Oi! do ブラジル—リオデジャネイロから徒然なるままに 2005年11月

ブラジル現地報告

ブラジル

海外派遣員 近田 亮平

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2005年11月
今月の独り言— CariocaにとってのPraia

日本の約23倍もの国土を持つブラジルは、地域ごとに異なる歴史や文化、社会が存在し、"regionalismo"と呼ばれる地域主義色が強い国である。そして、それぞれの地域の出身者には、その地域性を想起させるような独自の呼称がある。例えば、「勤勉だが少し面白みに欠ける」サンパウロ州出身の人は"paulista"、「陽気だがかなりのんびり屋の」北東部出身の人は"nordestino"、「生真面目で少し閉鎖的な」南リオグランデ州の人は"gaucho"、「物静かで純朴な田舎者」のミナス・ジェライス州出身者は"mineiro"、などなど。そして、リオの場合、リオ州としては"fluminense"であるが、リオ市(ムニシピオ)出身者を指す"carioca"が、「明るく人懐こいが、いい加減なところがあって狡賢い」リオの人々に対する呼称の代名詞となっている。このcariocaのイメージは、日本人が一般的な"ブラジル人"に対して抱くものにかなり近いと言えるかもしれない。

そして、彼らcariocaの特徴を象徴し、彼らの生活にとって必要不可欠なものが、リオ市内をはじめいたる所に存在する"praia"(日本語で「ビーチ、海岸、砂浜」)である。ただし、cariocaにとってpraiaは単なる「ビーチ」ではなく、それ以上の特別な意味を持っている。たとえ曇っていてもpraiaに少しでも陽が射せば、cariocaは老若男女問わずにpraiaに行き、そこで集い、語らい、スポーツなどの娯楽を楽しみ、時を過ごす。天気のいい週末ともなれば、どこのpraiaも人、人、人だらけである。確かに日本でも、夏には多くの人が海に行って遊んだり体を陽に焼いたりする。しかし、社会階層間の格差が大きいブラジルにおいて、誰にもアクセスが可能なpraiaがすぐそばにあるリオでは、praiaは他の階層の人とも時空を共有できる空間であり、一種の"社交場""憩いの場""公園・広場"のような存在であるとされる。そして、あらゆる階層の人々に開放されているpraiaが、cariocaのより開放的で人懐こいという特徴を形成するのだと言われている。

このような話を聞いたことのある人は多いであろうし、実際、サンパウロなどのようなpraiaがない都市では、人々にとっての公共領域は、全ての階層にアクセスが可能ではないショッピング・センターなどの閉ざされた空間がメインとなっている。したがって、praiaがあるリオでは、異なる社会階層に属する人々の交流が、より容易であるということは決して間違いではないであろう。しかし、今回、私が感じたことはこれとは少し異なる。

私が感じたこととは、praiaにおける社会階層間の交流は言われているほど活発ではないのでは、ということである。多くのcariocaは自分がいつも行くpraiaが決まっていて、praiaで知り合う人々も自分と似通った社会階層の人が多いように思えるのである。もちろん全てのcariocaがpraiaに頻繁に行くわけではないが、praiaによく行くcariocaは"通う"といってもいいほど頻繁にpraiaに行く。このようなcariocaの中で、例えば、一大観光地でイベントや施設が多くあるCopacabanaのpraiaに行くのは若者や観光客(cariocaではないが)、あとは同地区に多く住むといわれる年配の女性とその友人たちが多く。高級住宅地区といわれるIpanemaやLeblonのpraiaに行くのは、社会階層の高い人たち。延々と広がる美しいpraiaではあるが、公共交通手段のアクセスが悪い高級住宅地区Barraのpraiaに行くのは、やはり同地区の住民や私的な交通手段を持っている比較的社会階層が上の人たち。そして、決して海の水はきれいではないが、交通アクセスの良いFlamengoやBotafogoのpraiaに行くのは、同地区の住民に多い中間階層の人々に加え、総じて貧困層が多いといわれるリオ北部の人たち。つまり、特定のあるpraiaに通うリピーターは同じ階層の人が多いように思われるのである。

そして、その特定の通い詰めているpraiaで、cariocaたちは仲の良い友人や家族、つまり同じ階層の人たちと時間や行動を共にすることが多い。偶然、praiaで友人や知り合いに出会うことも多いであろうし、praiaで新たな交流の輪が広がることもあるであろう。しかし、それらの偶然や新たな出会いも、やはり同じ階層に属している人たちだからこそ起こり得ることのように思える。少なくとも、私のアパートがあり、比較的社会階層の高い人たちが住むリオ南部のpraiaには、同じ階層に属していそうなcariocaが多く集まっているし、彼らが自分とは異なる階層の人と親交を深めているという場面には、今までほとんど遭遇したことがない。ただ、同じ社会階層だと思われる人同士は、非常に楽しそうに会話をしたりスポーツをしたりして、praiaでのひとときを満喫しているようではあるが。

もちろん、この"私の感じたこと"は、綿密な参与観察にもとづいたものでは全くなく、単に私がpraiaで周りにいる人々を眺めていて気づいたこと、つまり、一つの個人的かつ印象的な"仮説"でしかない。あえて「徒然なる今月のひとり言」としての結論をまとめるとするなら、"想像のcarioca"が異なるpraiaを舞台に作り上げられているかもしれない街リオは、これから夏本番を迎える、ということであろうか。

今月のブラジル
経済

GDP:2005年第3四半期のGDP(暫定値)が発表され、市場の予想を大幅に下回る前期比▲1.2%のマイナス成長となった。この要因としては、前期好調だった固定資本形成が4.7%→▲0.9%、政府消費支出も0.9%→▲0.4%と大きく減少してマイナスに転じたことが挙げられる(グラフ1)。部門別では、農業が1.7%→▲3.4%、工業が1.4%→▲1.2%と前期比大幅に減少したことが大きく影響した(グラフ2)。

グラフ1 2005年 第3四半期GDP:前期比の内訳別推移

グラフ1 2005年 第3四半期GDP:前期比の内訳別推移
(出所)IBGE

グラフ2 第3四半期GDP:前期比の部門別推移

グラフ2 第3四半期GDP:前期比の部門別推移
(出所)IBGE

また、第3四半期GDPは前年同期比でも1.0%の低い成長率となった。これは固定資本形成が4.0%→▲2.1%と大幅なマイナスを記録したこと、部門別には農業が3.2%→▲1.9%とマイナス成長、工業が5.5%→0.4%と低調だったことが主な要因である。更に、年初からの累計は2.6%で昨年同期の5.0%を大きく下回る結果となった。今年に入り輸出入は総額が今までの記録を更新するなど好調であるが、昨年は10%を超えていた固定資本形成が今年は常に低調であることが大きな要因となっている(Q1:2.3%→Q2:3.1%→Q3:1.2%)。また、農業をはじめとする各部門の成長が昨年に比べ低調であることも大きく影響した(グラフ3)。

グラフ3 四半期GDP年初累計の推移:2004年第3四半期~

グラフ3 四半期GDP年初累計の推移:2004年第3四半期~
(出所)IBGE

なお、2003年のルーラ政権誕生以降の前期及び前年同期比四半期GDPの推移をまとめたのがグラフ4である。今回の2005年第3四半期GDPの数値が、今までのトレンドとは大きく異なるものであることがわかる。

グラフ4 四半期GDPの前期比及び前年同期比の推移:2003年~

グラフ4 四半期GDPの前期比及び前年同期比の推移:2003年~
(出所)IBGE

今回発表された2005年第3四半期GDPの結果に対し、市場はネガティヴな反応を示した。為替相場は一時的にドル高レアル安に振れ、好調だった株式市場も一旦下落することとなった。しかし、市場関係者の間では、今回の結果はブラジル経済が景気の調整局面である踊り場に入ったことを示すもので、2006年には更なる経済成長が期待できるとの楽観的な見方もされている。

貿易収支:11月の貿易収支は、輸出額が前月比9.0%増加して再びU$100億を回復し、11月としては過去最高となるU$107.9億(前年同月比32.2%増)を記録した。輸入額も最近のレアル高の影響もあり、11月としては過去最高のU$67億(前月比7.8%、前年同月比10.1%増)となった。この結果、貿易収支の黒字額は前月比11.0%増、前年同月比では97.0%の大幅増のU$40.9億となった。

また、今年の年初からの合計では、輸出額が史上初めてUS$1,000億を超えるUS$1,074.12億(前年同期比23.1%増)を記録し、輸入額はUS$669.79億(前年同期比17.2%増)、同貿易黒字額はUS$363.5億(前年同期比34.1%増)となった。なお、これらの数値はいずれも過去最高であった昨年を上回るものである。

物価:発表された10月のIPCA(広範囲消費者物価指数)は、9月の数値0.35%の倍以上となる0.75%となった。今回のIPCAの上昇要因としては、9月に顕著であった世界的な原油高の影響を受けたガソリン価格の上昇(4.17%増)に加え、アルコール燃料の上昇(10.48%増)が挙げられている。そして、これらの燃料価格の上昇により、航空運賃(11.06%増)をはじめとする交通機関の運賃が引き上げられたこと(2.21%増)が大きく影響したとされる。また、最近デフレ傾向にあった主要食料品価格も、10月は0.27%の上昇を記録した。

この結果、年初からの累計値は昨年同月時点の5.95%を下回る4.73%となったものの、物価は徐々に上昇傾向にあるといえる。したがって、今年のIPCAは残すところあと2ヶ月分と僅かであるが、年初に設定したインフレ目標である5.1%の達成は微妙となってきた。

金利:今年のインフレ目標達成が視野に入ってきたこともあり、Selic金利(短期金利誘導目標)は3ヶ月連続で引き下げられ19.00%→18.50%となった。しかし、引き下げ幅が大半の市場関係者の予測と同じ0.50%ポイントであったため、市場へのインパクトはあまりなかった。

為替市場:先月、ドルの急激な下落傾向に一旦歯止めが掛かり、緩やかなドル安傾向に転じるかと思われた為替相場であるが、今月またドル安レアル高に振れることになった。9日にUS$1=R$2.2を割り込んだ後も更にこの傾向は続き、11日には2001年4月4日に次ぐドル安となるUS$1=R$2.1625(買値)までレアル高が進行した。その後、中央銀行の介入などもあり、多少ドルが値を戻す展開となるものの、カントリーリスクが23日には過去最低となる339まで低下したことも影響し、ドル安レアル高のまま今月の取引を終えた。

株式市場:今月のサンパウロ株式市場のBovespa指数は堅調に推移し、23日には史上最高値となる31,942ポイントを記録した。その後、市場の予想を下回る第3四半期GDPが発表され一時値を崩す場面も見られたが、逆に今後Selic金利が大幅に引き下げられるのではないかという期待感や発表された米国第3四半期GDPの数値が良かったことからなどから、32,000ポイントを目指す展開となった。

政治

米州首脳会議:今月4日と5日の2日間、アルゼンチンの保養地Mar del Plataで第4回米州首脳会議が開催され、キューバを除く34カ国の首脳が参加した。主な議題は、中断したままになっているFTAA(米州自由貿易地域)の交渉を再開するか否かであった。FTAAの早期再開に米国をはじめとする29カ国が賛成したものの、メルコスル4カ国にベネズエラを加えた5カ国がこれに反対したため、結局、最終的な合意に至らぬまま今回の会議は閉幕した。

また、米州首脳会議終了後、ブッシュ米大統領はブラジルを訪問し、ルーラ大統領と首脳会談を行った。2国間首脳会議では、主に米国の農業助成金削減交渉をはじめとする2国間の更なる貿易の自由化について話し合われた。米州首脳会議では他の加盟諸国との複雑な利害関係もあり、FTAA交渉で異なる立場を取った両国首脳であったが、相互ともに重要な貿易相手国であることから、共同記者会見ではお互いを称賛し合うなど全体として両国の良好な友好関係を強調するものとなった。

今回の米州首脳会議やブッシュ大統領のブラジル訪問に際しては、アルゼンチンとブラジルにおいて反米及び反ブッシュ大統領の大規模なデモが行われた。このような南米での反米デモや、米国主導で行われてきたFTAA交渉の難航化は、南北の米州大陸を一つにまとめることの難しさに加え、政治的には左派傾向にあるブラジルなどのメルコスル諸国や反米傾向を強めるチャベス大統領のベネズエラと、米国及びその影響下にある諸国との間の隔たりを印象付けるものになったといえる。

Palocci大蔵大臣の政治疑惑:Palocci大蔵大臣に関しては、今年8月、同氏がサンパウロ州Ribeirao Preto市の市長時代(1993-96年)に賄賂を受け取っていたという汚職疑惑が持ち上がっていた。しかし同汚職事件に加え、今月に入り、PalocciのRibeirao Preto市長時代の元補佐官が、Palocci大蔵大臣に関する新たな政治スキャンダルの告発を行った。それは、先月末に浮上した、2002年の大統領選挙の際にPT(労働者党)がキューバからR$300万(約U$136万)もの不正な選挙資金を受け取っていたとする疑惑事件とともに、同じ時期にR$100万(約U$45万)もの不正選挙資金をサンパウロの賭博業者から受領していたとする別の不正選挙資金疑惑に、Palocciが深く関与していたというものである。

しかし、告発はこれだけに留まらなかった。更に、複数のPalocciの元補佐官であるPT関係者がブラジリアで賃借していた大邸宅の月額R$1万(U$4,500)もする家賃の出所に関する疑惑、また、同様の人物たちがリオデジャネイロのある銀行の買収を計画した際、資金がアンゴラから送られてくる予定であったとする疑惑、そしてこれらの疑惑にPalocciが関与していた可能性についても告発がなされた。

このPalocci大蔵大臣の政治スキャンダルに関する告発を受け、同大臣の責任問題が取りざたされ、大蔵大臣の辞任を求める声が高まった。これに対しルーラ大統領は、好調なブラジル経済へのPalocci大臣の貢献を強調し、ルーラ政権が終わるまでPalocciが大蔵大臣職に留まる必要性を訴えるとともに、同大臣の留任を保証した。ルーラ大統領の全面的な支持を受け、現在のまでのところPalocciは幾度にもわたる疑惑追及のための国会での証言を乗り切り、依然として大蔵大臣職に留まっている。

しかし、国会での証言は今後もまだ継続される予定であり、Palocci大蔵大臣の立場は未だ必ずしも安泰ではない状況だといえる。そして更に、もし政治スキャンダルの全容が明らかとなり、その責任を取る形でPalocciが大蔵大臣を辞任することになれば、ブラジル経済にとってかなりのネガティヴな影響が出ることが予想されるだけでなく、PTを取り巻く汚職疑惑のかなりの部分が白日の下に晒されることを意味するため、大統領選挙を来年に控えたルーラ政権にとって致命的な打撃になることは間違いないといえよう。

Dirceuの議員権剥奪:自らの無実を主張し、ほぼ6週間にもわたり議員権剥奪の決議投票を延期させてきたDirceu元文民官が、今月30日ついに議員権を剥奪されることとなった。DirceuはJefferson元PTB(ブラジル労働党)党首に引き続き、今回の汚職事件で議員権を剥奪された2人目の下院議員となった。PT内で屈指の有力政治家の一人であり、ルーラ政権発足時から強大な権力を握ってきたDirceuであるが、2015年までの8年間の間、政治家としての活動を禁じられることとなった。政治家としての復帰が可能となる時にDirceuは70歳を向かえることになるため、実質的な政治家としての生命がほぼ絶たれることになったといえよう。

社会

貧困・不平等改善:今月発表された民間のヴァルガス財団(FGV)、及び政府のブラジル地理統計院(IBGE)の調査によると、ブラジルにおける貧困と不平等は改善方向にあるとされる。

ヴァルガス財団が発表した「削減傾向にある貧窮(Miséria em Queda)」と呼ばれる調査は、後述のIBGEの全国家計調査(PNAD)のデータをもとにしたもので、2004年におけるブラジルの貧困は1992年以降で最も低い数値を記録したとされる。貧困ライン以下で生活している人口の割合は、35.87%(1992年)→27.26%(2003年)→25.08%(2004年)と減少した。この貧困ラインとは、月額所得が一家族の最低限の食生活を可能とするR$115(US$1R$2.2)以下にある家族に属する人口と定義されている。「貧窮指数(Índice de Miséria)」は、所得格差の縮小を示しながら過去3年間で継続して低下したが、2004年には8%の低下を記録し、前年比で倍以上の改善となった。

ヴァルガス財団によると、インフレの安定、法定最低賃金の調整、新たな正規雇用創出をはじめとする労働市場の回復、政府による経済への適切な介入などがより公正な所得移転を伴った経済成長をもたらし、今回の貧困削減につながったとされる。また、「家族基金プログラム(Bolsa Família)」をはじめとする社会政策の実施、近年の教育レベルの向上なども重要な要因であるとしている。そして、現在の傾向を継続できれば、1990~2015年の間に貧困の50%削減を目指す国連の「ミレニアム開発目標」が達成可能であるとしている。なお、この調査はFGVのサイト( http://www3.fgv.br/ibrecps/queda_da_miseria/inicio_q.htm )からダウンロードすることができる。

また、IBGEの2004年の全国家計調査が発表され(概要は下記表参照)、所得格差の縮小をはじめ、ブラジル社会における不平等が是正されつつあるという結果が出た。この調査もIBGEのサイト( http://www.ibge.gov.br/ )からダウンロードすることができる。

表 IBGEの全国家計調査(2004年)の概要
所得 就業者の平均月額所得は、1997年以降続いていた減少傾向に歯止めがかかり、2003年と同額のR$733(約U$333)を記録。
下位50%の所得者層の実質所得は前年比3.2%増加。一方で、上位50%の所得者層の実質所得は0.6%減少。
労働 失業率は9.7%(前年)→9.0%へと低下。1993年以降初めて、失業者の絶対数が減少(▲421,711人)。
女性の就業者数が前年比150万人増加し、男性の数字(110万人増加)を上回る。ただし、女性の職種は非正規雇用(社会保障制度への加入を保証する「労働手帳」を持たないインフォーマル・セクター)が大半。また、失業率も女性の0.5%減少に対し男性は10%の減少。
児童労働(5~17歳)は1999年以降、継続して減少。男児:19.7%→14.7%、女児:10.5%→8.0%(前年比)。
生活状況 携帯電話の増加(28.8%)が寄与し、電話の普及率が9.2%増加。過去5年間で同数値は37.6%→66.1%増加。
下水道の普及率は前年比3.5%増加。過去5年間では64.7%→69.6%に増加。
上水道の普及率は前年比3.4%増加。過去5年間では79.8%→83.2%へ増加。
ゴミ収集サービスの普及率は前年比2.7%増加。過去5年間では80.0%→85.8%へ減少。
電気の普及率は前年比2.9%増加。過去5年間では94.8%→97.4%へ減少。
教育 過去5年間における5~17歳の児童の就学率が71.0%→91.8%に上昇。
過去5年間における10歳以上の文盲率は12.3%→10.4%へ低下。
過去5年間における20~24歳の平均就学年数は7.5年→8.8年に上昇。

(出所)IBGE

治安問題:今月28日の夜、相対的に貧困層の割合が高いとされるリオ北部にあるBras de Pina地区を走行中の市内バスが、13歳の少女を含む少なくとも7人からなる麻薬犯罪グループに襲撃された。その際、犯人グループが車内に火を放ったことからバスが炎上し、搭乗していた一般市民の乗客約30名のうち幼児を含む5名が死亡し、14名が全身火傷などの大怪我を負う事件が発生した。この事件は、同日夕方に麻薬犯罪グループのメンバーの1人が、軍警察によって殺害されたことに対する報復措置であったとされる。また、12月1日未明には、犯人グループの仲間と見られる男性4名の射殺死体が、リオ北部に放置された車の車内から発見された。

前項では、近年、ブラジルの貧困と不平等が改善されつつあるとの調査結果を紹介したが、今回の事件をはじめ、多くの凶悪な犯罪事件が主に貧困層居住地区で多発するという現実から、依然として同国にとって貧困が克服し難い深刻な問題だといわざるを得ないであろう。確かに貧困と治安という2つの問題は、明確なトレードオフの関係にあるわけではないが、少なくとも両者は相互に強く影響を及ぼし合う相関関係にあるといえる。


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