2004年3月 税制改革 —目的:企業の生産性の向上。税収増加や徴税の公平化は目的ではない。—
動向
ブラジル
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既に公布された主な項目(2004年3月)
(出所)連邦下院議員サイト, Agencia Camara de Noticias,( http://www.camara.gov.br/internet/agencia/materias.asp?pk=46254 )等。
項目 | 内容 |
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税金優遇への対応 | 公正な競争を妨げる行為(praticas anticoncorrenciais)を制限する税金区分の採用を補足法により認可 |
実施前90日措置:noventana | 税金の新設または増税の実施前に90日間の準備期間を設置 |
調整制度の簡素化:Supersimples | 連邦、州、ムニシピオの徴税制度統一を将来的に可能とする補足法の制定決定 |
税収使途の制限 | 以下の場合を除く、税金分配の禁止:ムニシピオへの地方交付金と連邦政府徴税分、保健医療に関する公共活動及びサービス・教育に関する維持管理と開発・税金に関する行政業務、税収見込み与信事業に対する保証供与 |
連邦税 | |
工業製品税:IPI | 資本財に対する工業製品税免税の立法者による許認可制 |
暫定金融取引負担金:CPMF | 現行の税率0.38%のまま2007年まで延長 |
使途拘束性の一部解除:DRU | 2007年まで延長 |
経済関連調整負担金:Cide | 徴税額の25%を州(3/4)とムニシピオ(1/4)へ配分 |
道路面積、燃料消費量、人口等に基づく地方政府への配分基準設定 | |
石油、天然ガス、アルコール及び派生製品の輸入に対する将来的な課税を予定 | |
社会保険融資負担金:Cofins | 財またはサービスの輸入への課税 |
(生産・流通段階で法人ごとに3%の税金が累積→)非累積型課税化(nao cumulativo)し、最終消費者へ課税(7.6%) | |
地方税 | |
商品流通サービス税:ICMS(州税) | 輸出品、放送メディアは非課税 |
輸出品非課税による生産州の税収減を補填する基準設定 | |
連邦法により余剰(superfluos)と定義する追加余剰ICMSを制定し、貧困対策へ配分 | |
自動車所有税:IPVA(州税) | 形態と用途により異なる最低税率の固定 |
農地税:ITR(一部、連邦税) | 累進課税化 |
耕作率に基づく連邦政府による徴税額の50%をムニシピオへ配分。徴税・監査能力があるムニシピオは全額ムニシピオが徴税。 | |
その他の特別税制措置 | |
マナウス・フリーゾーン | 2023年まで更に10年間延長 |
情報関連企業保護法:Lei de Informatica | 行政府の所管とし、2019年まで更に10年間延長 |
環境保全 | 行政府の所管とし、2019年まで更に10年間延長 |
環境保全 | 環境保全の基準範囲の拡大 |
社会・文化分野 | 社会関連政策(politicas de inclusao e promocao social)と文化プロジェクト(projetos culturais)に州の純税収のそれぞれ0.5%までを充当可能 |
3月31日、下院において連邦から各州へと配分されるガソリン税(Cide)の割合を25%から29%へと引き上げる憲法修正案(PEC228)が可決された。今後は上院において審議される。
下院の税制改革特別委員会は優先課題として5月末までに、ICMSの税率の統一と地方開発基金(Fundo de Desenvolvimento Regional)の創設を目指し、付加価値税(IVA)の導入などの問題はそれ以後にするとしている。同委員会での法案作成者であるVirgilio Guimaraes (PT-MG)下院議員は、その理由として、各州の税制優遇の禁止を含めた税制改革の完了を前に税制優遇が過熱化しており、各州の財政を圧迫していることを挙げた(4月15日)。
商品流通サービス税:ICMS(州税)
現時点での決定事項 | 2005年 | 2007年 | それ以降 | |
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課税率:Alíquotas | 現在、州によって異なる44の税率を2005年に全国で5つの税率へ統一することを決定。そのときの下限課税率である「基礎食料バスケット(cesta basica)+医薬品」に「農業用原料+低所得者向け電力」を追加。 | 税率を全国で5つに統一 | ICMS、IPI、ISS統合してIVA(付加価値税)に代替(下院での承認が必要) | - |
徴税 |
生産州の海外輸出品に対するICMS徴税を禁止。 【目的】海外輸出品を非課税とすることによる競争力の向上 |
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海外輸出相殺基金:Fundo de Compensação |
Kandir法(輸出品のICMSは無税)による生産州の税収減の補填のため各州へ最高で年間R$65億を配分 【目的】州の税収補填。 輸出保険を連邦政府が助成する基金R$20億を新たに創設(企業支援) 【目的】海外輸出の促進。 |
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税金優遇:Guerra Fiscal | 税制改革施行後は税金優遇を禁止(=税制改革施行までは税金優遇が可能)。既存の税金優遇の取り扱いは、その有効期限も含め今後細則で決定する予定。ただし、有効期限は最長でも2003年12月19日の改憲公布後11年間とする。 | - | - | 改憲公布の11年後(2014年12月19日)には全ての税金優遇が失効予定 |
地方開発基金:Fundo de Desenvolvi mento Regional | IPIと所得税の税収の2%によって構成。年間R$21億見込まれる税金は、北部、北東部、中西部の各州(93%)と、低開発の地域があるリオ州、ミナス州、エスピリト・サントス州(7%)へ交付。配分率は各地域とも州政府へ75%、市当局へ25%。 | - | - | - |
連邦税
現時点での決定事項 | 2005年 | 2007年 | それ以降 | |
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資本財に対する工業製品税:IPI sobre Bens de Capital | 暫定措置により一部の工業製品に関しては既に約30%強の減税を実施済み。 | 税率を統一。減税率は原稿よりも約50%減になる見込み。 | ICMS、IPI、ISS統合してIVA(付加価値税)に代替(下院での承認が必要) | - |
歳入の使途拘束性の一部解除:DRU | 社会保障またはインフラ投資への税を含め、連邦政府は2007年まで税収の20%(R$600億)を自由に使用することができる。 | - | DRUの見直し | - |
連邦負担金:Contribuição Federais
現時点での決定事項 | 2005年 | 2007年 | それ以降 | |
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暫定金融取引負担金:CPMF |
現行の税率0.38%を2007年まで延長(年間R$20億)。連邦税のままとし、社会保障分野に配分(保健医療0.2%、社会福祉0.1%、貧困対策基金0.08%)。 2005年に税率漸減を可能とするための憲法修正に着手。 |
税率漸減の可能性 | 税率改定 | - |
社会統合計画:PIS | (2002年末より輸入品も課税対象) | - | Cofins、PIS、CSLLを統合 | - |
社会保険融資負担金: Cofins |
輸入品も課税対象。2004年2月から実施。 生産の段階毎の課税・累進課税 → 売買差額への課税・付加価値税:税率3%→7.6% 【目的】今までは国産品のみ課税対象であったため、国産品の輸入品に対する競争力が低かったが、輸入品も課税対象とすることで競争力を高める。 |
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利益に対する社会負担金:CSLL |
最低税率を9%とし、金融機関の税率を引き上げる(税率未定)。 | - | - | |
経済関連調整負担金:Cide |
燃料及び技術使用に関する負担金で、全体の25%を州(75%)と市(25%)に分配。各地方の道路面積、燃料消費量、人口を考慮に入れ、配分基準が暫定措置によって決められる予定。分配金の10%は等配分。分配金の使途はアルコールへの補助金、石油天然ガス産業の振興、道路建設と定められている。 しかし、DRUの20%の規定 → 実質的な分配は20%。 |
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社会保険負担金:Previdenciaria(INSS) |
従業員の給与(folha de pagamento)からの徴税ではなく、法人の収入または売上(receita ou faturamento)から徴税。 【目的】正規雇用の増加。従業員の給与からの徴税は企業にとって人件費高となっており、正規雇用ではないインフォーマルな雇用増加につながっていた。徴税を法人の売上とすることで、企業の人件費負担を軽減し、企業が正規の雇用を増やせるようにすることが目的。 |
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財産に対する税:Imposto sobre o Patrimônio
現時点での決定事項 | 2005年 | 2007年 | それ以降 | |
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相続及び贈与税:ITCD(州税) |
現行一律4%の税率を上限15%とした累進課税にすることを試みるも、否決。現行通り一律4%。 問題はITCD未納税者が多いことであり、累進課税にしたとしても問題の解決にはならない。しかし、未納税者を減らす新たな徴税システムに関しては不明なまま。 |
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自動車所有税:IPVA(州税) |
自動車だけでなく、飛行機と船舶も課税対象とすることを試みるも、否決。現行通り自動車のみ。 問題はIPVA未納税者が多いことであり、課税対象を広げたとしても問題の解決にはならない。しかし、未納税者を減らす新たな徴税システムに関しては不明なまま。 |
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不動産譲渡税:ITBI(市税) | 現行一律2%であるものを不動産の価格と所在地により、譲渡の際の課税率を累進課税にすることを試みるも、結局現行どおりの一律2%となる。 | - | - | - |
サービス税:ISS(市税) | - | 税率統一 | - | ICMS、IPI、ISS統合してIVA(付加価値税)に代替(下院での承認が必要) |
農地税:ITR |
現行は連邦税であるが、全額市税とする。耕作率に従い累進課税を適用。 【目的】都市不動産所有税(IPTU:市税)などがなく、税収の少ない農村部の市財政の歳入増。 |
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巨大資産税:Imposto sobre Grandes Fortunas | 新設の累進課税導入を試みるも、否決。 | - | - | - |
その他
現時点での決定事項 | 2005年 | 2007年 | それ以降 | |
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情報関連企業保護法(Lei de Informática) | 2007年廃止を試みるも、保護は2019年まで延長 | - | - | 2019年に保護を廃止 |
マナウス・フリーゾーン | 2013年廃止を試みるも、税金優遇は2023年まで延長 | - | - | 2023年に税金優遇を廃止 |
(以上出所)Estado de São Paulo, Como Ficou a Reforma Tributária depois da Votação em Primeiro Turno na Câmara, 2003年9月5日, Senado aprova primeira fatia da reforma tributária, 2003年12月18日, Repasse da Cide chegará aos Estados 20% menor, 2004年1月22日 Folha de São Paulo, Senado aprova a tributária em segundo turno, 2003年12月18日 サンパウロ新聞、下院の承認得る、社会保障融資納付金 ( http://www.spshimbun.com.br/ )2004年1月20日。 JBICリオ事務所、ブラジル政治経済レポート(2003年4月) Ministério da Fazenda, Notas Oficiais: PIS e Cofins na importação( http://www.fazenda.gov.br/ )2004年2月17日。
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