影響を受けた。ストライキ2日目以降になると、連日のように県レベルだけでも1,000人単位で逮捕者が出ている2

(4)は防衛兵器製造産業を中心とする全国ストライキである。インドの防衛兵器産業はその戦略的重要性から、公企業を中心に発展してきた。4つのストライキのなかでは地味な位置づけだが、ここに込められた政治メッセージは大きい。というのも本ストライキは、国防という国家にとって最重要領域の関連産業で、かつ、毎年軍事パレードも行われる1月26日の共和国記念日の前日まで、3日間にわたって実施されたものだからである。加えて、連邦政府与党側の労働組合・インド防衛産業労働者連盟(BPMS)が政権に背を向け、今回初めて他の2つの産業別組合とともに共同でストライキを組織している。ストライキ参加労働者の規模は、労働組合側は全国で30万人とも40万人とも主張する3

以上のような公共部門でのストライキは、インドの労働者一般の状況や要求を代表するものではない。それでも公共部門に共通する問題として、正規労働者と非正規労働者との賃金・処遇格差、業務委託・アウトソーシングの進行、また現行の確定拠出型の年金制度(NPS)への強い不満、という諸点を挙げることができる。この背後に政府そして公企業や公共事業主の財政難があるのだが、正規・非正規間の処遇格差と業務委託・アウトソーシングの進行は、インドで今日広範にみられるものである。後者の業務委託等は結局のところ、低賃金労働者を生み出す可能性が大きい。

他方、(2)のタミルナードゥ州のストライキを典型例として、優遇された労働条件を享受する公務員や公共部門でのストライキに、一般市民の支持は乏しいという側面がある。このような特性をもつ公共部門の、また争点や産業、地域に限定性のあるストライキに対して、次にみる(1)は全国的な大規模ストライキ、いわゆる「ゼネスト」(General Strike)である。

主要ナショナルセンターによる全国的な大規模ストライキと、労働者がおかれている状況

2016年9月2日以来の2年4カ月ぶりに、主要な労働組合のナショナルセンター10組織4が中心になり、また産業別組合や独立系の労働組合も加わって、1月8~9日の2日間にわたって全国的なストライキが実施された。1991年7月の経済自由化以降、主要ナショナルセンターによるこのような「ゼネスト」は18回目を数えるといい(Shyam Sundar 2019)、今回は全国で1.5億人とも2億人ともいう人数の労働者が参加したと労働組合は主張している。しかし今回もまたそれ以前の「ゼネスト」も、実際の参加者数は主催者発表よりも少なく、経済社会への影響は労働組合が喧伝するほどまでには大きくない。とはいえ、世界的にみても、一国内での最大級の参加規模のストライキであったことは間違いない。

これまでも左翼系や野党系の労働組合は、政権を担うBJP/NDA政府の労働政策、経済政策を「反労働者的、反国民的」として、政権打倒に力を入れてきた。今回のストライキを主導した10のナショナルセンターは、インド国民労働組合会議(INTUC)、全インド労働組合会議(AITUC)、ヒンド労働者連盟(HMS)、インド労働組合センター(CITU)、全インド統一労働組合会議(AIUTUC)、労働組合協調センター(TUCC)、全インド労働組合中央評議会(AICCTU)、女性自営者協会(SEWA)、労働進歩同盟(LPF)、そして統一労働組合会議(UTUC)である。連邦政権与党のBJPの姉妹組織で、BJPと同じく民族奉仕団(RSS)を母体とするインド労働者連盟(BMS)はストライキに参加していない。

ストライキで労働組合は、次の12項目の実現を政府に要求している5。いくつかの項目を除いて6、おおむね適切な求めであると評価できる:

  1. 公共配給制度(PDS)の普遍化と一次産品市場での投機的取引の禁止を通じて、物価抑制方策を直ちにとること
  2. 雇用創出のための具体的手段の策定・実施によって失業を抑制すること
  3. 労働法を厳格に履行し、また労働法違反を厳しく取り締まること
  4. 全労働者をカバーする普遍主義的な社会保障を導入すること
  5. 最低賃金を月額1万8,000ルピー(1ルピー=1.6円とすると約2万8,800円)以上、また物価スライド方式とすること
  6. 全ての労働者に月額3,000ルピー以上の確定給付年金を導入すること
  7. 公企業の政府持ち株売却を中止すること
  8. 常用の仕事・常時ある仕事の業務委託・請負を禁止すること、請負労働者と正規労働者の同一労働同一賃金および均等待遇を実現すること
  9. 賞与および退職準備基金に関する給付上限と対象労働者の絞り込み条件を廃止すること、退職一時金を増額すること
  10. 当局は労働組合の登録を申請から45日以内に必ず行うこと、ILO(国際労働機関)87号および98号条約を即時批准すること
  11. 政府は使用者の要求に沿うような労働法の改正を行わないこと
  12. 鉄道、保険、防衛産業で外国直接投資(FDI)を受け入れないこと

これらの12の要求事項は、過去何年にもわたって労働組合が政府に求めてきたものである。長きにわたり要求を掲げているということは、それが実現されていないことの裏返しである。それはまた、インドの労働者が今日おかれている状況を示してもいる7。おおむね妥当な要求が掲げられるなかで、なぜBMSは本ストライキに参加しなかったのだろうか?

損なわれる産業民主主義

BMSの不参加の理由は、本ストライキが反BJP政権という性質も持っていたからである。すでに述べたようにBMSはBJPの直接の系列下になく、ともにRSSを母体とする姉妹組織である。政府・BJPが推し進めようとする規制緩和を柱とする労働市場改革に、BMSは以前から強く反対している。2014年5月に現BJP/NDA政権が誕生してから、少なくとも連邦レベルの労働法改革が政府の思い描くように進んでいないのは、インドで最大のナショナルセンターと認定されているBMSの反対が大きい。一般にBMSが他のナショナルセンターの組織する労働戦線から距離を置くのは、BJPへの配慮という面もあるが、RSSが難色を示している結果であることも少なくない。それでも今回のストライキは「反BJP/NDA政権」であることが明確であり、BMSとしては共同歩調をとるのは不可能である8

このようにインドの労働(組合)運動、労働戦線はたえず政治の動向に影響を受けている。しかし今日の状況はそれだけでなく、政治と絡み合いながら、労働における民主主義(=産業民主主義)が損なわれつつあることも示唆される状況にある。それは次のような動向である。

まず、今日のナショナルセンター/中央労働組合組織(CTUO)の認定は、2002年末日を基準日とする第3回CTUO規模調査の結果を受けたものである。本調査で最大のCTUOに認定されたのがBMSである。その後CTUOの認定を更新すべく、2011年末日を基準日とする第4回CTUO規模調査が実施されたが、その調査結果は2013年3月末の届け出締め切りから6年たった今日も公表されていない。

政府は集計に時間がかかっているという以外、第4回調査の結果未発表の理由を明らかにしていない。しかしその理由としておそらく間違いないのが、第4回調査によって最大のCTUOに認定されるのがBMSではなく、国民会議派の系列下にあるINTUCである可能性が極めて大きいことである。2013年4月7日付Business Standardによると、第4回調査での届け出ベースで最大の組合員規模を誇るのはINTUCで3,330万人、以下、BMSの1,710万人、AITUCの1,420万人、HMSの910万人、CITUの570万人と続く。INTUCは組合員数の捕捉精度の悪さで知られるが(太田 2009)、それでも規模調査が行われた2011年当時の連邦政府は国民会議派を中心とする統一進歩連合(UPA)政権で、マハトマ・ガンディー全国農村雇用保証計画(MGNREGS)などの貧困対策・福祉政策を実現したことにより、(調査時点では)国民から大きな支持を集めていた。したがって第4回CTUO規模調査で国民会議派の系列下にあるINTUCが最大の組合員数を誇ったとしても、何ら不思議はない。

その後、連邦政府によるINTUCへの攻撃、結果として産業民主主義を損なうような動きが続く。CTUOの認定は、連邦や州の政労使の三者構成会議および労使の二者構成会議への参加資格に直結し、また国際労働機関(ILO)の労働者側代表の選出にもかかわる。国内の三者構成会議は国の労働政策や労働改革について広く議論される場であり、その最大かつ最重要のものが連邦レベルのインド労働会議(ILC)である。このILCは2015年7月の第46回会議を最後に開催されていない。それは2018年2月に予定されていた第47回ILCへのINTUCの参加を政府が認めず、これにBMS以外のCTUOが抗議し、また政府の労働市場改革の進め方に疑義を唱えて収拾のつかない状況になり、政府が開催延期としたためである9

政府がINTUCの参加を認めなかったのは、その「リーダーシップを巡る内紛」にある。INTUCは2000年以降、それ以前から長きにわたって会長を務めるサンジーヴァ・レッディー氏に反対するグループが、執行部を新しく選出した旨の発表をするなどの内紛が報じられている。2017年2月に政府は、内紛を解決するまでの間、INTUCの三者構成会議への参加を禁止した10。レッディー氏を中心とするINTUC主流派は、内紛など存在しないと反発している。

直近の動きとして、政府は2019年に入り、1926年労働組合法の改正を通じて、三者構成会議への労働者代表の選出手続きを定める旨閣議決定し、1月8日に連邦下院議会に同法の改正法案を上程した。本法案の内容は、現行法が労働組合の承認について規定していないところ、(連邦、州)政府は三者構成会議への労働者代表である労働組合の承認に関する規定を(任意に)定めることができるとするものである。これに対しては、BMSを除く労働組合のナショナルセンターだけでなく、国民会議派やインド共産党(マルクス主義)(CPI[M])も猛烈に異議を唱えている 11

産業民主主義は回復されるか?

こうして迎えるのが、2019年4~5月に投票が行われる今回の連邦下院選挙である。小稿では年初の大規模ストライキを中心にインドの労働運動のいまを概観し、また現政権の野党側陣営の労働組合に対するスタンス(CTUOの認定更新の先延ばし、三者構成会議であるILCの未開催など)から、労働の領域における民主主義=産業民主主義の後退がみられることを確認した。この状況は打破されるのだろうか。  

選挙によって政権交代が実現すれば、第4回CTUO規模調査の結果公表など、状況の改善が見込まれる。主要ナショナルセンターが大規模ストライキをはじめとする運動に大きなエネルギーを注ぐのは、まさにその実現と産業民主主義の回復に向けてである。政権交代が実現しなくても、選挙でのBJPの勝ち方/負け方によっては、野党系列下の労働組合への一定の配慮がこれまでより期待できるかもしれない。BJPが前回の2014年の総選挙のように大勝するなら、現状のままである可能性は大きい。5月23日にも結論が出る選挙をまずは見守ろう。

著者プロフィール

太田仁志(おおたひとし)。アジア経済研究所地域研究センター南アジア研究グループ。専門は労働経済、雇用・労使関係、人的資源管理、社会保障。おもな著作に、『インドの公共サービス』(共編著)アジア経済研究所(2017年)、「新政権の社会保障・福祉および労働政策」(近藤則夫編『インドの第16次連邦下院選挙』アジア経済研究所(2015年)など。

参考文献
  • Agarwala, Rina 2013. Informal Labor, Formal Politics and Dignified Discontent in India, Cambridge: Cambridge University Press.
  • Shyam Sundar, KR 2019. "Dynamics of General Strikes in India," Economic and Political Weekly, 54(3): 22-24.
  • Sinha, Pravin 2018. "Indian Unions Joins to Seek Inclusive and Humane Economic Growth", presentation in the 18th International Labour and Employment Relations Association (ILERA) World Congress in Seoul, South Korea(July 23-27, 2018).
  • 太田仁志 2009. 「組織化趨勢でみる労働組合の代表制と労働運動の動態」近藤則夫編『インド民主主義体制のゆくえ:挑戦と変容』アジア経済研究所 81-121.
  • 太田仁志 2011. 「中央労働組合組織の組織化動向とゆくえ」『アジ研ワールド・トレンド』No. 194、アジア経済研究所 8-13.
  • The Hindu(インド日刊紙)
  • Business Line(インド日刊紙)
写真の出典
  • 写真1 ストライキに参加する労働者:Centre of Indian Trade Unions [citucentre.org]
  1. ストライキを主導したのは、BEST労働者組合(BWU)など複数の組合が構成するBEST労働者共同行動委員会(BSKKS)である。その主な要求は、損失計上が常態で巨額の負債も抱えるBESTの執行予算をグレイター・ムンバイ行政自治体(BMC)の基礎予算と一体化させること、2016年5月に要求を出した新賃金協定の締結協議を行うこと、2007年以降に採用された1万3,500人の従業員の賃金表をそれ以前に採用された従業員と同じものとすること、の3つである。ボンベイ高等裁判所の最後通告を受ける形でBSKKSは、政府が暫定措置として提示した2007年以降採用者への段階的昇給と、他の要求に関する協議の調停者として元アラハバード高等裁判所長官の任命を勝ち取り、9日間のストライキを終結させた。以下を参照: The Hindu 2019年1月7~15、17、18日付記事(掲載日当日閲覧)、Times of India 2019年1月10日付記事、およびBusiness Today 2019年1月16日付記事
  2. JACTO-GEOは2017年9月にもストライキを実施しており、政府の問題解決の取組みに進捗がみられないことが今回のストライキにつながっている。今回のストライキの主な要求は、現行の確定拠出型の新年金制度(NPS)の適用をやめて元の確定給付年金に戻すこと、任期付き教員と正規教員の賃金を等しくすること、給与委員会勧告に基づく労働者に不利な新しい賃金表の改正と不足分である21カ月分の給与を支払うこと、などである。これに対して政府は、州の財政難のため受け入れられないとの立場である。結局、ストライキ参加教員が臨時教員の採用にともなう解雇を恐れてストライキは終結したが、本ストライキでJACTO-GEOは実質的には何も勝ち取っていない。以下を参照: The Hindu 2019年1月22~31日付記事(掲載日当日閲覧)および労働運動家のブログThozhilalar koodam 2019年1月29日付記事
  3. 本ストライキの最大の要求は、現政権が進める防衛兵器製造産業の民間企業へのアウトソーシングや外国直接投資(FDI)の導入を止めさせることである。また適用される年金制度について、現行のNPSから以前の確定給付年金への復帰も求めている。連邦政権与党側のBPMSの参加はストライキ参加労働者の士気を高めたとされ、また次の行動につながる一定の成果を上げたと労働組合は評価している。以下を参照: The Hindu 2019年1月24、28日付およびBusiness Line 1月24日付記事(掲載日当日閲覧)。なお産業別組合の他の2つは、全インド防衛産業従業員連盟(AIDEF、国民会議派系労働組合のINTUC傘下)と、インド全国防衛産業労働者連盟(INDWF、インド共産党(マルクス主義)(CPI[M])系のCITUと協力関係にある)である。
  4. インドでは中央労働組合組織(CTUO。単にCTU[中央労働組合]と表記されることもある)が労働組合のナショナルセンターに相当する。ただしCTUOのうち、2002年時点で「ナショナル」な規模や展開をみせるのは上位5組織までである(太田 2011)。
  5. インド労働組合センター(CITU)のウェブページを参照。
  6. とくに(7)公企業の政府持ち株売却と(12)FDI受け入れに関する要求の適否は、意見が分かれると考えられる。
  7. たとえば(3)からは、インドでは労働法の履行が緩くまた労働法違反が厳しく取り締まわれていないことを、また(4)からは、全労働者をカバーする普遍主義的な社会保障がインドにはないことをうかがい知ることができる。
  8. BMSはこの大規模ストライキを主導するナショナルセンターのグループに対抗し、「中央労働組合連合」(CONCEPT)なる名称の別グループの結成を2018年12月に発表している。CONCEPTの結成は、本ストライキやこれに連なる一連の動きが持つ政治色を排除することを目的とするというが、茶番である印象は否めない。ただし相対的にではあるが、もともとBMSは政党政治から距離を置こうとする姿勢が、INTUCや左翼系労働組合よりも強い点を補足しておく。
  9. BMSも同じく労働市場改革の進め方と、その直前に発表された2018年度予算案で自らの要求が反映されていないことを不満として、ILCのボイコットを示唆している(Sinha 2018)。
  10. The Hindu2017年2月17日付記事
  11. The Hindu2019年1月8日付記事および PRS Legislative Researchによる記事