坂口 安紀
研究歴
研究者としてのキャリアをスタートした1990年代から2000年代初めにかけてはベネズエラの大企業グループの企業統治、ファミリービジネス、石油産業などを研究していました。しかし急進左派のチャベス政権が誕生・長期化し、企業研究の継続が困難になったこと、また経済活動の最大の規定要因が政治となったことから、その後は研究テーマの中心を政治にシフトしながら、同国の経済情勢についても随時発信してきました。ベネズエラではチャベス政権誕生前(1995~97年)、チャベス政権下(2009~11年)に2度、計4年間在外研究を実施しました。チャベス、および後継のマドゥロ政権期のベネズエラについて多面的に考察した単著『ベネズエラー溶解する民主主義、破綻する経済』(中央公論新社)を2021年に上梓しました。
現在取り組んでいるテーマ
2度目の在外研究以来、ベネズエラの民主主義の弱体化と権威主義化について、研究を進めてきました。「競争的権威主義」の典型とされるチャベス政権から、マドゥロ政権期には選挙の競争性が排除され、権威主義体制へと変化していったプロセスについて分析し、その成果は上記の単著などにまとめました。チャベス、マドゥロ両政権下の民主主義の弱体化と憲法改正、国際人権レジームとベネズエラにおける国家による人権侵害という観点からも研究を進めています。一方新しいテーマとして、ハイパーインフレ下で見られる仮想通貨取引の広がり、デジタル国際決済やデジタル送金の広がりなど、破綻する経済制度をインフォーマルに補完すべく広がるデジタル化についても取り組んでいます。