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マレーシア:プロトンはどこに向かおうとしているのか?

PDF版ダウンロードページ:http://hdl.handle.net/2344/00049616

 中川 利香

2007年7月

マレーシアの国産自動車メーカー・プロトンが深刻な販売不振に陥っている。国内の新車販売台数が減少傾向にあるなかで、昨年の新車販売実績は後発メーカーのプロドゥアを下回った。マハティール前首相の「夢」を乗せた国民車は迷走を続けている。

そんな状況を立て直そうと、プロトンは外資との提携を模索している。もともとプロトンは三菱自動車と提携関係にあったが、2004年3月に終了した。それ以来、外資の提携先としてGM大宇、ローバー、フォルクスワーゲン(VW)、プジョーなどと交渉を行ってきた。GM米本社もプロトンとの提携に興味を示した。当初、政府は今年3月までに提携先を決定するとしていたが、その期限を過ぎても提携先は決まらなかった。

6月1日、政府は提携先を3ヶ月後に決定すると期限の延長を発表した。現在残っているのはVWとGMの2社しかない。6月に入って再開させたVWとの交渉も既に3回行ったが、進展があったのか否かは明らかにされていない。政府は「状況が悪ければ1回目の交渉で終わっているはず。3回目に入ったということは、交渉が進展している証拠」と強気だ。しかしその一方で、「GMとの交渉を完全に終わらせたわけではない」とも述べており、VWとGMのどちらが有力かは依然として曖昧なままである。

プロトンの迷走は生産部門だけでなく、ディーラーにも影響を与えている。「早く提携先を決めてもらわないと困る」と言っているディーラーも苦しい台所事情は同じだ。今年1月にはディーラーの改革案が浮上した。当初、持ち株会社のプロトン・ホールディングスは及び腰だったが、4月にはディーラーを20%縮小することが決定。ディーラー協会は、政府とプロトンの販売子会社Proton Edarに対し、損失を被ったディーラーの建て直しに財政支援をするべきだと主張し始めた。

プロトンの提携先の決定がここまで長期化しているひとつの理由として、関係者の利害が複雑に絡み合っていることが考えられる。製造部門と販売部門の管轄省庁が異なるうえ、下請けの中小企業の問題はブミプトラ企業家育成という国の政策の根幹に関わる部分でもある。交渉では、こうしたプロトン側の事情に外資側の利害も関係してくる。

次の期限は9月末。2007年3月期決算で最終損失が5.9億リンギ、という交渉中の政府とプロトンにはあまり嬉しくないニュースが報じられた。政府は2004年から続いているこの問題に終止符を打てるのだろうか。