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資料紹介: 衣食住からの発見

アフリカレポート

資料紹介

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■ 資料紹介:佐藤 靖明・村尾 るみこ 編著 『衣食住からの発見』
■ 岸 真由美
■ 『アフリカレポート』2015年 No.53、p.74
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フィールドワーカーは、日本とは異なる環境や文化の中で、いったい現地の人たちとどのような付き合いをし、どう暮らしているのか。本書はそんな疑問に答えてくれる本である。本書では「衣食住」をテーマとして、フィールドワーク中の日常生活を研究者らが綴っている。取り上げられている調査地は、アフリカの森林やサバンナ、サヘル地域、南アメリカの熱帯雨林、南太平洋諸島、南極大陸と多様である。

本書は9章と3つのコラムで構成され、大きく4つのパートに分類されている。各パートでは、それぞれの調査者が、暮らしをともにすることで信頼関係を作り上げていく経験(Part I)、現地での暮らしの中で、研究の新たな視点やテーマを見出す経験(Part II)、過酷な自然環境の中での衣食住(Part III)、フィールドワークの中で調査者が自分と世界とのつながりに気づく経験(Part IV)について語られている。いずれの体験談も面白いが、ここでは、評者が日本ではまず経験できないと思った話を「食」に絞って2つ紹介したい。

あるエチオピアの農村では、「どぶろく」のような地酒を主食とする(第2章)。調査者は初め、地酒が苦手で団子をたくさん食べていたが、大人は地酒で腹を満たすのが当たり前であったため、子ども扱いされてしまったそうだ。調査者が地酒を主食にすべく必死で訓練するうち、村を訪れた中国人が、出された地酒を全く飲まなかったことをきっかけに、村人たちも調査者の努力に気が付き、受け入れてくれるようになった。自分たちの当たり前が他の者にとってはそうではないと気が付くその瞬間と、そこからお互いの信頼関係ができていく様子が興味深かった。

2つ目は、最低気温マイナス25度、ブリザードが吹く南極での調査の体験談である(第5章・コラム3)。極寒の過酷な環境では、調査の大前提は死なないことであり、入念かつ万全の準備と装備が必要となる。調査中の住まいはテントであるが、南極ではテントの生地が1ヶ月もすると劣化するほどオゾンホールの影響で紫外線が強烈だ。食事は荷物の軽量化を図るため、乾麺やフリーズドライ食品である。そう聞くと、粗末な食事を想像するが、現在では南極調査用のフリーズドライ食品「極食」が開発され、魚の塩焼きから海老チリ、ステーキ、刺身までかなり豊富なメニューがあるのに驚いた。本書は各章が異なるフィールドワーカーの体験記なので、興味のある章から読んでいくことができる。今、自分が暮らす場所とは違う環境や文化をぜひ疑似体験していただきたい。

岸 真由美(きし・まゆみ/アジア経済研究所)