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調査研究報告書

インドのポピュリズム モーディー政権下の『世界最大の民主主義』

湊一樹
2021年3月発行

第1章

インド政治はいま、モーディー政権、つまりは権力についたヒンドゥー至上主義によって、新たな軌道に載せられつつある。従来の軌道の上での政権獲得ではなく、まったく新しい軌道へとインド政治を転換させる課題をモーディー政権はみずからに課している。その推進力が今日のヒンドゥー至上主義勢力を代表する民族奉仕団(RSS)であり、それを母体とする政党インド人民党(BJP)である。

これらヒンドゥー至上主義勢力は、「歴史修正主義」と「文化の政治」を両輪にして、インド国家そのものの改造に着手している。その行く先には、歴史や文化の修正、再解釈にとどまらず、ヒンドゥー至上主義に批判的な異論の排除、そのための統治機構の集権化へと、政治体制そのもの転換がまちうけている。

本稿はこうした見通しのうえでインド政治の将来を見極めようとするより大きな企画の序論であり、モーディー政権を駆動しているヒンドゥー至上主義の両輪である歴史修正主義と「文化の政治」に焦点を当てて、今後の研究の方向を定めることが狙いである。

第2章
近年、民主主義にとって不可欠なアカウンタビリティの仕組みの後退が、インドの政治体制において顕著にみられるようになっている。さらに、ムスリムをはじめとする宗教的少数派に対する差別と抑圧が格段に深刻化しているという理由からも、インドの民主主義の将来を危惧する声はますます大きくなっている。本稿は、インドの民主主義がなぜこれほど急速に後退しているのかを理解するための予備的作業として、主にヒンドゥー至上主義と多数派主義という視点から関連文献を概観する。