2004年10月年 金制度改革概要
動向
ブラジル
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最高裁は7対4の賛成多数で、退職公務員からの年金保険料の徴収が合憲であるとの判断を下した。今回、前カルドーゾ政権では違憲判断が下されたため実現しなかった退職公務員からの保険料徴収が合法的に認められたことは、ルーラ政権の年金改革における最大の功績の一つといえる。しかしながら、保険料納付義務が発生する金額の上限はR$1,505.17からR$2,508.72へと引き上げられた。政府の暫定的な計算によると、年金保険料納付義務金額の上限引き上げにより、保険料納入義務者数は245,271人から127,035人へと118,236人減少する。また、年間の保険料徴収額はR$8億7,560万からR$8億1,080万へと約R$6,500万減額する見込み(Agência Brasil:8/18,20)。
年金改革修正案の草案者Jose Pimentel(PT-CE)下院議員は、上院で可決された州公務員の年金支給額の上限(知事:R$14,300、最高裁裁判官の給与の75%。司法・行政・立法府職員:R$17,225、同90.25%)及び市公務員の上限(人口50万人以上の市:知事と同様。人口50万人未満の市:R$9,557、同50%)に関して、この上限額のままでは現行の上限額(州下院議員:R$9,600、連邦下院議員の給与の75%。市議会員:州下院議員の20%~75%)よりも増額されることになり、地方政府の財源がこれらの増額をまかなうだけの余裕がないとの反対意見が既に出ていると述べた(3月26日)。
現行 | 憲法修正案:PEC41 | |
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現役公共労働者 | ||
年金受給年齢 |
男性:53歳 (98年以降就職:60歳) 女性:48歳 (98年以降就職:55歳) |
男性:60歳 女性:55歳 |
保険料納入期間 |
男性:35年 女性:30年 保険料:保険料納入期間(35/30年)に足りない分の保険料を20%増しで支払えば可 |
男性:35年 女性:30年 |
勤続年数 | 10年 | 20年 |
一定キャリア在職年数 (carreira) |
なし | 10年 |
最終役職在職年数 (cargo) |
5年 | 5年 |
支給金額 | 退職時給与全額(integralidade) | 例外として 上記必要条件を満たす者のみ退職時給与全額(integralidade) |
支給金額上限 | なし |
連邦:R$17,343(=最高裁裁判官) 州:行政府=知事、立法府=下院議員、司法府=最高裁裁判官の90.25% 市:市長 |
年金支給額調整 | 現役者の給与の増額に合わせた調整(paridade) | 基準に関しては、通常法律で決定予定 |
保険料 | 給与の11% | 給与の11% |
退職後の保険料 納入義務 |
なし | R$1,200(州と市)またはR$1,440(連邦)を超える支給額の11% |
早期年金受給制度 | なし |
(1)98年12月15日以前に就職。保険料納入期間(35/30年)未終了。 早期受給可能年数:7年(53/48歳) 勤続年数:5年間 保険料:保険料納入期間(35/30年)から98年12月15日時点の払い済み保険料納入期間を引いた保険料を20%増しで支払う 支給額:2005年12月31日までに申請=>年3.5%の減額支給。2006年1月以降=>年5%の減額支給。 年金支給額調整:物価上昇に合わせた調整(paridadeの適用外) |
(2)既に保険料納入期間(35/30年)が終了している受給年齢以前の人=支給額は通常通り。下記以外は(1)に同じ。 保険料:部分受給(必要条件不足による減額支給)の場合のみ40%増し。 年金支給額調整:現役者の給与の増額に合わせた調整(paridade) |
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部分受給 |
98年12月15日以前に就職(男性/女性) 年金受給年齢:53/48年 保険料納入期間:30/25年(保険料納入期間に足りない分の保険料を40%増しで支払えば可) 最終役職在職年数:5年 |
部分受給の制度自体は維持するものの、98年12月15日以前に就職した人だけに適用される左記条件は廃止。 |
特別勤続手当 | 保険料納入期間を満たした場合、年金受給年齢に達するまで保険料免除 | 年金受給年齢前に受給条件を満たし、継続勤務する場合、強制退職(70歳)まで給与の11%を支給(=保険料の免除) |
現行 | 憲法修正案:PEC41 | |
将来公共労働者: 記載のない場合は現役公共労働者と同じ | ||
支給金額 | 退職時給与全額(integralidade) | 納入保険料合計の平均 |
支給金額上限 | なし |
上限R$2,400(INSS) それ以上は、今後設立される任意積立年金 |
年金支給額調整 | 現役者の給与の増額に合わせた調整(paridade) | 物価上昇に合わせた調整(paridadeの適用外) |
現行 | 憲法修正案:PEC41 | |
退職公共労働者 | ||
保険料 | なし | R$1,200(州・市)、R$1,440(連邦)を超える支給額の11% |
支給金額 | 退職時給与全額(integralidade) | 退職時給与全額(integralidade) |
年金支給額調整 | 現役者の給与の増額に合わせた調整(paridade) | 現役者の給与の増額に合わせた調整(paridade) |
現行 | 憲法修正案:PEC41 | |
遺族年金 | ||
支給金額 | 死亡者の老齢年金受給額と同額 | R$2,400を超える部分は30%の減額支給 |
現行 | 憲法修正案:PEC41 | |
民間労働者 | ||
保険料 | R$205.63 | R$262 |
支給額 | R$1,869.34 | R$2,400 |
特別制度 | なし | 年金を受給できない低所得労働者(1870万人)が年金として1最低賃金を受給できるような新たなシステムを導入する予定 |
(出所)連邦上院議会HP, Serviço Especial-Reforma da Previdência,13/12/2003
Ministério da Previdênica Social, Informe de Previdência Social, 4/2003, Vol.15, No.4
Ministério da Previdênica Social HP, A Nova Previdência do Servidor
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