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中東のなかの「障害と開発」

学術書

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中東のなかの「障害と開発」

著者/編者

出版年月

2023年2月

ISBNコード

978-4-258-04654-6

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内容紹介

内容紹介

アジ研の「障害と開発」研究では、障害の医療・個人モデル」ではなく、「障害の社会モデル」の観点、つまり機能的障害のある人たちが直面する社会的障壁を障害と呼び、彼らにみえている社会とは何か、国家や地域社会などの社会と障害当事者はどのような関係を築いてきているのかを明らかにしてきた。本書では、中東域内の障害者権利条約の履行状況と障害法の動向をまず見ている。さらに伝統的なイスラーム思想における障害にたいする態度を概観した。次にレバノン、イラン、イスラエル、トルコを取り上げ、各国の障害者政策や当事者団体の状況などについて分析した。最後にこの地域の障害者への国際協力を紹介して、日本の国際協力における「障害と開発」のあり方にも触れた。

目次

まえがき

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第1章 『中東のなかの「障害と開発」』に向けて

筆者:森 壮也

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第2章 中東における障害者権利条約の実施――障害法の形成と課題――

筆者:小林 昌之

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第3章 イスラーム思想における障害の歴史的分析

筆者:小村 優太

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第4章 レバノンの障害当事者運動と社会変革

筆者:長田 こずえ

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第5章 イランにおけるろう・難聴者の就労状況――エスファハーン州ろう者家族協会での質問紙調査から――

筆者:細谷 幸子

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補遺1 資料 トルコの障害者――教育,雇用,生活保障――

筆者:村上 薫

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補遺2 資料 イスラエルの障害者とその権利

筆者:オー・ツヴィッカ(森 壮也 訳)

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補遺3 資料 中東地域におけるJICAの「障害と開発」分野の協力

筆者:大﨑 光洋

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まえがき

まえがき

本書は、2019−2021年度にアジア経済研究所で実施した『中東における「障害と開発」』研究会の成果である。これまで研究所で実施してきた、「障害と開発」に関わる研究に本書は中東を新たな領域として付け加えることとなった。これまでの研究同様、障害については、「障害の医療・個人モデル」ではなく、「障害の社会モデル」の観点からまとめている。障害を医学の問題やリハビリテーションの問題にしてしまうのではなく、社会の発展のなかで障害の意味も変わることを重視した見方を取ろうとしたものである。このため、障害当事者団体の活動も重視している。本書では、域内のこの分野での取り組みの枠組みや障害法の現状のみでなく、イスラームというこの地域の宗教が社会生活に及ぼす影響の大きさから、イスラームにおける障害についての分析の章という類書にあまりない章も取り入れた。その後、レバノン、イラン、トルコ、イスラエルと行った国々についての分析を行い、最後に国際協力機構(JICA)における「障害と開発」分野の日本の国際協力についても紹介した。
研究会の実施にあたっては、執筆陣のほかにもMika Mohamed abdelbakyseifelnasr氏に在日障害当事者の立場で、研究会で取り上げられなかったエジプトの聴覚障害者の教育や環境についてお話いただいたほか、レバノン在住の障害当事者運動のリーダーで中東地域障害者団体連合会会長のNawafKabbara博士にオンラインで同地域の障害者運動についてお話いただいた。またパレスチナ地域についても、パレスチナこどものキャンペーンでの活動経験のある川越東はるみ弥氏に同NGOの活動とパレスチナ地域の障害者についてご報告いただいた。また本研究会の成果を元にした国際開発学会第33回全国大会の特別セッションでは、長沢栄治東京大学名誉教授、戸田隆夫明治大学特別招聘教授に、それぞれ中東地域社会の代表的研究者、JICAにて「障害と開発」分野での取り組みを指揮されたお立場でコメントをいただいた。現地における調査や研究会開催の際には、多くの当事者団体や手話通訳の方々にお世話になった。この場をお借りして、すべての関係各位に感謝申し上げたい。本書が、日本における「障害と開発」分野の広がりと、中東の地域研究の障害包摂に貢献できることを最後に希求するものである。

2023年2月 森 壮也(編者)