採用・募集情報

ライブラリアン・インタビュー

村田 遼平(2021年入所)

――仕事の内容、印象に残った経験を教えてください。

担当している地域は、中華圏です。ふだんは選書やレファレンス対応を行っています。また、2023年は国立国会図書館関西館と共催するアジア情報研修の講師を担当します。アジ研で働き始める前は現代中国の統計に詳しく目を通したことがなかったため、日々学びながら準備を進めています。

図書館運営に関する業務としては、主に資料収集を担当しています。具体的には、雑誌・新聞等の定期刊行物やデータベースを、国内の代理店経由で購読する仕事です。様々な代理店の担当者の方とやり取りをする中で書店ごとの特徴を知ることができること、また、自身の担当地域以外の地域において、どのような紙の資料が現在も継続的に刊行されているのかを知ることができることに面白さを感じています。

――ライブラリアンとして心がけていること、やりがい、モチベーション、むずかしさなどは何ですか。

すこし大きな話になりますが、研究所にある図書館のため、所属する研究者の方々の研究の基盤となりうるような図書館であることはもちろん、アジ研図書館はひろく一般に開かれていることから、開発途上国・地域に関心を持つ方々にとって有用な情報を得られる図書館でありたいと考えています。日々の仕事は小さなことから大きなことまで実に様々ですし、うまくいくことばかりではありませんが、上記のように、利用者の方が求める情報を得られる図書館を目指して仕事を行うことを心がけています。

榎本 翔(2018年入所)

――仕事の内容、印象に残った経験を教えてください。

システムライブラリアンとして図書館システムおよびデジタルアーカイブを担当しています。図書館システムは、利用者の方が本を探す時に用いる蔵書検索システムの他に利用者の情報や蔵書の書誌情報を管理する業務システムで構成されています。システム全般の管理に加えて保守業者との連携や仕様策定、入札業務等も扱っています。デジタルアーカイブ業務では図書館が持っている貴重資料のうち電子化したものをデータベース化しウェブで公開しています。

――ライブラリアンとして心がけていること、やりがい、モチベーション、むずかしさなどは何ですか。

専門分野の知識を更新しつつ、専門でない方への分かりやすいコミュニケーションが心がけていることであると同時に難しいことでもあります。システムの運用や仕様策定では情報システム特有の専門用語や仕組みの理解が必須です。技術発展の速度は早く常に学び続けないとシステムの老朽化やセキュリティの問題が生じます。一方で新しいシステムやサービスの導入では意義や操作方法を理解して頂くために、図書館内外の職員や保守業者、利用者に対して様々な方法で円滑なコミュニケーションを取る必要があり大変です。

今満 亨崇(2018年入所)

――仕事の内容、印象に残った経験を教えてください。

システムの担当です。図書館では、図書館業務システム(≒OPAC)、デジタルアーカイブディスカバリサービス機関リポジトリ研究所ウェブサイト、タスク管理システム(非公開)、を管理しています。他の職員と交代しながら、年度ごとに異なるシステムを担当しています。

普段はこれらシステムを日常的に使用して業務を行っています。機関リポジトリであれば、論文のデータをシステムに登録する、研究所ウェブサイトであれば所内からの更新希望を反映する、などです。また、館内からの問い合わせやトラブル報告に対応したり、システムの保守業者と機能改修の相談なども行っています。さらに、数年に1回はシステムの構築、保守に係る調達、つまり入札や関連する事務手続きを行っています。

直近の大きな仕事としては、2022年度に図書館業務システムのリニューアルがあり、発注時の仕様を全面的に見直しました。その結果として従来の約1/4までコストを削減できました。

――ライブラリアンとして心がけていること、やりがい、モチベーション、むずかしさなどは何ですか。

<心がけていること>
まずは幅広く「インプット」することです。図書館業界には、関連する大学や学会、業界団体が複数あり、様々な刊行物やイベント、講演会などが開催されています。これら公表された情報の内、実務に近いものを中心としながら、内容によっては専門的な情報も収集しています。さらに、システムの開発・利用に関連する情報も、折を見て収集しています。

また、働いていれば貴重な経験をしたり、新たな知見やノウハウを得たり、専門知識がより深まったりしますが、それらを「アウトプット」、つまり発表するようにしています。アジ研図書館がウェブサイトで公開している「ライブラリアンコラム」はそのための良い機会です。それだけでなく、業界団体の開催する研修の講師を引き受けたりもしています。

<やりがい、モチベーション>
人間の知的な営みとは、情報を集め、活用し、成果として残し、さらにそれを別の誰かが収集する、という無限に続くループがあるわけです。それを自分で実践したり、促進させることに、やりがいやモチベーションを感じています。

具体的に言えば、先に述べた「インプット」と「アウトプット」が自身での実践にあたります。促進については、図書館がまさにそのための社会的・組織的な装置でありますので、図書館サービスの維持・発展が該当します。

<むずかしさ>
業務を持続可能な状態とすることです。図書館、システム、いずれも専門性が高く狭い世界での仕事であり、人員の代替可能性が低いと感じています。例えばプログラムを書いて業務を省力化・高度化することはできますが、自分しかメンテナンスできない状態だと、いざというとき困ります。

新しいことをどこまでやるか、その取り組みはどうすれば定常運用できるか、の検討が必要です。

能勢 美紀(2015年入所)

――ライブラリアンの仕事の内容を教えてください。

アジ研のライブラリアンにはそれぞれ担当する地域があり、私は中東・北アフリカと中央アジアを担当しています。担当地域に関連する資料の選書・収集に携わるとともに、レファレンス(資料についてのお問い合わせ)にも対応しています。

――ライブラリアンとして心がけていること、やりがい、モチベーション、むずかしさなどは何ですか。

選書・収集とレファレンスの2つの仕事は、ライブラリアンとしてとてもやりがいのある仕事です。一方で、専門性が問われるため、現地の情勢や研究動向、資料事情などについての情報を日々アップデートするよう心掛けています。

選書・収集については、日本国内はもとより、欧米諸国、そして現地で刊行されている資料の選書・収集に携わることができることが、アジ研のライブラリアンならではの仕事です。特に現地で刊行される現地語の資料の選書・収集においては、現地の書店とのやり取りを含めて、自身の現地語の能力や専門知識を活かせる機会であり、日本では入手が難しい資料を購入できた時はとてもうれしいです。

またレファレンスについても、現地語でしか情報が得られない場合や現地語の情報の方が豊富である場合が多々あります。難しいお問い合わせの場合は時間もかかり、とても苦労しますが、資料についての知識と検索能力、そして地域についての知識を活かすことができるため、ライブラリアンとして大きなやりがいを感じます。

――どのような図書館にしたいか、それに向けてどう貢献していきたいかを教えてもらえますか。

すでに退職されたライブラリアンの方から、図書館の利用者が「こういった分野の研究がしたいな」と思ったときに、すでにアジ研図書館に研究に必要な資料が揃っているのが理想である、というお話を伺ったときのことが強く印象に残っています。日々の選書業務では、つい現在の研究動向や著名な研究者の論文・著作などに目が行きがちですが、興味深い論文や若手研究者、現地の研究事情などにも気を配り、「必要とされる資料・情報が常にある」図書館にしていきたいと思っています。ただ、物理的な資料を必ずしもすべてそろえる必要はなく、必要な資料がどこにあるのか、という情報をライブラリアンが把握し、利用者に提供できることが重要だと思います。アジ研図書館には、各地域・分野の専門的なライブラリアンがそろっており、彼らから日々学びながら多地域・多分野の資料情報を収集し、アジ研図書館に貢献したいと思います。

則竹 理人(2014年入所)

――現在どのような業務を担当されていますか?

図書館サービスの提供や、資料の保存に関する業務を担当しています。利用者の調べたい内容に適切な資料や情報を紹介したり、資料の探し方やアクセス方法を案内したり、資料の保存用品の調達や製本委託の計画を立てたりしています。同時に、ラテンアメリカ関連資料の担当として、同地域の政治・経済・社会に関する資料の選定や、同地域関連資料を中心としたスペイン語・ポルトガル語資料のテーマ分類、検索用キーワードの付与なども行っています。

――今後アジ研図書館で取り組んでみたいことは?

元職員等から資料の寄贈をいただくことがよくありますが、従来の図書館の方式では受入の難しい資料も含まれており(例:写真、文書)、その受入方法を確立するためのプロジェクトが進められています。電子化・オンライン化の潮流に対応する動きは他の図書館でも見られますが、それに限らず、研究に資するあらゆるコンテンツを提供できる図書館を目指したいです。

土佐 美菜実(2013年度入所)

――アジ研のライブラリアンになりたいと思った動機は?

学生時代にマレーシアをフィールドに研究をしており、卒業後もマレーシアをはじめとする東南アジア諸社会に関わる仕事に携わりたいと漠然と考えていました。ちょうどその時に指導教員の先生を通じてアジ研図書館を知り、私の漠然とした考えを具体化できるとても恵まれた環境だと感じ、ライブラリアンの募集に応募しました。

――いま担当している仕事は?

主に国内代理店を通じた雑誌・新聞の購入を担当しています。一口に代理店と言っても、それぞれ取り扱う資料の得意分野や地域性があり、購入に関わるやりとりのなかで各代理店の色を知ることができます。また、最近では雑誌・新聞の電子化も急速に進んでいるため、こうした購読媒体の変化に応じた図書館サービスの検討が課題となっていることを実感しています。また、アジ研図書館職員はそれぞれ担当地域を持っているのですが、私の場合は東南アジア島嶼部を担当しており、当該地域の蔵書構築にも携わっています。また、東南アジア島嶼部に関する社会事情やアジ研内外での研究動向を把握するため、定期的にアジ研研究者と交流を図ることで、少しずつではありますが日々勉強しています。

――これまでの仕事で印象に残った経験は?

入所1年目の秋に研修の一環としてアジ研研究者・図書館職員の引率のもと、インドネシアへ行ったことがやはり一番印象に残っています。隣国マレーシアへの渡航経験はありましたので、何となく似た雰囲気を味わったことはあったのですが、急速な経済成長を遂げている首都ジャカルタの空気はまた一段と印象的でした。研修では図書館や学術機関、政府機関を訪れ、現地の学術書や統計資料の出版状況を把握するとともに、資料収集の方法について学びました。また、研究者の現地調査にも同行させてもらうなど、通常の図書館業務では体験できないとても貴重な機会を得ることができました。

小林 磨理恵(2011年度入所)

――アジ研のライブラリアンになりたいと思った動機は?

学生時代に多くの尊敬できる研究者に出会い、かれらの調査・研究に貢献する仕事がしたいと思ったからです。また、仕事を通じて資料に対する知識を得られることも、アジ研図書館で働くことの魅力の1つでした。

――いま担当している仕事は?

統計資料等を、開発途上国現地の統計局や書店に発注して購入する手続きなどを行っています。メールでのやりとりでスムーズに見積書を入手できる場合もありますが、中にはメールでは連絡が取れない国もあります。例えば、ネパールの書店の場合、資料購入を希望する旨のメール、ファックス、手紙を送り続け、約8カ月後にようやくカタログと見積書を入手できました。最終的には再三送った手紙が目に留まったようです。資料が到着したときには、とても達成感がありました。

――これまでの仕事で印象に残った経験は?

生前アジ研図書館にご自身の蔵書を寄贈したいとおっしゃっていた元アジ研研究者の書斎を訪ね、貴重な資料をいただいてくるという仕事がありました。2日間かけて、約130箱に資料を収めました。資料には埃、カビ、虫食いといった傷みもありましたが、現地出版の古く貴重なものが多く、故人が熱を入れて資料を収集し、研究活動に勤しんでいた様子が書斎から強く伝わってきました。寄贈された資料には、英領期のインドにおいて内政権を認められた藩王国のガゼット類が多く含まれています。故人は藩王国における企業史を主に研究しておられ、その基盤となった資料を図書館に所蔵することは、今後の研究の進展に資することはもとより、研究者の研究の営みそのものを保存するという意味において意義深いものだと考えています。

坂井 華奈子(2006年度入所)

――アジ研のライブラリアンになりたいと思った動機は?

私の場合、最初から“アジ研”を目指していたわけではなく、図書館情報学を専攻していたのでそこで身につけた知識・技術を生かせる職場で働きたいと考えていました。また、大学院に通う傍らパートタイムで国際協力関係機関の専門図書館で働いていたため、アジアやアフリカなどから研修にきた現地の人たちと接したり、関連資料を扱ったりした経験などからも、資料面から開発途上国研究を支えるアジ研図書館の仕事にも意義と魅力を感じました。

――いま担当している仕事は?

主に資料の分類や目録のチェック、資料に関する問い合わせ(レファレンス)への対応と、情報発信、電子図書館サービスを担っています。地域は南アジアを担当しており、インドの雑誌記事を読んでキーワードを付与したり、購入する図書の選書を行ったりもします。

図書館の仕事は「資料と人を結びつける」ことだと言われますが、様々なレファレンスに答えているとホットなトピックや世の中のニーズを肌で感じることができ、どのような情報が重要なのか選書や分類、雑誌記事索引を採録する際にも参考になっています。

また、情報発信ではウェブや展示会の開催、メール配信サービスなど様々な方法に取り組んでいます。検索エンジンを使えば何らかの情報が簡単に手に入る一方で、発信側が効果的な情報発信をしないと、氾濫する情報の中に埋もれてしまい必要な人に届きにくくなっている現状があります。貴重な資料を活用してもらうために、アジ研図書館で入手可能な情報をわかりやすく的確に発信することが重要だと感じています。

――これまでの仕事で印象に残った経験は?

2011年に第2回アジア専門図書館国際会議が日本で開催された際に参加しました。最先端の事例発表や講演も刺激になりましたが、その一環としてアジ研図書館の見学ツアーが行われ、日本の専門図書館の一例として活動紹介や館内の案内を行いました。アジア諸国のライブラリアンと交流し、情報交換を行ったのは思い出深い経験です。

日常業務では、レファレンスで適切な資料を提供でき喜んでいただけたときにはやりがいを感じます。一方で、ウェブサービスは利用されているシーンが目に見えてわかりにくく、役に立っているかどうか実感しにくいところがあります。それでも、私が担当している機関リポジトリ(ARRIDE)で公開した論文が国際機関の報告書に引用され、執筆した研究員から驚きと感謝のメールをもらったことがとても印象に残っています。

狩野 修二(2004年度入所)

――アジ研ライブラリアンになりたいと思った動機は?

大学を卒業してすぐに大学図書館に就職したのですが、そこで5年働いた後、機会があって中国に語学留学に行きました。帰国後、途上国の現地語資料を大量に所蔵するアジ研図書館の存在を知り、自身の二つの経験が生かせるかもしれないと思い志望しました。

――いま担当している仕事は?

現在主に担当しているのは、図書館の予算管理・経理および庶務の仕事です。いわゆる「図書館の仕事」ではありませんが、図書館の事業や支出に関わるほとんどの情報が集まってくる業務であるため、図書館を広い視点から見ることができるように思います。そのほかに中国語雑誌の雑誌記事索引の採録や、酸性紙や劣化した資料の対策を検討・実施なども行っています。またアジ研図書館では、それぞれの職員に地域担当があります。私は中華圏と朝鮮半島の担当をしており、該当地域の蔵書構築やレファレンス等の対応などを行っています。

――これまでの仕事で印象に残った経験は?

2009年から2011年の2年間、中国吉林省の延辺朝鮮族自治州に研究所の制度で海外赴任できたことがやはり一番印象に残っています。現地の大学の経済学部に通いながら、中国と北朝鮮の経済関係というテーマを持って資料調査と資料収集を行いました。日本での仕事を離れ、担当地域に暮らしながら資料事情を調査するという非常に得難い機会を与えてもらったと思っています。この調査の結果は今後文献解題としてまとめる予定です。また延辺朝鮮族自治州は、中国語と朝鮮語のバイリンガル地域であり、言語的には私の担当地域と重なるので、両言語の研鑽にも努めました。