レポート・報告書
アジ研ポリシー・ブリーフ
No.289 2025年における経済連携協定の利用状況
早川 和伸、 Archanun Kohpaiboon、Nuttawut Laksanapanyakul, Francis Mark Quimba
PDF (423KB)
- 日本、韓国、フィリピン、タイのアジア・太平洋諸国からの輸入では、既存の二国間EPAやASEAN域内のATIGA、ASEAN+1のEPAが引き続き中心的に利用されている。
- RCEPの利用は総じて限定的である一方、一部の国・品目ではRCEPや新たな二国間EPAの利用も進んでいる。
日本、韓国、フィリピン、タイの輸入における経済連携協定(EPA)の利用状況について紹介する。とくに、RCEP(地域的な包括的経済連携協定)加盟国からの輸入を取り上げる。2025年の状況について紹介するが、過去の状況は、No. 181(2022年)、No. 192・194(2023年)、No. 248(2024年)を参照されたい。アジアの複数国のEPA利用状況を毎年モニタリングする資料は他になく、政策資料としての価値は高い。
関税率別の輸入額シェア
EPAの利用状況を把握するため、関税率別の輸入額シェアを算出する(分母、分子共に有税品目に限定)。二国間EPA、RCEP、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)、ASEAN物品貿易協定(ATIGA)、一般特恵関税制度(GSP)を含む。「プラス1」は、日・ASEAN包括的EPA(AJ)、韓国・ASEAN自由貿易協定(AK)、その他のASEAN+1のEPAを含む。
日本の輸入
二国間EPAを結ぶ国では、多くの場合、この利用が最大になっている。例外はCPTPPが最大となっているオーストラリア、AJが最大となっているシンガポールとベトナムである。シンガポールやマレーシアからの輸入でAJが比較的利用されるのは、連続する原産地証明書の利用によると考えられる。ベトナムでは、二国間EPAよりAJの方が先に発効したことが理由であろう。中韓を除くと、RCEPの利用は少なく、これは過去の傾向から変わらない。ベトナムでRCEPの利用が相対的に多いのは、縫製業を中心に累積規定が利用されているためと考えられる。
表1.日本の輸入における利用率(%)
注)残りの部分は最恵国待遇税率による輸入を含む。
韓国の輸入
相対的に早く発効したEPAが多く利用されている。例えば、オーストラリア、ニュージーランド、中国などでは二国間EPAが、多くのASEAN諸国ではAKが多く利用されている。ベトナムでAKより後に発効した二国間EPAの利用率が高いのは、二国間EPAの自由化率が高く、発効から既に10年程度経過しているためと考えられる。RCEPの利用率は総じて低いが、タイからの輸入では1割近くに達する。主に石油の輸入であり、RCEPの方がAKより低い関税率を提供しているためである。マレーシアからの輸入で「その他」が多いのは、天然ガスで割当関税が多く利用されているためである。
表2.韓国の輸入における利用率(%)
注)「その他」はアジア太平洋貿易協定(APTA)、割当関税、国際協力税率などによる輸入、
残りの部分は最恵国待遇税率による輸入を含む。
フィリピンの輸入
表3.フィリピンの輸入における利用率(%)
注)残りの部分は、投資委員会スキームや最恵国待遇税率による輸入を含む。
ASEANからの輸入ではATIGAの利用率が高い。それ以外では、二国間EPAがあればそれが、なければプラス1の利用率が高く、RCEPの利用はほとんど見られない。韓国との二国間EPAは実質的に2025年が初年にもかかわらず、AKを上回る利用率となっている。
タイの輸入
日本とニュージーランドでは二国間EPAの利用率が高い一方、オーストラリアではプラス1が最も利用されている。後者は、プラス1の原産地規則の方がフレキシブルであることが一因である。ASEANからの輸入ではATIGAが多く、RCEPはほとんど利用されていない。また、世界への輸出拠点としての性格を持つタイでは、関税還付制度などを利用した輸入が多いことも特徴である。
表4.タイの輸入における利用率(%)
注)「その他」は関税還付制度などによる輸入、残りの部分は最恵国待遇税率による輸入を含む。
謝辞:韓国の輸入統計の入手にあたり、朴潤珠氏(JETROソウル事務所)、中村敏久氏(アジア経済研究所)に大変お世話になった。ここに記して感謝の意を表したい。
(はやかわ かずのぶ/開発研究センター、あちゃぬん こぱいぶん/タマサート大学、
なたうっと らくさなぱんやかる/フリーランス、 ふらんしす まーく きんば/フィリピン開発研究所)
本報告の内容や意見は執筆者個人に属し、日本貿易振興機構あるいはアジア経済研究所の公式見解を示すものではありません
©2026 執筆者
