Oi! do ブラジル—リオデジャネイロから徒然なるままに 2005年5月 3カ月が経ち、少し落ち着いてきたような?
ブラジル現地報告
ブラジル
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▼ 2005年5月 経済 ▼ 2005年5月 政治 ▼ 2005年5月 社会
今月は、ようやく自宅に自分専用の電話回線敷設&ブロードバンド契約。家での仕事がかなり快適に。ただ、ブラジルのネット事情がよくわからないので、日系のIT関連会社に任せておいたのに、結局ほとんど全部自分でやる羽目に。ブラジルでは電話やブロードバンドの契約をする際、その内容や金額を説明したパンフレットもなければ契約書とかの文書もない(探せばあるのかもしれないけど)。契約はすべて電話にて口頭で説明を受けて行われることになっている。契約をした後に送られてくる支払書とかで初めて自分の契約内容が確認できるといった感じ。でもこれって、事情のわからない、特に俺のようなポルトガル語のネイティブではない外国人にとっては非常~に大変というか、自分がどういう契約をしようとしていて、それはどれくらいの値段がかかるのかがわからず、かなり不安。このことを電話会社の人に聞いてみたら、「そうなんですよね。私もそう思います。」とのこと・・・。ブラジルの人もそう思ってるんだったら何で変えようとしないのか、摩訶不思議である。
とはいえ、生活インフラがだいぶ整い、日常生活も落ち着いてきて、自分でも少し余裕が出てきたかなと思ってきた矢先。泥棒(置き引き)にやられる羽目に…。それは天気のいいある週末のこと。アパートの最寄りのビーチに一人で行き(リオっ子(carioca)にとって週末はやっぱりビーチ(praia)!)、あまりの気持ちのよさについうとうと・・・。気がつくとすぐ横に置いてあった荷物がないっ!不幸中の幸いで、貴重品はあまりなく、盗まれた物は携帯電話、アパート等の鍵、ちょっとお金の入った財布くらいで済む。ただ、自宅アパートのドアの鍵は取り替えることにした。私が住んでいる南部地区(zona sul)は比較的治安のいい方であるが、やっぱりここは「リオ」だったということを実感。
あと、6月1日にて大学院の第一学期(3ヶ月制)が終了。今月の後半は期末の試験やレポートがサンパウロやブラジリアへの出張と重なり、かなりバタ・・・。でもまあ何とかねじ伏せたという感じ(汗)。ただ、今学期の大学院での勉強を振り返ると、どうも授業内容が学びたかったこととはちょっと違うような・・・。統計学の大学院なのに、授業はなぜかポストモダン、リスク社会、グローバリゼーションなどなどといった理論がかなりのウェイトを占めてたりして・・・。面白くないわけではないし、もちろん興味のあることではある。しかし、久々のブラジル長期間滞在ということで、ブラジルの「現実」、またはそれを理解するための術(統計学)を学びたいと意気込んでいたところなので、こういった理論の学習にはどうもモチベーションが上がらない・・・。でも、文献読みやレポート作成(しかももちろんポルトガル語・・・)に時間と労力を費やさなければならず、結構大変(今月はレポート3つに試験1つ)。まだ始まったばかりなので、しばらく様子を見なければとは思っているが、せっかくブラジルにいるのに「現実」が見えない・・・と悩んでしまってたりするかも。
最後に、前述したブラジリアへの出張について少し。私が初めてブラジルの地を踏んでから、早10数年(?)が過ぎたが、実はブラジリアに行ったのは今回が初めて。私は都市のさまざまな構造に関心があり、ブラジリアに関する話や評判は以前からいろいろと聞いていたので、内陸部開発の象徴として造り上げられた人工都市、首都ブラジリアを以前からこの目で見たいと思っていた。で、率直な感想としては、「う~ん、住みたくない」であった・・・。正味2日間しか滞在できず、仕事で行ったのでブラジリア全体を見ることはできなかったので、これはあくまで個人的な第一印象なのだが、ブラジリアの中に私が関心を寄せる"社会"をあまり見出せなかったという点で、あまり居心地が良くなかったのかなぁと思ったりしている。私は"都市"って"人々"によって築き上げられ、その人々が住む"社会"が存在する場所であり、だから、都市という空間の主人公は、そこを築き上げた人々がうごめく"社会"だと思っているのだけれど、ブラジリアは"都市"自体が主人公になっちゃってるという印象を受けた。でも今後またブラジリアを訪れる機会があるだろうから、もうちょっといろいろと散策してみたいとは思っているが。
今月のブラジル 経済
Selic金利(短期金利誘導目標)は先月の19.50%から19.75%に0.25%ポイント引き上げられた。インフレは4月のIPCA(広範囲消費者物価指数)が0.87%で、1月0.58%、2月0.59%、3月0.61%を大幅に上回るものであり、昨年の7月(0.91%)以来の高い数値となった。しかし、この数値は昨年及び一昨年のペースを下回るものであり、最近の中央銀行の高金利政策が功を奏した結果であるといえよう。ただし、今月、最低賃金が1年ぶりに260レアルから300レアルへ引き上げられ、引き上げ幅も40レアルと昨年の20レアル(240→260)を上回る額であり、今後、物価への影響が出てくると思われる。また、為替相場は先月からのレアル高の傾向が更に強まり、5月30日には1ドル=2.37レアルを記録した。
5月の貿易収支は34.52億ドルの黒字を計上。内訳は輸出が98.19億ドル、輸入が63.67億ドル。黒字額は前月の38.76億ドルを下回ったものの、3ヶ月連続で30億ドルを超え、輸出及び輸出額はともに過去最高額を記録した。また、2005年第1四半期のGDPが発表され、前年同期比2.9%、前期比0.3%、過去1年間では4.6%の伸びとなった。最近の国際収支が好調である一方、GDPの数値があまり高くなかった原因の一つに、中央銀行の高金利政策の影響などで、前期比でFBCF(固定資本形成)が-3.0%、家計支出が-0.6%とマイナスになったことが挙げられる。また、産業別の内訳としては、農牧畜業が好調で(前期比+2.6%)、ともにマイナスとなった工業及びサービス業の穴を埋めるかたちとなった。
政治
今月は汚職疑惑が一気に噴出した月といえる。まずは地方レベルにおいて、マルタ前サンパウロ市長政権期の公共事業請負業者に関する汚職疑惑、リオの連邦下院議員の汚職による議員資格剥奪などが取りざたされた。しかし、最大の問題は連邦レベルにおいて、郵便局と連立与党のPTB(ブラジル労働党)を取り巻く汚職疑惑が噴出したことである。この汚職疑惑は連邦郵便局の要職にあるMarinhoとPTB党首Jeffersonの間での賄賂に関するものであり、PTBと連立与党を組むルーラPT(労働者党)政権にとって議会での政治運営を困難にするものであるが、それだけでなく、Jeffersonがルーラ政権の参謀官であるDirceu文官長をはじめとするPT関係者の関与もほのめかしており、PTはまたもや政治的危機に立たされることになった。現在はこの郵便局汚職疑惑を調査するためのCPI(議会調査委員会)の設置をめぐり、与野党入り混じっての政治攻防が繰り広げられている。
対外的な政治動向としては、まずアルゼンチンとの経済問題に端を発した関係の悪化が挙げられる。この問題は以前からしばしば取りざたされていることであるが、最近の好調なブラジルの輸出がアルゼンチンの経済回復の足かせとなっているというものである。問題収拾のためKitchnerアルゼンチン大統領がブラジルを来訪し、Lula大統領と会談。両国の経済関係の重要性を確認したものの、メルコスルのあり方にも影響を与えるこの問題は、今後も両国間でくすぶるものと思われる。
また、今月の半ばにブラジリアにおいて南米・アラブ諸国首脳会議が開催された。この会議は両地域の更なる経済や政治をはじめとする交流を深めていこうとするものであるが、ルーラ政権の途上国重視の外交戦略を、ブラジルがイニシアティブを取るかたちで他の南米諸国にも拡大し、南米におけるブラジルの政治力を強めようとする試みだともいえる。このような地域大国化を目指すブラジルの動きは、ブラジルと米国との関係を微妙にするものであるとの論調でワシントン・タイム誌が警告している。
さらに、今月末にはルーラ大統領は日本と韓国を公式に訪問した。中国訪問時の450人には及ばないものの、この外遊には約400人もの経済使節団を同行させており、近年の中国との経済関係偏重を指摘される中、日本と韓国との経済関係も重視するとの姿勢をアピールした。ただし、ブラジル側のマスコミなどの論調や経済界の意見は、中国との更なる関係重視が主流を占めているといえよう。
社会
2年に一度開かれる国際大書籍展「Bienal Internacional do Livro do Rio de Janeiro」が10日間にわたり開催された。入場者数開催毎に増加し、今年は過去最高の63万人もの人が訪れるとともに、入場者における若年層の増加がその特徴として挙げられた。このことは、ブラジルにおける読者層の量的及び世代的な広がりを表すものといえる。
また、今月の26日はキリスト聖体節(Corpus Christi)で祭日であり、各地でキリスト教の大規模なミサが行われた。その中で、サンパウロのパウリスタ大通りをプロテスタント系福音主義教会(evang?lico)がミサを行い、主催者側の発表では200万人もの人が参加したとされる。この大規模にミサから、近年のブラジルにおけるプロテスタント人口の増加、及びその勢力の拡大を理解することができる。また、その3日後の日曜日には同性愛者のパレードが行われ、同じく約200万人もの人が参加したとされる。このパレードは社会的マイノリティが社会における同等の権利を要求する社会運動と捉えることができ、年々増加する参加人数は、ブラジルにおける社会運動の高揚を表しているといえる。
今月の独り言—ブラジルって外見が大事!
ブラジルではとにかく外見が大事。多くの人が如何に自分を美しく、かっこよく見せるかにかなりの労力を使っている。その中でもカリオッカ(リオの人)は特におしゃれ。ファッションやエステなどの情報は、専門誌以外の雑誌などのマスコミでも頻繁に取り上げられ、外見を磨くため、結構みんなスポーツ・ジムに一生懸命通っている(もちろん、これらを実践できる人は主に中流階層以上の人ではあるが)。また、最近ではプチ整形手術が結構流行っていて、ブラジル人だけではなく、欧米諸国からわざわざブラジルにプチ整形を目的に来る人もいるとか。
この外見重視の傾向は、会社や商品、政府なんかにも当てはまるように思える。たとえば、インターネットのサイト。ネット上の広告や政策に関する情報は、画像やアニメーションなどデザインが非常に凝っていて、見ているとかなり面白いし、感心してしまうほど。また、商品のパッケージや書籍の表紙なんかも非常にビジュアル的に引き付けられるものが多い。あと、私が通っている大学院では、提出する数枚のレポートもみんなちゃ~んと表紙カバーをつけ、フォントを工夫し、中にはちょっとした製本のような形にして出す人もいたりする。
しかし、このような非常に魅力的な外見に比べ、実際の中身は"えっ??"と思えてしまうことが少なからずあったりする・・・。そう感じる時の例を挙げると、ネットや広告は素晴らしいのにサービスや設備が悪いホテルやレストランに行ったとき、丁寧にパッケージされた生鮮食品の中身が腐りかけているのを見つけたとき(結構ある)、CD-ROMまで用意されパンフレットなどで素晴らしく紹介されているのに現実はかなり違っている政策や施設のサイトを訪問したとき、などなど。
もちろん、すべてがそうだと言っているのではなく、外見も中身も素晴らしいっ!というケースもかなりある。ブラジルで"良い"とされるものは本当に洗練されているといえる(ただし、こういうものへのアクセスは主に一部の階層に限られているのであるが)。ただ、久しぶりにブラジルで"生活"していると、この"(まずは?)外見重視"がブラジルの文化や伝統、人々の意識の大きな一つの特徴なのだと実感する毎日である。でもまあ、私はこういうところも含めてブラジルは面白い国だと感じ、今まで付き合ってきているのであるが。
※最近の動向に関する情報は研究者個人の見解であり、あり得る過ちは全て執筆者個人に帰するもので、アジア経済研究所の見解を示したものではありません。また、これらの情報および写真画像の無断転載を一切禁止します。
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