2019 年 2019 巻 p. 9-22
2年目に入ったトランプ政権の対アジア政策では,対中強硬姿勢があらわになった。中国をアメリカの戦略的競争相手と明確に位置づけ,とりわけ通商政策において,知的財産侵害などに対する制裁措置として追加関税を次々と発動するなどの実行策がとられた。トランプ政権は,こうした中国との対立を念頭に,インド太平洋地域の同盟国・パートナー国重視の姿勢を明確にし,経済・安全保障の両分野において,域内諸国への積極的な支援を行った。
米中対立を反映し,11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議は,同会議として初めて首脳宣言で合意できないまま閉幕するなど,両国関係の展開は,域内秩序全体を揺さぶることとなった。