中東ファミリービジネスの構造と継承の課題

調査研究報告書

齋藤 純

2018年3月発行

表紙 / 目次(321KB)

第1章
UAE経済の中核を担うファミリー所有の企業グループを対象に、企業内の経営資源の分配と継承がどのように行われているかについて、企業関連法制度、企業ガバナンス構造、事業展開、家族構成などから基礎的な分析を試みる。分析の結果、多くの企業グループで創業者が未だ健在であるが高齢であり、事業の継承の問題に直面している。また、いくつかの企業グループの事例によれば、必ずしも創業者直系(子・孫)への継承が行われているわけではなかった。
第2章

エジプトにおける民間企業部門の発展と代表的なファミリービジネスの沿革を描写する。エジプトの民間企業部門は,1960年代の「空白期」を経て,1970年代後半以降に拡大した。民間企業の大部分はファミリービジネスであり,現在のエジプトを代表する企業にもファミリー企業が多い。それらのファミリー企業は,「空白期」に蓄積した経営資源を活用することで,1980年代以降,急速に事業規模を拡大した。そして2000年代には海外へも進出した。

第3章
企業の事業継承が円滑裡に行われるか否かは相続システムと関連する税制に大きく関わっている。イランの相続システムを事実上規定していると考えられる国内法規は、民法における相続法、直接税法における資産・所得税法である。イランの相続システムでは配偶者や子供たちばかりでなく、故人の血縁者にかなりの割合を法定相続分として認めており、たとえば故人が家族経営の事業を行っていて亡くなった場合、いわば多くの「部外者」に遺産の分割相続が義務付けられていることが、事業継承を困難にする要因となる可能性を示唆している。