猪俣 哲史
研究歴
産業間の繋がり具合を示す産業連関表という経済データがあります。アジア経済研究所は、かつて、アジア諸国と米国の産業連関表を連結した「アジア国際産業連関表」を作成していました。わたしは長年その作成事業に携わり、また、作成したデータによる経済分析、ことに、国際生産ネットワーク(「グローバル・バリューチェーン」とも呼ばれます)の構造変化について研究を行ってきました。
現在取り組んでいるテーマ
現在、とくに注目しているのはサプライチェーン脆弱性の問題です。国際生産分業の進展に伴い、サプライチェーンの効率的な編成が突き詰められた結果、生産拠点が一部の地域へ極度に集中するような状況が生み出されました。東日本大震災やタイの洪水、リーマン・ショック、サイバー攻撃など、モノの流れ、カネの流れ、情報の流れがネットワークの一点に集中し、そこが「急所」となって大きな被害へと繋がった事例がいくつも思い起こされます。そこで、サプライチェーンの国際編成に関するリスク分析とその地政学的な含意について、様々な分野の知見を取り込みながら研究を続けています。
関連するリンク
- 『グローバル・バリューチェーン――新・南北問題へのまなざし』日本経済新聞出版社、2019年7月刊行。毎日新聞社/アジア調査会主催「アジア・太平洋賞 特別賞」受賞、大平正芳記念財団主催「大平正芳記念賞」受賞。
- Inomata, S. ed. (2011) Asia beyond the Global Economic Crisis. Edward Elgar, Cheltenham.
【ウェビナー】
- 経済産業研究所(RIETI)BBLセミナー(2021年7月1日)「How will East Asia's Digital Transformation Change the Global Value Chain?」
- 経済産業研究所(RIETI)BBLセミナー(2020年6月3日)「ポスト・コロナ世界のグローバル・バリューチェーン」
【インタビュー記事】
- 「新型コロナを機にサプライチェーンの国内回帰は進むのか」(聞き手:櫻井俊氏、Wedge編集部)Wedge Infinity、2020年5月26日
- 「米中摩擦はサプライチェーンの頂点を巡る争いだ」(聞き手:竹居智久・日経ビジネス副編集長)日経ビジネス電子版、2020年2月5日
【論文・コラム】 (直近5年間、Working paper/内部報告書を除く)
- 『米中対立下のサプライチェーン・リスク』『Voice』3月号、2022年2月10日
- 「実証データがあぶり出す、グローバルサプライチェーンの「急所」」『日経ビジネス』電子版、2021年12月2日
- 「経済教室 サプライチェーンの行方(下)部分的分断、対立回避に益も」『日本経済新聞』2021年4月23日
- 「国内制度とグローバル・バリューチェーン」日本国際問題研究所研究レポート「経済・安全保障リンケージ」研究会第13号、2021年3月
- 「国際生産システムをみる「眼」の刷新を-グローバル・バリューチェーンとグローバル・サプライチェーン」『外交』第62号、2020年8月
- 「サプライチェーンの国内回帰は妥当か」『日本貿易会月報』第789号、2020年7月
- 「ポスト・コロナ世界におけるグローバル・バリューチェーンの再編:サプライチェーンの地域集中リスク分析」『国民経済雑誌』2021年1月
- 「経済教室 国際貿易体制の行方(中)制度に似た国同士で分業へ」『日本経済新聞』2020年7月14日
- 「生産の脱中国は本当か」『国際問題』第689号、2020年3月
- 「経済教室 米中貿易摩擦と供給網(下)生産の脱中国認定は拙速」『日本経済新聞』2020年1月24日
- 「国際生産分業と技術移転」『国際経済』第70巻、2019年10月