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開催報告
国際シンポジウム「アジア太平洋における脱炭素開発のトリレンマ:環境・経済・公正性の統合的解決に向けた政策対話」
ジェトロ・アジア経済研究所は、2026年8月10日に、台湾亜州交流基金会(TAEF)、東京大学東洋文化研究所(東文研)と、国際シンポジウム「アジア太平洋における脱炭素開発のトリレンマ:環境・経済・公正性の統合的解決に向けた政策対話」を共催しました。このページでは、シンポジウムで交わされた議論の概要を公開しています。ぜひご覧ください。
国際シンポジウムの概要
開催日時:2026年8月10日(月)13:30~17:35
会場:東京大学東洋文化研究所 303大会議室(3階)
主催:アジア経済研究所 台湾亜州交流基金会(TAEF) 東京大学東洋文化研究所(東文研)
プログラム
(敬称略)
| 時間 | 内容 |
|---|---|
| モデレーター 楊 昊 氏(台湾亜州交流基金会 事務局長) | |
| 13:30~13:40 |
開会挨拶
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| 13:40~13:50 |
趣旨説明・内容紹介
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| 13:50~14:10 |
基調講演①「マレーシアにおける脱炭素化と産業発展の両立」
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| 14:10~14:30 |
基調講演②「台湾における脱炭素政策と民主的ガバナンス」
|
| 14:30~14:50 |
基調講演③「インドネシアにおける脱炭素開発とトリレンマ」
|
| 14:50~15:20 |
パネルディスカッション・Q&A
モデレーター
パネリスト
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| 15:20~15:40 | コーヒーブレーク |
| モデレーター 鄭 方婷(アジア経済研究所 新領域研究センター 主任研究員) | |
| 15:40~16:00 |
報告①「マレーシア・サラワク州におけるグリーンインフラと脱炭素技術の展開」
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| 16:00~16:20 |
報告②「脱炭素化と社会変革:台湾における社会的対応と受容」
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| 16:20~16:40 |
報告③「グローバルサウスにおける脱炭素と経済発展:企業行動と国際ビジネスの視点」
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| 16:40~17:10 |
パネルディスカッション
モデレーター
パネリスト
|
| 17:10~17:30 |
Q&A
モデレーター
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| 17:30~17:35 |
閉会挨拶
|
会合の主旨
各国・地域は、気候変動対策を強化する一方、安定的かつ安価なエネルギー供給、産業競争力と雇用の維持、エネルギーアクセスの公平性、地域社会による受容、地政学的リスクやサプライチェーンの強靱性といった複数の課題に直面している。とりわけ、ロシアによるウクライナ侵攻、中東情勢の緊迫化、AIデータセンター・半導体産業の急成長は、脱炭素化とエネルギー安全保障を切り離して考えることを困難にしている。
こうした状況を踏まえ、本会合は、アジア太平洋地域における脱炭素化を、単なる技術転換や温室効果ガス削減の問題としてではなく、環境保全、経済成長、社会的公正を同時に追求する際に生じる「トリレンマ」として捉え、その政策的解決の方向性を検討することを目的として開催された。グローバルサウス諸国のうちマレーシアやインドネシアのように資源を有する国と日本や台湾のようにエネルギー輸入への依存度が高い国・地域の事例に関する基調講演と報告、パネルディスカッションおよび質疑応答を通じて、制度・技術・産業・社会の各側面を横断する議論が行われた。
司会を務める鄭主任研究員©IDE-JETRO
木村所長の開会挨拶©IDE-JETRO
蕭会長の開会挨拶©IDE-JETRO
園田特任教授の開会挨拶©IDE-JETRO
議論の概要
シンポジウム前半では、グローバルサウス諸国(マレーシア、インドネシア)および台湾の事例を中心に、脱炭素化を進めるうえでのエネルギー安全保障、経済発展、社会的公正の関係について議論が行われた。
まずマレーシアにおける経済成長と産業競争力を維持しながら脱炭素化を進める取り組みに関する基調講演が行われた。サラワク州ビントゥルでは、エネルギー集約型産業が集積する産業クラスターを単位として脱炭素化を推進する試みが進められていることが紹介された。他方、資金調達、人材育成、技術の現地化など、実施段階における多くの課題が指摘された。大企業は追加的な負担を通じてクリーン電力を利用できる一方、中小企業には同様の選択肢が限られていることや、州内には依然として十分な電力アクセスを確保できていない地域が存在することから、脱炭素化と社会的公正をいかに両立させるかが重要な論点として提起された。
台湾に関する基調講演では、脱炭素政策を推進するうえでの民主的ガバナンスや社会的受容が主なテーマとなった。脱炭素技術に対する支持と、関連施設の立地受容との間にみられるギャップや、エネルギー安全保障をめぐる認識が政策選択に与える影響などが論じられた。
インドネシアに関する基調講演では、石炭をはじめとする既存産業との関係に加え、脱炭素政策が土地利用や森林、地域社会に及ぼす影響について報告が行われた。さらに、再生可能エネルギーや蓄電池の普及に伴って重要鉱物の確保が新たな課題となるなか、気候・エネルギー政策を技術開発や資源確保、土地利用を含むより広い視点から分析する必要性が提起された。
これらの報告を受けて、パネルディスカッションでは、グローバルサウスをはじめとする各国・地域の資源条件や経済発展段階の違いを踏まえながら、脱炭素化とエネルギー安全保障の両立に向けてどのような政策選択が可能かについて議論が行われた。
後半では、マレーシア、台湾、日本を中心に、脱炭素化を実際に進める際の技術、社会、産業の側面について報告と議論が行われた。
マレーシア・サラワク州に関する報告では、グリーンインフラと脱炭素技術の展開が取り上げられた。前半で議論された産業政策とも関連し、脱炭素化の実現には新たな技術の導入だけでなく、それを支えるインフラ整備、人材育成、資金調達の仕組みの構築が不可欠であることが強調された。また、政府、企業、大学など多様な主体の連携が重要な課題であることも指摘された。
台湾に関する報告では、脱炭素化に対する社会的対応と受容が主なテーマとなった。再生可能エネルギーをはじめとする脱炭素技術に対しては社会全体として一定の支持がみられる一方、自らの居住地域への発電施設の立地には反対する傾向もみられ、政策への一般的な支持と個別施設の受容が必ずしも一致しない実態が報告された。また、近年は原子力発電に対する支持にも変化がみられ、中国との関係を含む安全保障上の懸念や電力供給への不安が、人々のエネルギー選択に影響を与えている可能性が指摘された。これらの議論を通じて、脱炭素化は技術や経済性のみならず、地域住民とのコミュニケーションや社会的合意形成を伴う社会的課題でもあることが示された。
日本を含む国際的な観点からは、脱炭素化と経済発展の関係を政策だけでなく企業行動の側面から捉える必要性が論じられた。特に、AIデータセンター、半導体産業の拡大に伴って電力需要が増加するなか、脱炭素化を進めながら産業競争力と安定的なエネルギー供給をいかに両立させるかが重要な課題として提起された。また、企業の脱炭素化は国内政策に加え、グローバル・サプライチェーンや国際的な環境規制によっても影響を受けることから、各国の政策動向と企業レベルの対応を一体的に検討する必要性が指摘された。
これらの報告を受けて行われたパネルディスカッションと質疑応答では、共通する論点について活発な議論が交わされた。特に、エネルギー安全保障と脱炭素化を対立する目標としてではなく、相互に補完しながら同時に追求すべき課題として捉える必要性が確認された。また、その過程で生じる費用と便益を社会のなかでどのように配分するか、さらには地域社会の理解と受容をいかに確保するかが重要な政策課題として共有された。
加えて、日本や台湾のようにエネルギー輸入への依存度が高い国・地域と、グローバルサウスのマレーシアやインドネシアのように資源を有する国とでは置かれた条件は異なるものの、産業発展、安定的なエネルギー供給、脱炭素化、社会的公正をいかに両立させるかという課題は共通しているとの認識が示された。閉会にあたっては、各国・地域の経験を比較しながら共同研究と政策対話を継続し、アジア太平洋地域における現実的かつ公正なエネルギー転換のあり方を探求していくことの重要性が改めて確認された。
議論の様子1©IDE-JETRO
議論の様子2©IDE-JETRO
お問い合わせ先
ジェトロ・アジア経済研究所 研究推進部 研究事業開発課 (担当:中村(敏久)、鈴木)
Tel: 043-299-9667 Fax: 043-299-9731
E-mail: R_promo2