国際産業連関 International Input-Output Analysis

世界に広がる産業の輪

産業連関表とは、レオンチェフというアメリカの経済学者が開発した統計表です。その表には、ある産業がどの産業からどれくらいの財やサービスを買って製品を生産し(列)、生産された製品がどの産業で、もしくは最終需要として使用されているか(行)という産業間の財・サービスの流れが具体的な金額とともに記載されています(図1参照)。この表を用いて分析することを産業連関分析といいます。



 

図1 産業連関表のイメージ


最近では経済のグローバル化とともに、産業間のつながりは国内のみならず海外へも広がっています。例えば自動車の生産を考えてみましょう。日本の自動車メーカーが国内で生産するにしても、その部品はひょっとしたら海外から調達しているかもしれません。たとえば、車体は韓国から、タイヤはタイから、など。さらにこれらの国々も、その部品を作るために必要な材料を外国から仕入れている可能性もあります。韓国製の車体へは中国製の鉄鋼を、タイ製のタイヤへはマレーシア製のゴムを、といった具合です。したがって図1の産業Aを国Aというように置き換えると、国間の産業取引を表した国際産業連関表ができることになります。私たちはアジアに焦点を絞って アジア国際産業連関表 を作成しています。

産業連関分析は、経済学の主要なテーマの分析ツールとして利用されてきました。全産業を同時に発展させるべきだというヌルクセの均整成長論に対し、ハーシュマンは先導的な産業部門から発展させるべきだという不均衡成長論を主張しました。この議論について、産業連関分析では主導産業の選定で貢献しました。輸入代替工業化や輸出指向型工業化の論争では、貿易と経済成長の関係の中で、アメリカは必ずしも資本集約型産業に比較優位をもたないというレオンチェフの逆説が産業連関分析から生まれましたし、貿易が経済成長にどのような影響を与えるかというところから要因分解分析が行われてきました。1980年代はミクロ経済学自体が下火になり、ツールとしての産業連関分析の魅力が失われてきましたが、1990年代以降の空間経済学の発展により、国と国の空間的相互依存関係を分析するツールとして国際産業連関分析が注目されるようになってきています。

猪俣 哲史 ・岡本信広)