2012年ベネズエラの大統領選と地方選挙:今後の展望
機動研究成果報告
2013年3月5日、ベネズエラのウーゴ・チャベス・フリアス大統領(Hugo Chávez Frías)が死去した。5カ月前の2012年10月7日の大統領選挙で4選をはたしたばかりであった。12月11日にキューバで3度目の癌の摘出手術を受けたが、術後経過が思わしくなく、憲法が規定する1月10日に宣誓・就任することなく、そして再び国民の前に姿を見せることもないまま、3月5日に死去が発表された。チャベス大統領死去にともない暫定大統領に就任したマドゥロ(Nicolás Maduro)副大統領は、憲法の規定にのっとり、4月14日に大統領選挙を実施することを発表した。チャベス大統領の死去により、ベネズエラの情勢は大きく変わることとなった。
本研究会は、2012年10月の大統領選挙と12月の地方選挙を分析することを目的に、2012年10月に発足し、ベネズエラの政治学者らによる分析を軸に、進めてきた。11月27日と12月6日にはカラカスで全執筆者が集まって集中的に議論を行い、その結果を12月から1月にかけて執筆した。しかしその間にチャベス大統領の癌再発が発表され、大統領の病状について政府が情報を制限したため、どのような展開になるのかが不透明な状況が3カ月続いた。そのため本研究会では、いずれにせよ10月の大統領選挙および12月の地方選挙に関する情報や分析内容については変わりがないこと、また今後状況がどのように転じようとも、それらは今後の展望を考察するうえで重要な情報であることには変わりがないことから、予定どおりの内容で成果を発表することに決定した。そして序章のなかで、12月の癌再発の発表以降3月10日時点までの経緯についても説明を加えることとした。
事態が急速に動いているなかで、できるだけ早く成果を発表することを優先し、本報告はまずは中間報告書としてウェブサイト公開する。今後は、3月のチャベス大統領の死去から4月の大統領選挙までの経緯およびその結果を加筆した最終報告書を4~5月にウェブ公開および印刷出版する予定である。また、10月の大統領選挙に関する速報分析、および12月の癌再発の発表時と1月10日の就任式不参加の時点での速報記事を、以下のとおりウェブサイト公開している。そちらもあわせてご参照いただきたい。
- 「 ベネズエラ・チャベス大統領の4選 」(『 ラテンアメリカレポート 』2012年12月)
- 「 チャベス大統領の癌の再発・再手術と今後の展望 」(2012年12月20日記)
- 「 ベネズエラ・チャベス大統領:就任せずに権力継続 」(2013年1月11日記)
本報告の経緯・序章
大統領選挙とその後の情勢変化 (273KB) / 坂口安紀
第1章
チャベス政権下の政治・社会・経済政策の概要 (508KB) / 坂口安紀
第2章
ベネズエラにおける選挙法・制度の変更とその政治的インパクト(1999~2012年) (557KB) / エクトル・ブリセニョ
第3章
2012年選挙運動:10月大統領選挙と12月地方選挙 (522KB) / ホルヘ・ディアス・ポランコ
第4章
2012年のベネズエラ大統領選挙および地方選挙:維持されたヘゲモニー (601KB) / タイス・マインゴン
終章
今後のシナリオを左右する要因 (231KB) / エクトル・ブリセニョ